その45.緊張
「おい、訳の分からない事を言うな。お前はいつもそう…。」
光樹の言葉に突っ込んでいる朔也だが、途中で男達に妨げられる。
「お前達は忌み子だな。何故この街に来た。」
三人の男達は、朔也と光樹に鋭い視線を向けていた。
「…んだよ、お前等。」
朔也にとって、自分に向けられる殺意程嫌悪するものはない。
「まぁ落ち着いて、朔也。君達は何者なのさ。僕等は買物に寄っただけだよ?」
光樹の方は、一応事を荒げずに済ましたかった。
「ここは忌み子と異色の民が寄り付いて良い場所ではない。早々に立ち去るが良い。」
先程の男より年輩の男が、見下ろした口調で告げてくる。
「ふん、俺達が何処へ行こうが勝手だろう。お前等の価値観を押し付けないで欲しいもんだ。」
朔也は敵意を隠そうとはせず、一歩も引かなかった。
「成る程、君達が組織を潰して廻っている少年達か。中々の腕前のようだが、あまり調子に乗らない方が良いぞ。目的は何だ。」
最後に口を開いたのは、眼鏡を掛けた細身の男。
「君がリーダー?僕等は探し物をしているのだけど、教えたら手伝ってくれるのかな。」
光樹は眼鏡の男に話し掛ける。
「そうだな、だがそれだけじゃ足りない。君達が私の実験体になってくれるなら、考えてやらないでもないな。」
純人類は未だに、人体実験をしているようだ。眼鏡の男は、薄笑いさえ浮かべている。
「残念だね、交渉決裂だ。僕等の好きにさせてもらうよ。」
笑顔の光樹だが、少し引き攣っているのに気付いた朔也。
「おいおい、顔が引き攣ってるぜ?さすがの光樹も、笑顔の仮面が剥がれたか。」
愉快そうに笑う朔也は、光樹の首に腕を回した。
「うー、朔也の意地悪ぅ。僕はいつもの僕だよっ。」
光樹はそんな朔也に、いつもの笑顔で返す。
二人はいつでも困難を克服してきた。
「じゃあ、こうしよう。君達が私に勝てたならば、望む物を進呈しよう。私が勝てば、君達を好きにさせてもらう。」
眼鏡の男は顔立ちが整っている分、怖い程の冷たい微笑みに見える。
「冗談だろ。何でそんな取引に応じなくてはならないんだ。俺達は俺達の好きにさせてもらうだけだ。」
男から嫌な感じを受けている朔也は、本能的に戦闘の回避を望んでいた。
この男は危険だと、全身が訴えている。
「とりあえず一旦帰らせてもらうよ。僕等も心の準備が必要だからね。さぁ、行こうか。」
朔也の異変を感じた光樹は、撤退を決めた。
「そう簡単に帰してもらえるとでも思っているのか?」
鋭い眼光に、朔也と光樹は身構える。
緊張の中、じりじりと両者の距離が縮まっていった。




