プロローグ
ーーーあれから一体何年ほど経ったのだろう、少なくとも3〜5年程は経っている筈だ・・・
大地に大きく刻まれた『抗争』・『戦争』・『闘争』の後、硝煙とあちらこちらに横たわるかつて人であった者たちの焼け焦げた臭いに包まれ、深江と言う男は体に致命傷を受けながらも左脇腹を庇い、足を引きずりながら彼らを探しに砂嵐の中に消えていった・・・去り際に彼の影だけが砂嵐の中に映ったが、それは人のものか疑わしい異形の影であったのだった。
そんな彼の去り際を見瓦礫の中から見届け、網干と言う老人は目を瞑り祈る
ーーーあの幸せなひと時をもう一度ーーー
時は2020年
科学と超常現象が渦巻くこの時代に1人、夏の日差しに嫌気を覚えながら自身の通う高校に徒歩で向う少年が1人、学校への近道の路地裏を通っていたのであった。
ドンッ
その途中、チンピラ風情の男達3人にすれ違い様に肩をぶつけられた
チンピラA「おい‼︎何人の肩にぶつかってんだボケェ‼︎」
チンピラB「あ〜あ、これは痣が出来てますわ、治療費として有り金全部置いていきな‼︎」
チンピラ?C「え?今お前らの方から・・・(モゴモゴ)」
AB「「お前は黙っていろ‼︎」」
訂正しよう、チンピラは2人だけの様だ
少年はため息をつきながら顔を真っ赤にして唾を飛ばしながら怒号を浴びせるチンピラ2人を冷めた目で見ていた。
そして口を開く・・・
「あんたら、そろそろ静かにしてくれないか?」
少年の一言にチンピラ達の怒りはエスカレートする
チンピラB「生意気なガキが‼︎舐めた事言いやがって‼︎・・・・・・・・・?」
チンピラBは少年の胸に拳をめり込ませた・・・筈だった・・・・・
「あんたらは普通の人だから俺にダメージを与える事は出来ないよ」
その瞬間、チンピラABの顔が恐怖の色に染め上げられた、しかしこの2人の目には何故か諦めの色は見られない
ふと傍らを見るとCは満面の笑顔で言い放った
ーーー君のスキルが欲しい
「見たことあると思ったら、あんた指名手配中のワースト(不良能力者)NO.4の伊丹か」
伊丹「ばれてしまいましたか、何故でしょう、原因がある筈、あぁ、君達のせいか」
チンピラABの顔が初めて恐怖に歪んだ
チンピラA「お、俺じゃない‼︎こいつがやろうって言ったから‼︎だから命だけは‼︎」
伊丹「グッバァ〜イ☆」
次の瞬間、チンピラAは目玉の様な模様の何かの群れに襲われ、骨だけになっていた、
チンピラB「ヒ、ヒィ‼︎」
チンピラBは汗を、涙を、苦痛を滲ませながら命乞いを始めた。
伊丹「B君、君は最初、道に座る僕に話しかけてくれたね、凄く嬉しかったよ」
チンピラB「あ、あぁ、そそそうだな、懐かしいな」
伊丹「まるで友達が出来たかの様な気分だったよ、君には少なからず感謝はしているんだよ?だからお逃げなさい」
チンピラB「へへへ、す、すまねぇな」
そしてチンピラBが駆け出した途端、チンピラBは倒れこんだ
チンピラB「・・・・え?」
伊丹「友達を見捨てる様なやつは私の友人とはいえない、消えろ」
チンピラBはその瞬間、白い粒が体から溢れ出し、その姿は消え去っていった
その場に残るのは骨と目の様な虫と白い粒の塊だけだった
「ワモンゴキブリとヒトヒフバエを狂化させたのか・・・」
少年の一言に関心を示したかの様に伊丹は笑顔に戻る
伊丹「その通りだよ、でも一つ間違いがある」
伊丹は一息置いて
伊丹「あの2人も狂化してあったんだよ、まぁ、使い物にはならなかったがね」
狂っている、少年は伊丹と言う男の気持ち悪さと悪臭に対する鳥肌を抑えながら心の中で呟いた
そして伊丹は何事も無かったかの様にチンピラAの骨を拾って組み立て遊びながら少年の方に向き直る
伊丹「気に入ったよ、僕はたまらなく君をいますぐにでも壊したい気持ちでいっぱいだ、でもまだ壊すには惜しい、名前を聞いてもいいかね?」
伊丹は本気で興味深そうに聞いてきたのであった
「・・・・深江、ワーストNo.44」
そう、深江と言う少年もまた能力者なのであった
スキルハントを読んで下さり誠にありがとうございます。
お気づきの方もいると思われますが、兵庫県の町名が登場人物の名前となっています。
これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願い申し上げます。