1号室住人と
俺が家神を務める屋敷と言うかアパートにやって来た住人達に、挨拶回りをすべく、意気揚々と一号室のトビラを開けた俺の目に飛び込んできたのは・・・
「うぅ~ん・・・むにゃむにゃ、もう食べられないよぉ・・・。」
何かテンプレな寝言を呟く棺桶だった。しかも、部屋の中央にドーンと直立してる。
えぇ?アレですか?棺の中でお休み中の吸血鬼的な?
そう思って、よくよく棺桶や部屋を観察して見ると、黒を基調に赤色鮮やかな調度品の数々が部屋を飾り、部屋の3割を占拠する巨大な天蓋付きベッドがデーンと鎮座して、そして部屋の中央に真っ黒な棺が直立不動。如何にもなゴシック調の吸血鬼っぽい感じですね。ありがとうございます。
いや、棺桶で寝るなら、そのベッドいらんやろ。ってか、なんで棺桶が直立してんの?その状態で中に納まってると、中も立った状態やろ。君、立ったまま寝るの?
・・・止めよう。人にはきっと、そうせざる得ない、事情があるんだ。初対面で詮索するのは、よろしくない。
後、どうやらお休み中の様だし、ここは出直そう。
そう、結論を付けた俺は、覗き込んだ顔を引っ込めようと・・・
「・・・んんぅ?匂う・・・処女の匂い・・・。美味しそうな・・・ふひひ。今夜はこれにしよう・・・うひひひ。」
色々聞かなかった事にして、そっと扉を閉じた。