水性の世界
世界を描いた誰かは水性ペンを使ったらしい
翌日の雨に流されてすっかり褪せてしまった
鉄棒のペンキが剥がれて冷たい鉄色が覗くみたいに
白黒の空を見上げても面白味に欠ける
明け方に取り残された月は好き
たっぷりの水に夜を一滴
小筆でしゅっと一筋引いたような空に浮かぶ
白い細面は色をなくしても変わらないから
灰色の空気を吸い込んで
僕もそのうち白黒になるだろうか
顔も手足も日焼けしているから
真っ黒な影みたいになるかもしれない
取り戻したいような気もするけれど
どこを探せば絵の具は見つかるのだろう
朗らかなあの子をぎゅうと搾れば黄色が零れるかな
笑い声だって灰色なのに
表情もわからない影になる前に
色の眠る場所を教えて
今度はちゃんとウォータープルーフがいい