3.そろそろ我慢の限界らしい。
お待たせしました、やっと最新話です。
…誰も待ってないなんて言わんといて下さい。
なにはともあれ、スタートします!
「カオルは……ええキャプテンやった」
隣で言うのは、シンとコウキ。コウキはどっから持ってきたんか、コーラを飲んでる。
ケイとハジメは、リョウを追いかけて行ってしまったのでこの場にはおらん。
「強かったんか?」
「そらもう。試合は出られへんかったで? 俺らが弱いせいで試合すぐ負けたし。でも何も言わんと練習してた。1人で」
コウキが言う。
そん時は俺もどえらい弱かったからなぁ、と言ったのはシンだ。
「真面目に練習してたん、カオルだけやってん。俺らはほぼ遊び。リョウも一応練習してたけど……」
「えーい! 今の一言聞き捨てならんで? リョウが何してたって?」
「え、練習」
「リョウ練習してたん⁉︎」
今は動きさえしないリョウが、練習?
しかもみんな動かん中で、キャプテンに忠実に練習?
…………
いやいやいやいや、それはありえへんやろ。
「じゃあ何で今はやらんねん」
口をつぐむ2人組。
……やっぱりリョウと何かあったんやな。
「……カオルは、どえらいバスケ好きやってなぁ」
コウキが続ける。
「多分、あいつが違う学校行ってたら選抜も行けたんちゃうかな。そんくらい上手かってん」
「でも俺らの学校弱小やろ? 誰からも注目されへんし、選抜の話もけえへんかった」
シンが、うーっ、と伸びをした。
「で、そんなある日や」
「物語風に言わんでええわ」
「事故にあってん」
……事故。
大体その一言で全部分かる。
よくあるパターンやけど、スポーツをする人にとったら絶望的や。
「……ほんで、出来んようになったんか」
「いや、怪我したんは足やってんけど、全治一週間や。ちゃんとバスケには復帰できる程度」
「……じゃあ何で来てへんねん。来ようと思えば来れるやんか」
当然生じる疑問やろ。
ウチはシンに問う。
「……悪かったんは、その後や」
……どういうことや?
「一回バスケ部には戻ってきてん。けど、その日に足が使われへんようになった」
「何で……」
コウキは一旦口を閉じ、ため息をつくようにしてから、言った。
「ぶつかったんや。バスケの練習をしに自転車で来たリョウと」
…………
ウソ……やろ?
「……リョウの、自転車と?」
「うん。2人とも悪くなかってん。カオルが曲がり角を曲がったら、リョウの自転車が走ってきてて。カーブミラーもないとこやったから、注意のしようもなかってな」
「あそこにカーブミラーつくっちゅう話は前からあってんけど。ついたんは、その事故の後やってん」
ウチは息を飲んだ。
「普通の人やったら大したことないような事故なんやけど。一回足故障してる人にとったら大問題でな」
「病院行ったけど……」
コウキがうつむいた。
「……膝の故障で、ワンクオーターだけやとしても出られへん。プロになりたがってたあいつにとったら、最悪や」
ワンクオーターは中学生で8分。正式には10分。それが出られへんとなると、プロにはなられへん。
ウチは唇を噛んだ。
「リョウは許してくれ言うて必死に謝ったんや。けど、そりゃ怒るわな」
コウキがコーラから口を離した。ちょっと濡れた唇が閉まり、やがてまた動き出す。
「カオルはそのまま、退部届けも出さんと来んようになってん。まぁああいうことがあったから、て言うてみんな知らんふり。リョウはあれからバスケはせんようになった」
……じゃあ。
リョウがバスケをせんのは、単にめんどくさいからやなくて。
「……カオルに怪我させてしもた償い、っちゅうことか?」
「そうなるわな」
……まぁ練習せんのは悪いけど、そんな理由があったんか。
「一応来てるんも、多分バスケに申し訳ないと思とるからやと思う。あいつホンマはバスケ好きやし」
「悪い奴やないねんで」
ウチは体育座りした膝をぎゅうと抱え込む。
「……なぁ」
「なん?」
ウチは顔を上げた。不思議そうな顔のコウキとシンが見えた。
「カオルの家、どこや」
「……へ?」
「何で?」
「分かるやろ。行くんや」
「誰が」
「ウチが」
へ、と口を開けたシンが首を傾げる。
「行ってどうすんねん。まぁ家くらいやったら教えたるけど」
「行って戻ってきてもらうんや」
「いやいやいや……」
コウキが頭をかく。
「それは無理があるで」
「何で?」
「あいつは自分から来んようになってんで? いくら説得したかて無駄や」
「そんなん、行ってみな分からへん」
ウチは勢いよく立ちあがった。ぽかんと見つめている2人を見下ろし、即座に怒鳴りつける。
「案内せぇっちゅうてんねん! さっさと動かんかい!」
ありがとうございました。
感想・アドバイスお願いします!