その44.買物
前方に街が見えて来る。
少し規模が小さいが、人口は多そうだ。
「やっぱり飛ぶと早いな。気持ち良いっ!」
朔也は宙返りしながら仰向けになる。一方光樹はとりあえず目を開けてはいるものの、落ち着かずキョロキョロとしていた。
「何だ、まだ怖いのか?」
光樹の真下に移動して顔を見上げると、不安そうな表情のまま両腕を伸ばしてくる。
「朔也ぁ…怖いから抱いて?」
光樹の言葉に暫く黙っていた朔也は、突然大地に向け二人で急降下し始めた。
「うわーっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
泣きながら謝る光樹。
大地に手が届くかと思う程降下した朔也は、光樹をそっと抱きしめるとフワリと着地する。
「ふん、ふざけた事を言うからだ。ほら、行くぞ。」
舌を出しながら意地悪な表情を向け、すぐさま背を向ける朔也。
「ぐすっ…、えへへっ。」
額を軽く弾かれた光樹は、それでもどこか嬉しそうに朔也の後を追い掛けた。
ラディンの街は賑やかに人々が往来している。
「本当にここに組織のアジトがあるのか?」
周りの商店を見回しながら、朔也と光樹は歩いていた。
純人類を探す旅に出てからというもの、外見を覆い隠す事をしなくなった二人。
「うん、昼間は隠れているみたいだね。僕等を見ても、あまり違和感ないような感じだし。」
人々は異端の視線を向けはするものの、必要以上の感情を向けては来ない。
「うん、これくらいなら慣れてる。けど以前は、買物なんてまともに出来なかったもんな。」
朔也は商店に並んでいる品物を見ながら、光樹と旅の必要物資を揃えた。
「うん。顔を隠していても、中々売ってくれなかったし。」
人間の集落に買物をしに行くのは主に光樹だったが、頭からフードを被っていたので怪しさ倍増である。
「純人類がどのくらいいるかは分からないけど、組織に入っていない人間にも影響を及ぼすんじゃな。匿っていたりすると、容赦ないだろ。」
過去の経験で分かる組織の手口。かなり汚い事を平気で行っているのだ。
「そうだね。でも今は、平和な感じを受けるよ。僕等の色の違いに違和感は感じているみたいだけど、殺意は感じないもん。あ、これも買っておこうっ。」
二人で並んで商店を歩きながら、幾つか買物を済ます。
「ん?…おい、光樹。」
そんな中、朔也がふと自分達に向けられた視線に気付いた。
商店の陰からこちらを観察するかのような振る舞いの男が、三人程確認できる。
「うん、僕等に用があるみたいだね。じゃあ他の人の迷惑になるから、少し商店から離れようか。」
二人は組織との戦闘になることも考慮した上で、商店から開けた町外れに移動することにした。
勿論、男達もついて来る。
「んもぅ、僕等の愛の時間を邪魔するのは誰なのさっ。」
光樹が振り向き様に声を荒げた。




