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*番外編~音々.圭吾その後~*

あたし達の6年後の話。

あたしは高校を卒業してすぐ、圭吾のプロポーズされた。

「なぁ、音々。俺ら、一緒に暮らさないか?」

そう、何気なし言われた。あたしは幸せすぎて、嬉しくて嬉しくて

付き合ったとき同じように泣いていた。

「ほら、また泣く」

また圭吾はあたしの涙を指でぬぐってくれた。


あたし達は21歳で結婚した。

親同士は最初少し驚いたけど、全然普通に

了承してくれて、るかは少し寂しそうだったけど

それでもとても祝ってくれた。


結婚式。

「新郎様が後5分ほどでこられますよ」


ウェディングドレスを着て、きれいに化粧をして

髪の毛もきれいにセットしてもらったあたしは

自分で思ったほどに女らしかった。

「はい」

緊張してかなり口数が少なくなっていたあたしを

解きほぐしてくれたのはりょーと燐だった。

あたしが着替えと化粧が終わったときに来た二人は

誰よりも早くあたしのウェディング姿を見た。

「さすが音々、似合うな」

と、タキシード姿の燐。

「まぁ黙ってれば美少女だからな」

と、燐と同様タキシード姿のりょー。

相変わらずりょーは一言多い。

「口調が男で悪かったな。たっく、人の結婚式ぐらい

もうちょっと優しくしろよ」

「十分優しくしてやってんじゃんか」

「まぁまぁ。でも、本当にきれいだな」

燐がにこやかに言うもんだから、照れてしまった。

「ほら、もうすぐ圭吾くるぜ」

そうりょーが言ったと同時ぐらいに

圭吾は部屋に入ってきた。

白いタキシードを身にまとった圭吾に

あたしはどきっとした。

・・・かっこいい・・・

「よ、音々。あ、りょーも燐も俺より先に

音々のウェディング姿見るなんて卑怯だろー」

「しゃぁねぇだろ?音々のウェディング姿、ぜってぇきれいだと思ったんだし。なぁ?」

「まぁな。さっきも言ってたけど黙ってれば美少女だから」

談笑しながら、りょーと燐と圭吾は部屋を出て行った。

あたしは少し、寂しかった。


式場の扉が開けられる前、圭吾が言った。

「音々、すげぇ似合ってるよな」

「え・・・?なにが・・・?」

「だから、そのウェディングドレス。」

「あ・・・そ、そう、か?」

圭吾はあたしの方をみてにっこり笑って

「うん、似合う。てか、きれい」

いざ言われると嬉しいと同時にすごく照れた事をいまだに覚えている。



「それじゃ、初仕事言ってくるわ」

「おう、頑張れ!」

ここは、新居。あたし達が同居し始めた家。

今日は、圭吾の初仕事の日。

実は圭吾は森羅学園理事長になった。

本当は圭吾の従兄弟の來斗らいと君がなるはずだったんだけど

急にイヤだっていいだして、それで急遽圭吾が理事長になることになった。

23歳で理事長って、すごいよな。

「さぁて、掃除しようかな」

掃除機を掛けて、洗濯物を入れて畳んで、洗濯機から出して干して・・・

主婦は大変だ。けど、あたしは楽しい。

そして、あたしは夕方になるとバイトに出ていた。

バイト先はシフォンカフェって言う雰囲気がいい所。

あ、実はそこで燐とバイトが一緒でシフトも一緒だったんだよね。

最初は二人ともびっくりしたけど、後からは知ってる人がいるっていいよな

とか言いながらいいチームワークでやっている。


そして。最近、変わって事がある。

「ただいま」

「おかえり~」

圭吾を玄関まで迎えに行くと、圭吾はかならず

チュッ・・・とあたしの頬にキスとする。

「んも!またぁっ」

「いいじゃん?」

・・・そう。圭吾は最近ちょっと・・・いや、かなりエロくなった。

驚くほどにエロくなった。訊くと

「これがラブラブな夫婦ってもんだよ」

とか言ってながされるもののそういった後にいっつも

ニヤッと圭吾は笑っていた。

こいつわざとだろ、とあたしは最近毎日思う。

夜もよく襲われる・・・よく・・・。


圭吾のエロくなった騒動から約5ヶ月後のこと。

あたしは何となく母校の森羅学園に言った。

お昼休みの時間帯あたりに職員室を覗くと

通っていたときとそんなに変わらなかった。

少し、きれいになったかなってぐらい。

「おぉ!音々!」

不意に後ろから聞き覚えのある声がして振り向くと

やっぱり、元あたし達の担任、小倉透真ことおーちゃんが相変わらず

さわやかに笑って立っていた。

まぁ言っても、まだぎりっぎり30代だしな。39歳でも、だけど。

「おーちゃん久しぶり!元気だった?」

「元気だよ、音々こそ元気そうだな。どうだ?圭吾とは仲良くやってるか?」

「はい、やってるよ。おーちゃんも残念だね?教え子が目上の人になるなんて」

「ほんと・・・あんな馬鹿に抜かされるとは俺もなんか泣けてくる」

おーちゃんはあたし達が結婚した事をしっている。結婚式にも来てくれた。

「小倉先生?誰を馬鹿だっていいました?」

びっくりして二人とも振り向くと・・・

そこにはスーツ姿の、圭吾がいた。

「圭吾・・・じゃなくて、森羅理事長!」

おーちゃんが少しあたふたしたように言った。

「ははっ驚いた?別に圭吾でいいよ。歳的におーちゃんの方が上だしな?」

圭吾はあたふたしたおーちゃんを笑って、

「あ、小倉先生。この資料なんだけどまとめておいてくれるか?」

「あ、はい、わかりました。それじゃぁな、音々!」

圭吾に渡された資料を持っておーちゃんは職員室に戻っていった。

あ、ちなみに圭吾は理事長兼校長をしていて、毎日学園にいる。

「音々、どうしたんだ?」

「ちょっとなつかしの学園を覗くにな」

「そうか、冷えないように気をつけろよ」

心配そうに見る圭吾にあたしはわらって

「大丈夫だよ、もう戻る。」

と言った。今はもう冬。ひえはなにかと危ない。そして

あたしにしては、最もよく無い事。

「赤ちゃん、大事にしろよな」


・・・あたしはおなかに命を授かった。

「うん。はやくかえる。それじゃぁ頑張ってな」

あたしは早々と家に戻った。


赤ちゃんを授かって5ヶ月。ちょっとおなかが大きくなった。

赤ちゃんができたと知って、エコーで赤ちゃんを見たとき、うれしくて

圭吾と抱き合った。ほんとにほんとに嬉しかった。

・・・けど、それと同時に重みを感じた。

自分のおなかに命があると思うと、怖いという衝動に掛けられる。

りょーと燐にも報告した。二人とも喜んでくれた。

あたしは家にいるとき、いつも名前を考えていた。

生まれてからっていうのもあるけど、その前に考えておくのも妊娠したときの楽しみだと思う。

生まれるのは多分4月か5月ごろ。春に生まれ子だから

何となく優しい名前がいいかな、とか毎日おもっている。

今、おもっているのは女の子だったら『癒菜ゆな』とか『春香はるか』とかで

男の子だったら『春斗はると』とか『癒羽ゆう』とかだ。

男の子も女の子も同じような名前だけどな・・・。


圭吾は帰ってくると、

「今日はどんな名前がおもいついた?」

と訊くのが日課になっていた。

圭吾も仕事をしながら考えるのが癖になってるらしい。




平成31年.4月.10日。あたしは男の子の赤ちゃんを生んだ。

天気は晴れていて、青空の中桜が舞っていた。

それをみながらあたしは生んだようなものだった。

名前は、あたしが考えていた『癒羽』という名前になった。

森羅癒羽しんらゆう。それだけで愛おしくて

これから3人で暮らしていけることにあたしは幸せを覚えていた。


「3人で幸せになろうな」

「うん、絶対だよ」

窓の外で桜が舞い散る中。

あたし達は本当に幸せになれるように

3人で祈った。その時に繋いでいた赤ちゃんの手のぬくもりと

圭吾の手のぬくもりを今でもいつまでも忘れない。

偽りでないこの体温をあたしは....


忘れないよ。

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