*第36話*
「うぅ・・・さみぃ・・・」
圭吾は腕をさすりながら、中に入ってきた。
いつもと、同じ圭吾。少し違うく感じているのはあたしだけ。
ドキドキと胸打っているのもあたしだけで
多分ほかから見たらあからさまにあたしは何となく
ギクシャクしてるんだろ・・・な
圭吾はあたしのベットに腰を下ろし
「はぁ~・・・スキー場も十分寒かったけど地上も寒いな。
いやまぁあっちも地上だけど。」
ちゃかすように言った圭吾に
あたしはいつもと出来るだけ同じように
「まぁ冬に代わりはないしな?」
と言った。正直、スキー場では吹雪いてたものの
圭吾といてたからか寒さをほとんど感じなかった。
むしろぬくもりで包まれてた・・・ような。
そんな事を思っていると、圭吾が急にスクッと立ち上がった。
何かと思って見上げた時・・・上から圭吾が降ってきた....
というよりか倒れてきてあたしは押し倒された状態になった。
「圭吾?!」
頬がほてったけど、圭吾の腕があたしの腕に当たったとき
あたしの頬以上に熱いのが分かった。
・・・熱・・・?
圭吾を起こして、額を触ると、案の定熱くて
圭吾は息苦しく呼吸をしていた。
圭吾をベットに寝かして、1階に下りた。
リビングにはお母さんはいなくて
多分、買い物にでもいったんだろう。
変わりにといったらかわいそうだけど、るかがソファで
雑誌を読んでいた。スポーツ雑誌。
「ねぇちゃんどうした?」
雑誌を閉じて振り向いたるかに
「圭吾があたしの部屋で風邪で倒れちゃってさ」
そういうとるかは驚いて
「大丈夫なの!?」
と目を見開いていた。まぁそりゃそうもなるだろう。
バカで風邪なんて3年に一回引くか引かないかなあいつがぶっ倒れるなんて。
まぁ、多分、旅行の疲れかあの寒さのせいか・・・
かなり薄着だったし、考えられない事はない。
「大丈夫。そうだ、るか。後でおかゆつくってくれないかな?
あたしつくりかたわかんないんだよな」
あたしが風邪を引いたときおかゆを作ってくれたのは、るか。
「わかった、後でもってくよ」
あたしは、氷枕とタオルと氷水をもって部屋にあがった。
部屋に上がると圭吾はまだ息苦しそうにしていた。
「圭吾、頭、上げて?」
そういって氷枕を敷いて、タオルを氷水につけて
圭吾の額に置いた。少し表情が柔らいた気がした。
圭吾が寝ている間なんどとなくタオルを取り替えた。
美智さんには連絡しておいたし、お母さんも帰ってきて事情を言うと
穏やかに「お世話してあげなさい」と言った。
まぁこんな状況で部屋に無理やり運ぶ人もいないとは思う、けど。
3時間くらいして、圭吾は目を覚ました。
「・・・俺・・・」
「風邪でぶっ倒れたんだよ。さすがに驚いたよ」
少し呆れ気味で笑うと圭吾は
「・・・迷惑掛けてごめん・・・」
と申し訳なさそうに言った。
あたしは少しちゃかして
「大丈夫だって。どうせ暇だから?」
と笑いながらも言った。
圭吾はそれでも申し訳なさそうな顔するものだからあたしは
「おなか、すいただろ?るかがおかゆ作ってくれたからとってくるな?」
と言ったら圭吾は「ありがとう」と言って少し笑ってくれた。
ホッとしてあたしは1階に降りた。
「るか、取りに来るの遅くなってごめんな」
そういうとるかは笑って
「圭吾君、寝てたんだろ?仕方ないよ、それじゃぁ。
冷蔵庫に入れてあるからあっためてもっていってあげて」
とるからしい事を言った。
なんとなくるかは女の子っぽい性格なのかもと思った。
あたしと割って足したら丁度ぐらい・・・か?
そんなどうでもいいことを考えながらおかゆを温めて、部屋にもって行った。
「圭吾、おかゆ。もって来たよ」
部屋に入ると、圭吾はボーっと外を見ていた。
「圭吾?」
呼ぶと、ハッと我に返ったように
「何?」
と言った。少しおかしい気がしたけど多分
風邪で頭がボーっとしてるんだろ。
「おかゆ、もって来たよ?」
「あ、ありがと」
ベットにすわって、あたしがよそったおかゆを
パクパクと食べ始めた。風邪を引いても食べるのは相変わらず早い。
おかゆを食べ終わった頃には圭吾の熱も少し下がっていた。




