その42.決意
パスリルの民は、ギルミル山で再び生活を始めた。幾度となく虐げられても、何度でも立ち上がる強さがある。
「強いよな、彼等は。」
感心しながら、パスリルの人々に視線を向ける朔也。
人々は植物に埋もれた建物を伐採して掃除し、再び住める環境を整えていた。
「うん、強いよ。同じ場所に根を張って生きていこうとするのは、大変な力が必要だよね。僕は根無し草だから、あそこまで根性ないよ。」
光樹は一族を復興させても、その王となる気はない。
「けど、お前も何時かは…。」
ここには光樹の同族がいるのだ。
「あ、僕を想って嫉妬してくれる?嬉しいなっ。」
朔也と光樹は、パスリルの人々を少し離れた場所から見ている。
手伝わなくて良いと言われ、ただ何となく座っていた。
「違っ…、ただ…。ここの人達はお前くらいの年で子供いるよな…って、何ニヤニヤしてんだよ。」
朔也の言葉に、思わず表情が緩んでしまう光樹。
真意は分からなくても、自分の事を考えていてくれているだけで嬉しい。
「えへへっ、何となくぅ。…さぁて、次はどうする?」
既に先を見ている光樹だが、必ずといって良い程朔也の意見を聞くのだ。
「…魔力って、何だろうな。」
朔也は空を見上げている。
だがその表情は暗く、いつもの自信が見えなかった。
「そうだねぇ、能力的には自然界から授かった物だと思うなぁ。自然を壊すのではなく、活かす為の力だからね。だって自然力が弱い地域では、朔也は魔力を使うのが辛そうだしさ。」
光樹が朔也と一緒にいて学んだ力の法則。
「良く見てるよな…自然か。けれど魔力を結晶化しても、魔力所持者がいないと暴走する。これでは、アイテムとして使えないだろ?本来の自然の姿とは、管理されていないと暴走するのか?」
朔也の言葉に、光樹は腕を組んで考え込む。
「自然本来の姿がどうかは、分からない。けど、朔也は魔力をどう使いたいの?」
逆に問い掛ける光樹だが、要は朔也がどうしたいかによるのだ。
「魔力をアイテム化して、どうしたいの?」
真っ直ぐ問い掛ける光樹に、朔也は視線を反らして少し照れながら答える。
「俺がいなくても…皆を護る事が出来たら…って。」
頭を掻きながら視線をさ迷わす朔也の態度に、光樹はとても心の芯が熱くなるのを感じた。
「うん、ありがとう朔也。その気持ち、凄く嬉しい。」
真っ直ぐに受け止めてくれる光樹に、朔也は一段と恥ずかしい様なむず痒さに襲われる。
「…そこで、魔力を良く知ってるのは?」
話を変える様に、朔也は光樹に問い掛けた。
「…純人類?」
光樹が思い付いたのは、他でもないあの組織。
「ま、まさかねっ!」
すぐに否定してみるが、朔也は決意した表情になる。
「だよな。俺も思い付いたのは、真っ先にあいつらだった。教えてくれるはずがないけど、知識は持っていると思う。」
朔也は立ち上がると、右の拳に力を込めた。
「えっ…でも、あの組織は危険…だけど。うん、分かった。嫌って行っても、朔也の行く所に僕は着いていくよっ。」
微笑む光樹に、照れながら朔也は手を差し出す。
「じゃあ改めて…危険な旅に誘う俺だけど、よろしく頼む光樹。」
朔也の強く真っ直ぐな瞳に、光樹は彼が一回り成長したのを感じた。
「うん、よろしくね朔也。」
光樹はその手を強く握り、再びの旅立ちに心構えを新たにする。
二人は純人類を捜し、組織が持っているであろう魔力の知識を見付ける旅に出発するのであった。




