その30.買い物
ベンジの森を歩く二人。
「なぁ、何処に向かっているんだ?腹減ったしぃ。」
腕を頭の後に組ながら、文句を言う朔也である。
「うん、スラーの町に行くんだよ。朔也の剣、切れ味が凄く落ちているじゃないか。魔力の膜で被って剣を使っているの、僕でも分かるよ?」
光樹は人差し指を目の前に、朔也の顔を覗いた。
しかしながら、朔也は買い物をした事がない。必要な道具や武器は総て、魔物の落とし物から調達していたのだ。
「…まぁ、最近の魔物は良い武器を腹に持っていないからなぁ。研いで使っているけど、もう限界近い。でも良く分かったな、魔力で被ってるって。」
右腰に下げた鞘から剣を出して前に掲げる。
手入れが行き届いている為に歯毀れはしていないものの、全体的に薄く細くなっていた。
「ほら、これでは何時欠けてもおかしくないよ。人間の集落に行きたくないのは僕も同じだから。でもね、朔也が怪我をするのは嫌だし。」
光樹は朔也が怪我をする事に異常なまでの反応をする。
ベグル山の後は尚更だ。
「分かったよ、買い物な。」
その事を理解している朔也は、弁解するのを止める。
そして二人は、森を抜けた先にあるスラーの町を目指した。
賑やかな声が聞こえる。
門の出入口には法術師の見張りが立ち、町は高い壁に囲われていた。
壁は法術に被われていて、魔物が簡単に近付けない様になっている。
「…デカイな、この町。」
頭全体を布で巻いて赤銅色の髪を隠し、金色の瞳を隠す為に色付き眼鏡をかけた朔也が見上げた。
「うん、大きいね。この地域の最大都市じゃないかな?けど大きな町はね、警戒が厳重だけど人種も様々なんだ。少し肌の色が違う人間もいるし、髪の色だってそう。多少のごまかしが利くから、良いんだよ。」
光樹は今まで幾度と無く、人間の集落に立ち寄っている。
危険な事は勿論あるが、貴重な情報もまた手に入れる事が出来るからだ。
「ふぅん、そんなもんか?」
朔也は革袋を背負い直すと、道具屋を探すべく辺りを見回す。
「んな割りに、光樹はマントなんだ。やっぱ怖いんじゃん。」
銀髪赤眼褐色の肌を持つ光樹は、全身を覆い隠すマントを来ていた。
「こっ、これは…念のため…。目立ち過ぎるのも避けなきゃだしっ。」
少し焦りながら答える光樹だが、マントを被っている他の人間も何人か歩いている。
「良くそんなビビリで、今まで人間の集落に入って行けれたよな。あ、武器屋発見!」
朔也は光樹をからかいながらも、目的としている剣を探していた。
「もう、意地悪言わないでよ。あ、それ、中々良いんじゃない?」
光樹も朔也の言葉一つ一つに答えながら、彼の手にする剣を見定めている。
だが彼等は無意識に、ティムの抜けた心の隙間を埋めようと今まで以上に会話をしていた。
「おっ、これは中々じゃん。」
そして朔也が一本の剣を手にした時、突然隣の店から大声が上がる。




