表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SAKUYA  作者: まひる
47/52

その47.個

「何故目覚めないっ?」


 苛立ちをぶつける眼鏡の男。周囲に控える部下達はびくびくしながら誰かの答えを待っていた。


「はい、恐らく著しい魔力消耗の為にスリープ状態であると思われます。肉体的に異常は発見されませんでしたので、魔力が回復次第目覚めると思われます。リラーデ様のお怒りはごもっともですが、魔力所持者は不便な生物ですので御了承下さいませ。」


 医療を担当する男がオドオド答える。


 ここは純人類の研究所であり、魔力所持者を捕らえては様々な実験を行ってきた。


「ぐぐっ、もう三日なのだぞっ。私は早くこれで遊びたいのだ。何とかしろ!」


 子供の様に我が儘を言うリラーデに、見兼ねた別の男が提案をする。


「新しい魔物を捕らえましたので、どうか御心を御静め下さいませ。」


 組織では魔物の捕獲と研究も行っていた。この研究所では、主にリラーデが遊び飽きた後の処理になる。


「仕方ない、それで今は我慢してやる。早く何とかしておけよ。で、魔物は何処だ?」


 そしてリラーデは、楽しそうに研究所の地下へと案内されて行った。






 その少し前。


光樹コウキ様がお気付きになられたぞ。かよを呼べ。」


 慌ただしく行き交う人々、ここはパスリルの民が暮らすギルミル山である。


 眼鏡男リラーデとの戦闘で負傷した光樹は、朔也サクヤの魔力によってこの地に瞬間移動されてきたのだ。


「…光樹様、かよでございます。御気分はいかがですか?」


 かよの呼び掛けに、横になってボンヤリと天井を見たまま何の反応も示さない光樹。


「…御身体の具合は如何ですか?」


 光樹の傷は深く、未だに自由に身体を動かせる程の回復は出来ていない。


「包帯を替えさせて頂きます。」


 反応を示さない光樹に対し、かよは声を掛けながら包帯を取り替え始めた。


「…光樹様…。」


 顔に巻かれた包帯を取ると、左目を縦に裂くような痛々しい傷が現れる。思わず口元を押さえ涙ぐんだ。


 幸い瞳自体は傷付いていない為、視力には問題がないと医師が判断。


「…朔也様が御心を傷めますでしょうに…。」


 かよが思わず漏らした言葉に、突然今まで何の反応も示さなかった光樹の瞳に涙が浮かぶ。


「あ…っ、朔…也っ。」


 己の肉体的痛みより、思い出されるのは朔也の事ばかりだった。はっきりと意識があった訳ではないが、苦手な雷の攻撃を受けたはず。


「朔也…っ、朔也…っ。」


 そしてここに朔也がいないという事が意味するのは一つだ。


「…かよ、朔也は来ていない…よね。…朔也は何らかの魔法で僕だけ飛ばしたんだ。あの状況下で魔力を大量消費したのなら、今は眠っているはず。あれから何日経った?僕は何日くらい眠っていたんだい?」


 朔也の眠りの時間は魔力消費による。


「は、はい。光樹様はこちらに到着してから、二日程眠っていらっしゃいました。ですが、まだ御身体が回復していないと思われます。」


 かよは深く頭を下げながらも、苦痛に顔を歪めながらも起き上がる光樹を引き留めようとした。


「二日か…。ありがとう、かよ。でも、僕は行かなくてはならないんだ。待っているだろうからね、朔也がさっ。」


 痛む身体に鞭打ちながらも、その瞳は光が満ちている。


「光樹様…。」


 かよはそれ以上何も言えなかった。止められないのである。


「それで…かよ、皆に見つからない抜け道ある?見付かると何かと五月蝿いし。後、悪いんだけど足になるものが欲しいんだよね。さすがに歩いて行くには…ね。」


 ニッコリと笑顔を向ける光樹に、思わず笑ってしまうかよだった。


「光樹様は、あの頃と全くお変わりありませんね。幼い頃からお城を内緒で抜け出して、お一人で街に行かれていましたもの。」


 くすりと笑いながらも、懐かしいパスリルの国の在りし頃を思い出す二人。


「うん、かよにはこんな事ばかりお願いしてるかな?これからも宜しく頼むよ。君にしか頼めないから。」


 光樹は柔らかい笑顔を向ける。


「はい、光樹様。またこうして光樹様の御側でお世話出来る事が幸せです。では、用意をしてまいりますので暫くお待ち下さいませ。…本当はもう少しお休みになって頂きたいのですけど、もう御心はお決まりの様ですものね。」


 頑固な所もある光樹の事を幼い頃から見てきたかよは、止められない事を悟り出来うる限りの身の回りの品を揃えた。




 そして誰にも見付からずに集落の外れに来た光樹とかよ。


「ありがとう、かよ。必ず朔也と一緒に帰って来るね。」


 かよの用意してくれた乗人用鳥型魔物に乗ると、笑顔で軽く片手をあげる。


「はい、お待ちしております。まだ御身体が完治してはおりませんので、くれぐれも御無理なさらないようにお願いします。」


 少し瞳を潤ませながらも、深々と頭を下げるかよだった。


「うん、出来るだけ気をつけるよ。じゃあ。」


 かよに別れを告げ、光樹は鳥型魔物の腹を軽く蹴る。歩き始めた振動に顔を歪ませたが、すぐに意識は朔也の待つだろうラディンの街へ向いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ