その6.金色の魔力
身動き一つ取らない光樹の背後を、広範囲に渡って爆風が駆け巡る。
「ふうん…、避けないんだ。」
感心したような朔也。剣を肩に抱え上げ、少し笑みを浮かべていた。
「あ…、危ないじゃないか!当たったら、死んじゃうぞ!」
感心する朔也を余所に、我に返って半分涙目になっている光樹である。
「なんだ、分かってて避けなかったんじゃないんだ。つまんねぇの。」
言葉とは裏腹に、笑いが堪えられない様子な朔也だった。
「う、動けなかったんだよ!悪いっ?酷いじゃないかっ、朔也っ。僕っ…泣いちゃうぞ!」
混乱しているのであろう光樹は、支離滅裂に叫んでいる。
「わーったよ、悪かったな。」
朔也は面倒そうに頭を掻きながら、光樹に右手をひらひらと振った。
「うぅーっ。」
まだ機嫌の直らない光樹だが、朔也は再び魔物狩りに意識を戻す。
幾度も風の魔法剣を振るうも、周囲を覆い尽くさんばかりの魔物達に対し中々殲滅とまではいかなかった。
「あ~っ、面倒臭い…、雷!」
朔也が右腕を掲げると、金色の魔力が周囲の大気を巻き込みながら球状に集まってくる。
弾ける電流が飛んできて、朔也も苦痛で顔を歪ませた。
「だっ、大丈夫なのっ?朔也、痛そうだよ?」
ようやく怒りの収まったらしい光樹は、朔也の状況に気付いて駆け寄って来ようとする。
「来るな、危ないぜっ。面倒だから、一気に片付ける。」
光樹の動きを制し、雷の魔力を集めた球体を宙に浮かべた。そして左手に持っていた剣を突き刺す様に天に掲げる。
「風壁。」
すかさず光樹に対して風の防御魔法をかけた。幾重にも魔法を発動させることによる朔也の疲労は明らかであり、それは同時に精密さを欠く事にも繋がる。
「さ、朔也!?」
うろたえる光樹は、風の防御壁に拳を叩き付けた。
「…ハァ…、そこから動くなよ。ちょっとばかり大きな魔法を発動させる。」
肩で息をしながらも、雷の魔力に突き刺した風の魔法剣は維持したまま。
「朔也っ!」
光樹の言葉には応えず、朔也は魔力の集中を始めた。
雷の塊に穴が開き大きく拡がると、魔物達を取り囲むほどの一つの輪になる。
「花火だぜ、光樹…。雷神!」
振り向いた朔也が笑みを浮かべた様に見えた次の瞬間、金色の雷の輪が大地に堕ちた。