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2.そろそろ彼らのメンタルが限界らしい。

お久しぶりです。

ネル、頑張れ。笑

「……キャプテン?」


ウチは間抜けな声を出した。目の前には、研介。もむもむとトーストを食べている。


「そうや」

「……シンやろ?」

「そうや」

「……意味分からへん」

「そのまんまや」


ごきゅ、と牛乳を飲んだ。何て典型的な朝ごはんや。トーストに牛乳て。

まぁその辺の人と明らかに違うのは、研介の目の前に、皿に盛られた黒砂糖が置いてあるくらいだろう。


「……キャプテンがもう一人おるって……どういうことやねん」


ウチは聞いた。


『キャプテンはシンだけじゃなくて、もう一人おんねん』


朝一番にこれを言われるウチの身にもなってほしい。着替えて優雅なお食事タイム、と思っていたのが、一瞬にして蹴散らされた。


「カオル……って聞いたことないか?」


白い口の周りを、乱暴に袖口で拭って研介が言う。


「……カオル?」

「デジマ カオル。聞いたことあるやろ?」


頭のデータベースをフル回転させる。デジマ……でじま……出嶋?


「出嶋って……ウチと同い年の、不登校の」

「そう、出嶋」


出嶋 香。中1の夏くらいから不登校になった生徒。顔や性格は、同じクラスになったことがないから知らん。

てことはかれこれ……1年は来てないことになる。


「そいつがどうかしたん?」

「そいつが、キャプテンや」


フリーズ。

それはつまり……どういうことで?


「シンは、仮のキャプテンや。リョウと一緒に副キャプやっとった」


え?

…………えぇぇぇぇぇぇ?????


「つつつつまり……」

「落ち着けネル」

「キキキキキャプテンは……不登校!?」

「そうや」


やめてくれーーーーー!!!!

そんなさらっと言うもんちゃうやんか!

そんなんバスケ部の評判が落ちる!

部員が集まらんはずやで!


「なんでそんなこと黙っとくん!?」

「言うたらネル怒るやろ?」

「怒るわ! 当たり前や!」

「俺には罪ない」

「あるわ! 嫌や、そんなん知りたくなかったぁぁぁぁ」


ウチはソファに崩れ落ちる。


「あらあら、朝から元気やねぇ」


のんきな声。ウチの母。今年で43のはずやけど、20代にも見える。


「元気は今しがたなくなりました……」

「あらあら、可哀そうに。……研介くん、パンもういらん?」

「ん、もうええで。ありがとう、おばさん」


ちゃっかり食後のコーヒーまで頂いちゃってる居候。


「……で? 何で今さらそんなこと言うん……」


ウチは倒れたまま聞く。


「ん? 今日土曜日やろ?」

「うん」

「学校休みやんな?」

「うん」

「……」


……この沈黙。嫌な予感。

さっと顔を上げて、研介を見た。


予感、的中。


にやにやしてる。めっちゃにやにやしてる。何か企んでる顔や。

最悪、何で聞いたんやろ……


「さぁ、ネル君。キャプテンを説得して、学校に復帰させるんだ!」

「嫌やーーーーーーー!!!!!!!!」



「はい、走る!! そこ、だらだら走んな!」


ウチはなぜか体育館におった。そして目の前には……


「何でフッツーに練習してんねん、俺ら!」

「今日は休みのはずやんかー!」

「ったく……いきなり呼び出すなっつの」

「はぁ……はぁ……もう……無理や……」


ハジメ、コウキ、シン、ケイが走っている。舞台の上には、座ったままのリョウ。

どうやらいきなり呼び出して練習を始めていたらしい。


「はい、50週クリアはコウキ! シン! ……ハジメとケイはあと10週! 何周遅れてんねん2人とも!!!! というか、リョウ走れや!!!!!!」


叫ぶと、もやもやしたものも一緒に飛んでってくれる。あぁ、すっきり。


「……何で練習してんの、俺ら」


ハジメが水筒くわえたまま言う。


「分からん。ウチも何でか、状況が読み込めてない」

「無茶苦茶や!」


嘆くコウキ。


「なぁ、質問があんねん」


ウチは切り出した。何? というように、ハジメとシンが首をかしげる。


「キャプテンって……誰や?」


だんっ。


走っていたリョウのスピードが、明らかに大幅に落ちた。

静まりかえる、体育館。


「……シンやろ?」


誰も答えない。

何でや。何で答えへんのや。「はい」か「いいえ」で答えたらええだけやんか。


「……ちゃう」


口を開いたのは、コウキやった。


「……どういうことや」

「ちゃうことないわ! 俺がキャプテンなんや、他にキャプテンなんかおらん!」

「シンだって分かってるやんか!」


え、え、ええ、え?

何なん、このドラマチックな展開。

ちょい、待って。ウチを置いていかんとって!


「ちょ、何、どういうこと?」

「ネルは黙ってろや!」


…………。

え?

整理させて。

何でウチ怒られたん?

そんな悪い事言うた? ウチ。


「えーと……私はどうしたら……」

「俺、帰る」


え、え……ええええええええ!!!!????

ちょ、待って!


「待って、待ちーやリョウ!」

「俺は関係ねぇよ」


かばんを持って、さっさと歩きだすリョウ。


「関係あるやん! 一緒の部活の仲間やろ?」


歩くのをやめた。よかった、と胸をなでおろす。

でも。


「……リョウ?」


くるっと振り向いたリョウは、怒りで目がぎらぎらしていた。

……何で?


「仲間? 一緒にすんじゃねーよ」


また帰って行こうとするリョウ。


「待って言うてるやろ!」


言っても、聞かない。


「……帰ってもうた……」


何か悪い事言うたんかなぁ……

腹立つようなこと言うた? 分からん。


「ネル」


後ろから呼ばれて振り返る。

シンが、首を左右に振った。構うな、っちゅう意味らしい。


「……あとでちゃんと説明したるさかい」


コウキもそう言って、珍しく自分からボールをつき始めた。








ありがとうございました。

感想等、いつでも受け付けてます。

アドバイス・ダメ出し何でもオッケーです。

よろしくお願いします。

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