プロローグ バスケ部のマネージャーなんだが、こんなことになるはずじゃなかった。
スポーツ…好きと出来るはまた違うんですよね…
56試合、56敗。隣には、『男子バスケ部』の文字が、申し訳なさそうに書かれている。
「……はぁー……」
ため息も出るわ、そんなもん。
「……なんと立派な成績ですこと」
嫌みたっぷりに冷ややかな目で、近くの正座団体を見下ろす。
ひっ、という声。それさえ、うるさい。
「……私の言いたいこと、分かる人おる?」
おそるおそる、手を上げる人、三名。
「……分かってるんやったら、はよ練習せんかいっ!!!!」
「理不尽や、ネルちゃん! 正座しろ言うたん誰やねん!」
「うちや! さっさとボール持たんかいっっっ!」
「はいぃっっっ!」
一喝。
ふぅ。すっきり……なんてするかい!
「ああああああああああああっ!!!!!!」
ボールをおもっきり床に投げる。ばしーん! という音と共に、跳ねた球体は天井に一直線。
「……荒れてんなぁ、ネル」
後ろから聞こえた低い声。
「当たり前や。また成績がついたんやから」
「悪いやつが、やろ?」
ぎり、と歯ぎしり。
「うっさいわ、サッカー部が」
さて。ウチの名前は、月宮 音瑠。中3。通称「鬼のネル」……って、うるさいわ!
誰が鬼にさせてんねん!
試合決めてきても負け、練習試合でも負け、走らしても何さしても負けは確定。
こんなんで怒らんといてれるかっちゅうねん。
ウチの学校、「私立竜ヶ崎中学校」。
パンフレットを開いてみよう。
『部活動…素晴らしい成績を残すクラブが多く、充実した放課後。特にサッカー部は県大会常連出場。スポーツに力を入れている。』
……何が『素晴らしい成績を残すクラブが多く』やねん!!
全敗で、何が素晴らしい成績や。まぁ、ある意味ええ成績……って、やかましいわ。
ウチは悪ない。何も悪ない。
悪いんは、メンバーと先生やろ。
「……うわっ、また外したわ!」
「かごにボール入れるだけやんか! 何ボトボト落としてんねん、ハジメ!」
高良 元。3年。まだマシな部員で、まだ真面目。スポーツ神経は悪いけど、何事も全力。
……まぁ、外すんやけどな。ゴール。
「……いったぁ……」
「またこけたやろ、ケイ」
新藤 圭。2年。体弱い。すぐ風邪ひくし、使いもんにならん。どうしたもんか。
「……誰が休憩してええって言うた?リョウ」
私が見下ろす場所には、水筒をくわえた男。
「……脱水症状で死んだらどうすんだよ」
「死なへんわ、ちょっと走ったぐらいで。第一アンタ走ってもないやろ」
「走った。3歩」
「そんなん走ったって言わへんわ!」
件先 亮。3年。上手そうに見えんのに、動かんやつ。一応副キャプテン。
「おいおい、お前らダメだなぁ?俺なんかさらっと……」
しゅっ。
ボールはゴールにかすりもせず、清々しい音をたてた後、床にぽとんと落ちる。
遠めのフリースローラインで、投げたまんまの形で石化してる奴が、小村井 光樹。2年。
「……コウキ。話がある」
「何、ネルちゃーん」
「出来もせんのにフリースローとかカッコつけんな、この抜かれ屋がぁ!!!」
「……痛いな! 何してくれてんねん! ハジメ!」
「ごめんてー! そんな怒んなや!」
「ったく、どいつもこいつも……」
何て言ってる男が、大崎 心。3年。一番こん中ではまともにバスケが出来る奴。キャプテン。背がちっこいから、シュートは打てない。
「おいネル! ハジメにボール渡してシュートの練習させとけ」
「ん。了解」
シンはドリブル担当。抜いて抜いて抜きまくれる。
ただし、パスをする腕の力と、シュートを打ってくれる仲間を持っていない。
「うあぁ……」
「シーン? かなーり手前でボール落ちてますよ?」
…………。
嫌や。
こんなはずやなかった。
この学校に入ってきた時、女子バスケ部がなくてがっかりした。
だからマネージャーになった。
それが、この有り様。
どうしたらええねん!
弱小バスケ部のマネージャーなんだが、そろそろこのクラブは限界らしい。
ありがとうございました!
よければ、感想・ぼろぼろのダメ出し何でもOKですのでよろしくお願いします。