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*第37話*

「顔色大分よくなったな」

おかゆを食べてから1時間ほど、圭吾はまた寝ていた。

おかゆを食べたのは夜の9時ぐらいで、いまはもう10時。

一度美智さんが様子を見に来て

「音々ちゃんいつもごめんね?起きたら無理やり部屋に運んじゃってもいいから

今だけお世話してやってね?」

と笑いながら言っていた。

美智さんは圭吾と同じで明るくて優しくて

勇気のあるかっこいい人。実は美智さんはあたしの憧れだったりする。


「ん・・・」

圭吾がおきたのは10時半ごろだった。

「あ、圭吾。よく眠れた?」

声を掛けると少し眠そうに

「うん・・・よく寝た・・・」

と言った。いつもの眠そうな圭吾だ。

顔色もいつもと同じぐらいにもどっていた。

「熱はかるよ」

体温計を圭吾に咥えさせて、額を触ると

おかゆを食べた直後よりも熱は下がっていた。微熱ぐらいだろうか。


ピピピと体温計がなり、見てみると

思ったとおり、37.5度の微熱だった。

「どう?どこか気持ち悪いところかないか?」

「頭がボーっとするけど、大丈夫・・・かな」

「そう、ならいいんだ。どうする?部屋、戻る?」

「・・・俺、本来の用事なにもこなしてねぇよ?」

そういう圭吾にあたしはハッとした。

・・・本来の用事。多分、『告白の返事』だろう。

それ以外に圭吾の用事なんてなさそう・・・なんていうと失礼極まりないけど。

「風邪でぶっ倒れたんだから仕方ないだろ」

「やっぱいうべき事は言わないとだろ。」

「・・・うん」

返事したものの、いつもなら大人しい心臓の音はドクッドクッドクッドクッと

早く音を立てていた。止まってと心で叫んでも止まってはくれない。

この心臓をこんなにするやからがいる限りは、な。


ちょっとした沈黙があって、圭吾は口をひらいた。

「返事、だけど...。」

そこまで言って圭吾は口を閉じた。

そりゃためらいもする・・・だろう。

ブルルルと圭吾のケータイがなって、多分圭吾はメールを開けた。

・・・と、ひらけた瞬間かケータイをベットにべしっと投げつけて

なにかあきらめたように

「あぁ!もう!結局かよ!!はぁ~!音々!返事だけど、俺も音々の事が好きだよ!」

なんか投げやりに圭吾は言った。あたしは圭吾の言い方があっけなすぎて

ぽかん・・・としていた。が、その5秒後ぐらいに

思考が早々と動き出し脳内をその言葉が駆け巡った。

圭吾も・・・あたしの事が、すき・・・?

以外すぎる言葉にあたしは自分の口からは

「あ・・・あ・・・」

としか声がでなかった。


ちょっとの間放心状態でいると、圭吾が

「音々?生きてる?」

とあたしの顔の前で手を振っていた。

ハッと我に返り、圭吾のほうを向いて

「あ、ありがとう!?」

となんか語尾はおかしいけどお礼・・・?を言った。

「なんでお礼?別にいいけど」

圭吾が笑いながら言った。なんか、ちょっと久しぶりに

圭吾の笑顔を見た気がした。おかしいな・・・1時間前に見たはずなんだけどな・・・


「なぁ、音々はさ俺の事いつ好きになったんだ?」

不意に圭吾の訊かれてあたしはついびくっとなってしまった。

「え、えっと・・・あの、ほら・・・旅行の部屋決めのときカクガクシカジカ・・・」

すべて説明すると、圭吾はなぜかうなだれて

「嘘だろ~?!」

と言った。何に対していっているのかまったくわからないけど・・・

「てことは、音々の相談相手ってりょーだったんだよな?」

「そう、なるよな?」

「はぁ~・・・あいつ、ほんと抜け目ない奴だな?!」

「なにが?」

「・・・俺の相談相手もりょーだったんだよ」

そう圭吾が言った。

あたしは「へ・・・?」と言ってまた5秒後に

思考が回り始めて、すごく驚いた。

「え、えぇぇぇぇえええ?!手・・・てててて、てことは・・・!!!」

りょ、りょーは・・・

「どっちの気持ちも事情も知ってた・・・?」

「そういうことになるな・・・チクショー・・・りょーめぇ・・・」

てことは、あたしの言動も圭吾の言動もりょーには筒抜けで

あたし達二人がすれ違っているのも知ってた・・・。

・・・まぁ・・・

「そこまで害もなかったけどな・・・」

そう思えばりょーはなにも言わないでくれたんだよな。

りょーってやっぱり優しいよな。


PM12:00。圭吾は、また少し熱が上がったから大人しく寝た。

風邪を引いたら寝るのが一番と教えられたのはあたし。

圭吾が寝ているそばであたしは独り言のように言っていた。

「圭吾、あたし達、偽りじゃなくて本当の恋人同士になれたんだよね・・・

コレが夢だったらあたし無くかもな・・・。けど実感がないから、どうしようもないよ。

なぁ、圭吾。圭吾はあたしと付き合うって事に実感があるのか?

・・・コレは夢じゃないのかな・・・」

幸せなはずなのに。なのに、あたしは泣いていた。

初恋が実ったことに感動している?

それとも、実感がなくて泣いている?

はぁ・・・あたし、意味わかんない・・・


「音々、何で泣いてんだよ・・・?」

不意に圭吾の声が聞こえて目を覚ました。

「圭・・・吾?」

あたしは知らない間にベットに突っぷして寝ていた。

寝ている間も泣いていたらしいあたしの涙を

圭吾は指でぬぐってくれた。

「・・・なんで、ないてんだろうな?」

「音々。俺らが偽りじゃなくて本当の恋人同士になったのはさ

夢なんかじゃないからさ。いきなりそんな悩むなよ、な?」

圭吾は優しく笑った。きっと圭吾はあたしの独り言みたいなのを聞いていたのだろう。

「だよ・・・な?けど、やっぱ実感がないな」

「それじゃ、実感しろよ」

そういうと圭吾の顔がいきなり近くに来たと思うと

唇に温度を感じた。温かいこの部屋に負けないぐらいにあったかい温度。

それは、圭吾の唇だった。偽りの恋人になってすぐに奪われたファーストキスは

一瞬でなにも感じなかったけど今は愛おしくてたまらなかった。

「圭吾・・・」

「な?これで実感したろ?」

「うん・・・っ」

「なんでまた泣くんだよ」

知らない間にまた泣いていたあたしを圭吾は優しく抱きしめて

「俺はさ音々が幸せそうに笑ってるときが一番すきなんだよ。

だから、さ。俺のためとか思って、笑ってよ。な?」

と言ってくれた。

人からそんなことを言われたのは初めてで

あたしは嬉しくて嬉しくて仕方が無かった。


あたしは思い切り笑って

「圭吾の言葉はいつもいつわりが無くてまっすぐだよね」

そういった。


偽った彼氏彼女の関係はあたし達の中からなくなり

あたし達は本当の恋人同士という関係になった。


ねぇ、神様?

もしかして、神様はあたしと圭吾を

技と偽りのカレカノになるように仕組んで

あたし達を一緒にしてくれたのかな?

「・・・ありがとう」

神様に、圭吾に、りょーに燐に。心から言いたい。


ありがとう。

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