*第6話*
「ちょ、音々!まてって!」
「はぁ~いいことしたなぁ」
「いや、そりゃいいことはしたけど拉致って?!おい!」
「さーてとー帰ったら何すっかなー」
「おい!人の話聞けって!」
「ー・・・。なに。」
「いや、なにじゃなくて。拉致ってなんだよ?」
「そのまんまだろ。拉致られたんだよ。体育館裏に行ったら
その津田ー・・・とかいうのが来て
んでまぁ、かくかくしかじか___」
「だぁら俺はいくなーって言ったのに」
「あれ、そういういみだったわけ?」
「・・・うん。」
「あー・・・それは、そのー・・・。うん、ごめん」
「べっつにいいけどな。終わりよければすべてよし。
音々が無事なら全然いいから」
「おー。圭吾にしてはいいこと言うじゃん」
「えへへ~そうだろ~って、俺の言葉は毎日名言だっつの」
「うわ、こんなところにナルシストかいる~」
「なっ・・・!俺はナルシストじゃなくてだな・・・」
「間に受けてる圭吾はこの世で一番のバカだな」
「・・・・・・。」
知らない間に家に付いていた。
「それじゃ、またあしたー偽りの(笑)ダーリン(笑)」
「おまっ・・・笑いすぎだろ!」
「だーっておもしろいんだもん」
そんなことを言いながら、あたしは家に入った。
「ただいまー」
「あら、おかえり。おそかったわね?」
「うんー圭吾と遊んでたー」
「いつまでも仲がいいわね」
「まぁなー。あれ、るかは?」
「あぁ、なんか上でさがしものしてるわよ」
「はぁ・・・?」
井上るか、中学3年生のあたしの弟だ。
るかは年下の癖にあたしより背が高い。
頭一個分ぐらいはな・・・。
2階にいって、るかの部屋をのぞくと
えぐいことに、部屋が空き巣にはいられたかのように
ぐっちゃぐちゃだった。
「るか、お前なにがしたかったんだ・・・?」
ベットに丸まって壁の方向を向いてるるかをつつきながら
問いかけるものの、ぐすんというまぁ泣いてるであろう声?しか聞こえない。
「るーかー。」
「・・・姉ちゃんにもらったキーホルダーなくした・・・」
「は。?」
キーホルダー?
あぁ・・・確かなんかのイベントで小さい頃に
るかに作ったキーホルダーか・・・
「どこさがしてもない・・・」
「はぁ・・・そんなことでめそめそするな。
ほら、あたしもさがすから」
「うん・・・」
るかは小さい頃から泣き虫で
今では長身でかなりのイケメンの癖に
泣き虫だからすごいギャップだ。
弟はあたしのことが大好きみたいで
あたしがあげたものとか、すごく大事にする。
まぁ・・・あたしもかなりかわいがってるけどー・・・
「この中探した?」
一つの透明のボックスを指差すと
るかは首をふりながら
「透明だしないだろ・・・」
と半泣き状態で言った。
「はぁ・・・るかの頭はまだまだ甘いな。」
そういってそのボックスをあけると
端っこのほうに、あたしがつくったキーホルダーがあった。
「あ、あった!」
「ほらな」
「姉ちゃんありがとーっっ」
るかがあたしをぎゅっとする。
あたしは全身すっぽりとるかにはまる。
「はいはい。ありがとう」
るかはあたしを離すと、ニコニコしながら
これまたあたしがあげたリスが書いてあるかんに
大事そうにいれた。
部屋に戻ってベランダを見ると
そこにはさむそうに(いやがちでさむい)たっている圭吾がいた。
手にはノートとシャープペンシル。
あたしは急いでベランダを空けて、
「なにしてんだ?!」
と声をあげた。
「い・・・いや・・・宿題を・・・」
「とりあえず入れって。風邪引くぞ」
あたしは圭吾を中に促すと
タオルケットを肩からかぶせた。
「んで?宿題が?なに?」
「・・・教えて・・・」
「・・・そんなことでベランダに?」
「うん・・・20分ぐらい・・・」
「はぁ・・・。ほんとバカだな。ほら、一緒にやるぞ」
圭吾はぱっと笑顔になって
机にノートを広げた。