ヨースケがいない高校なんて
夏の間、ほとんど使い物にならない状態で毎日家に閉じこもっていた月子は、それでも二学期最初の模試で学年3位という成績をおさめた。うう、こいつの頭は、いったいどうなっているんだ。
「月子さ、実は僕のいないところで、こっそり猛勉強とかしてない?」
厭味まじりの口調で言ってみると、月子はカレースプーンをくわえたまま、きょとんとした顔をする。昨日しめじとえのきの安売りに遭遇したので、今夜はキノコカレーだ。
「勉強? えーと、試験の前日に、ひと通り教科書は読むけど?」
力の抜けた返事に、僕はがっくり肩を落とす。月子はそんな僕の反応などお構いなしに、空になったカレー皿を突き出して「おかわり!」と元気よく叫ぶ。このところの月子は、夏の分を取り戻そうとするかのように至極食欲旺盛だ。
「ね、ヨースケ、どこの高校行くの?」
椅子に座って足をぶらぶらさせながら、月子が尋ねた。
「うーん、第一志望は、西高だな。県立だし、近いし」
「ふーん。じゃ、わたしもそうしようかな」
「え?」
「だってさ、ヨースケいないと、学校つまんないし」
ちょうどお玉でカレーをかけようとしていた僕は、思わず皿を落としそうになった。
「あの、ちょと、いや、それは……」
動揺のあまり、自分でも何を言おうとしているのかわからない。
「え、いやなの? もしかして、わたしと一緒だと迷惑?」
月子がせつない表情で真っ直ぐ僕を見る。落ち着け、洋介。
「い、いや、迷惑とかじゃなくて、ほら、月子なら、北高とか、もっとレベルの高い学校狙えるんじゃないの? っていうか、月子の成績で西高なんて言ったら、先生だってびっくりするだろ」
月子が眉をひそめる。
「は? 理解不能。北高なんか行って、どうすんの? ヨースケがいないのに」
うわっ。そうくるんだ。
僕は自分が耳だけじゃなく、顔まで真っ赤になっているのを自覚する。
「どうしたの、ヨースケ、具合悪いの? 顔赤いよ、ひょっとして、熱ある?」
僕の額にすっと手をのばす月子の、口のまわりにはべったりとカレーがついている。
あーあ、まったくこいつときたら。




