その49.突
「…まさか、創造者に逢えるとは思わなかったよ。」
幼い頃一族を殺され、幾度も恨み言を叫んでいた光樹。
だが今の感情は、それと比べものにならない程に黒い。
「それにしても、朔也に随分と酷い事をしたね。さすがに僕の我慢も限界を超えた。」
鋭い視線を向けたまま、隠しておいた短剣を突き出した。
「ふん、剣を使うのか。じゃあ、私と勝負しよう。本当はその魔力所持者と遊びたいのだが、中々起きなくて退屈していたところだ。君が勝てば、それは持って帰って良いぞ。私が勝てば、君の身体は私が好きに使わせてもらう。ちょうど新薬の実験をしたかったんだ。ついて来い。」
リラーデは軽く指で合図すると、先に歩いて行ってしまう。
光樹は短剣をしまい朔也を抱き上げると、何も言わずに後を追いかけた。
リラーデが連れて来たのは闘技場の様な空間だが、建物の地下とは思えない程の広さ。御丁寧に観客席まであった。
「ほら、君の剣だ。同じ物を使った方が面白い。準備は良いか?」
一本を大地に突き刺す。細目の両刃の剣を手にしているリラーデは、朔也を抱いている光樹の意志を確認してきた。
光樹は辺りを見回す。少し放れた場所に壁に沿って造り付けられた長椅子を見付けた。
「少し待っていてね、朔也。」
そっと朔也を壁にもたれ掛かる様に座らせる。
そして優しく抱擁すると、鋭い眼差しをリラーデに向けた。
「良いよ、やろう。」
光樹が大地にリラーデの突き刺した剣を手にするのを合図に、すぐに戦闘が始まる。
剣が放つ火花と金属音。荒い息遣いと足音が広い空間にコダマした。
「剣の腕は中々だな。太刀筋が単純だが、魔物相手にはちょうど良い。私には物足りないがな。」
それまでは光樹に合わせていたのか、急にリラーデが優勢になる。
押され、防戦一方になる光樹。幾度かの太刀筋を避け切れず、紅い線が身体を走った。
「もう飽きた。」
リラーデの言葉は、心に素直故にすぐに次の動きに繋がる。
鋭い閃光が光樹の左脇腹を貫いた。
「…ぐっ…。」
苦痛に歪む光樹の顔。
「痛みには強いんだな。これならどうだ?」
リラーデは、光樹に突き刺した剣を捩る様に動かす。
「ぐあぁぁ…っ!」
さすがに悲鳴を上げる光樹。立っている事も出来なくなり、崩れ落ちる様に膝をついた。
「なんだ、普通だな。腹腸出したら、いつまで生きていられるかな。」
殺意のない、純粋な悪意。
リラーデがその手を光樹の腹部に伸ばした時、異変が起きる。
既に意識が飛びかけている光樹の身体を、包み込む様にして青白い光が広がった。




