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7話 メイドと長男、そして成長

イレーネがデレます。ババアのツンデレとか誰とk……ゲフンゲフン。


 よもや魔物のせいで夫に続いて息子まで……。

 騎士なのだから、それくらいは覚悟していたつもりでしたが、いざその時になってみると自分の運命を呪いたくなります。

 村で治癒魔術を使えるのは奥様と司祭様のみ。

 クラウス様が治癒魔術を使えることは念頭にありませんでした。

 まさか、あの魔王の生まれ変わりのようなクラウス様が、私の息子を救ってくれるとは……。

 エルマーがイェーガー家に運び込まれたときはもう諦めていました。

 クラウス様が搬送を命じたときは、お館様が夫とその一族への義理を喧伝するためだと思いました。

 借りのある者の血族を最後まで救おうとすれば、お館様の評価も上がるでしょう。

 感謝と同時にイェーガー家の体裁のために利用されることへの嫌悪も感じました。

 しかし例の不気味な三男クラウス様は、なんとエルマーを本当に救ってくれたのです。

 王都の教会で一度だけ見たことがありますが、あれは間違いなく中級の治癒魔術。

 クラウス様は今や奥様以上の治癒魔術の使い手でした。


 認識を改めるべきですね。

 彼は不気味などではない。

 尊敬すべき、敬愛すべき主です。

 魔王ではなく勇者だったのです。

 乳飲み子のころからあからさまに避けてきたこの私の家族にさえ、その力の恩恵を施してくれたのです。

 実の親の私すら諦めたのに息子を死の淵から救ってくださった。

 打算など浅ましい。

 私は残された生涯をすべてクラウス様に捧げましょう。

 地の果てへの追従を求められれば、もちろん従います。

 彼が世界を救いに行く間の留守を任せられれば、この命尽きるまで待ち続けます。






 俺の名はバルトロメウス・イェーガー。

 イェーガー士爵家の次期当主にして村一番のカリスマモテ男のナイスガイだ。

 親父には敵わないが剣術も騎士団の誰よりも強い。

 もっともクラウスには軽く抜かされそうだがな、ハッハッハ……。

 俺は当主の座などに執着するつもりはない。

 最初から頭のいいハインツが就けばいいと思ってたし、今じゃクラウスが最も適任なのを疑う余地もない。

 世間体を重要視する貴族ってのは面倒なもんで長男たる俺が継ぐのが当然ときた。

 確かに俺はお調子者で老若男女問わず人気があるが、それだけで固執するのはどうよ。

 ハインツはまだわかる。

 俺がスポークスマンとしての当主で、あいつが摂政としての家臣になって支え合えばいい。

 だがクラウスを無視するってのは訳が分からん。

 俺としては騎士団の総長にでも納まったほうが、仕事が減るってものなんだけどな……。


 なるほど、魔法学校ね。

 確かに、クラウスはこんな田舎にはもったいないほどの逸材だ。

 だが、それが分かる奴はここの領民の1割にも満たないだろう。

 しかし親父も正直に言うね。

 クラウスの狩猟の成果がなかったら学費は出せなかったとか……。

 まあ、俺とハインツの家庭教師も安いものではないだろうが、都会の学校に比べれば格安だ。

 うちの財政的には仕方のないことだろう。

 だが貴族にとって見栄は命よりの重要だ。

 学費を払ってやれないなんてことは、とてもじゃないが公言できるわけがねぇ。

 クラウスの奴はそこまで見通してやがるのかな……。

 とにかく俺は、あいつがドラゴンでも倒して凱旋してきたときに情けねぇ面を晒さないようにしないとな。

 愚鈍な傀儡の領主だろうが何だろうがなってやる。

 兄貴としてこのくらいはやってやらねえとな。

 ……領民への根回しはハインツに丸投げでも構わんだろ。

 俺はただ尻馬に乗るだけのほうが順調に事は運びそうだ。






 時は流れ俺は11歳になっていた。

 俺は鉱物の採取、魔物狩り、海岸まで飛行魔法で移動し上級の魔術の練習を続けていた。

 上級魔術はほとんどが戦略級の殲滅系か混合だ。

 風魔術ひとつとっても上級戦略魔術“暴風(テンペスト)”は中級の“竜巻(トルネード)”をはるかに巨大にし、長時間持続させた感じだ。

 威力も俺の魔力量だと“竜巻(トルネード)”は人体を巻き上げて切り裂くほどだが、“暴風(テンペスト)”なら跡形もなくひねりつぶすことができる。

 混合は風魔術と水魔術の“落雷(サンダーボルト)”、さらに“落雷(サンダーボルト)”と同時に水魔術“大雨(ヘビーレイン)”を長時間広範囲に発動させる“雷雨(サンダーストーム)”が代表的なものだ。

 “雷雨(サンダーストーム)”は殲滅力が単独の“落雷(サンダーボルト)”とは桁違いだ。

 これだけでも護身術としては十分すぎるだろうが、最上級には分類されないらしい。

 最上級は当然魔術教本には載っておらず、宮廷魔術師団が秘匿しているという噂すらある。

 大陸真っ二つなんてのもちょっと憧れはしたが、使う機会が訪れないに越したことはないだろう。

 もちろん、ほかの武器の扱いの訓練も怠ってはいない。

 既に剣術はアルベルトを凌駕し、槍、斧、メイスなどの鈍器にいたるまで一通りマスターし、銃の扱いも熟練した。

 長らく狩猟に用いていた弓は言わずもがな。

 薬草から薬を作ることも試みたが、商隊から買った書物だけでは栄養剤や痛み止めくらいしか作れないので、こちらは後回しにする。

 野生の果物から作った酒は魔法の袋にしまっており、いずれ商売や自分の料理に使う予定だ。

 “醸造”の魔法は教本に載っているにもかかわらず、魔力消費量のコスパが悪くあまり普及していない。

 だが、逆に考えれば俺の膨大な魔力を使いきって鍛えるためにはもってこいだった。

 魔法の袋には、ほかに鉱石のインゴットや宝石、野生動物や魔物の素材などが大量にしまってある。

 そして魔法学校の入学試験日が近づく。

サクッと時間が過ぎましたが、この時点でクラウスは相当な戦闘経験や魔術の研鑽を積んでいます。

フロンティアを探索したり魔力量に物を言わせてガッツリ修行した結果ですね。

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