*第34話*
「よし・・・こっからが本番だ」
「だな・・・あたしから行くから」
「・・・わかった。気をつけてな」
「大丈夫だって!よし、かなり吹雪いてきた。はぁっ・・・」
手に息を吹きかけて、ぎゅっと握った。
こんなところで手間取っててどうするんだ
テロ集団なんて簡単にヤッてやる・・・!!
あたしは10mをかなりのスピードで滑った。
コンドラに付くと誰もいなくて、テロ集団も下手に外を回っているわけではなかった。
後ろから圭吾も来て、あたし達はボードをはずしてコンドラのドアを開けて勝手に乗った。
「はぁ・・・。この辺に察がいるところってあるか?」
「多分この近くに丁度交番がなんかがあったな」
「それじゃそこで事情を説明してなんとかしてもらうか」
「そうだな」
ちょっとした沈黙の後圭吾が口を開いた。
「なぁ、音々。こんなときに悪いんだけどさ・・・俺の話聞いてくれる?」
「ん?うん、いいけど・・・?」
話って・・・もしかして好きな人の話?
そうだとしたら聞きたくないかも・・・な。
「あのさ、俺・・・小さい頃から・・・さ・・・」
圭吾は目線を外にはずしながらゆっくり
詰まりながら話していた。
小さい頃からさの後圭吾は口を開かなくなった。
「どうした???」
「・・・・なぁ、音々の好きな人ってさ、誰?」
前の文章とつながらない不意な言葉に
あたしは息詰まった。
どうしよう・・・こんなときに言ってギクシャクして
関係が崩れたら・・・あたしは・・・どうしたらいいんだ・・・?
けど、なんとなくだけど今言わないともうチャンスがない気がした。
下につくまで後5分ほど。あたしは自分の手をぎゅっ・・・・と握って
一息ついて、燐の言葉を思い出した。
『自分に自身を持て。俺は井上は強いと思ってるよ』
・・・そうだよ、あたし。あたしは強いよ。自身もってよ。な・・・?
「あたしの好きな人は圭吾だよ。大切すぎて毎日毎日接し方に悩んでしまうぐらいに好き」
なんて熱烈な・・・と自分でも思った。けど、自分の気持ちを
全部言ってしまいたかった。胸にたまっていたもやもやがとんでいって
すっきりした気がした。あたしはまた、人の言葉に助けられたな・・・
「え・・・・?え・・・?!」
「返事はこの騒ぎが終わってからゆっくり聞かせてよな?」
そういった時丁度ゴンドラが下に付き、急いで降りた。
「下はかなりあったかいな・・・ってンそんなこと言ってる場合じゃないか・・・」
「・・・・そうだな!よし、早く行くぞ!」
圭吾はあたしの手をつかんで走り出した。
10分ぐらい走っていると交番にたどり着いた。
ガラガラッと音を立ててドアを開けて
交番に怒鳴り込むように言い放った。
「××スキー場にテロ事件が発生しました!犯人達は警察を呼んだら殺すといっています!」
交番からは口々に
「何だって?!」とか
「それは本当なのか・・・?」とか
「いますぐ本部に繋げ!」とか
いろんな声が飛び交った。
そして一人の交番の責任者だと思われる人がこっちに来た。
「状況を説明してもらえるか?」
「はい。あたしたちは森羅学園から旅行で来ました。あたし達二人がリフトに乗っている間
下にテロ集団がおしかけたんだと思います。それでいきなりリフトが停止になって・・・__」
すべての事情と状況とを話すと
責任者らしき人は難しい顔になった。
そんなときにあたしのポケットでケータイが震えた。
りょーからの着信。
「りょー?大丈夫か?」
『俺は全然大丈夫。見つかってさえいないから。今わかったんだけど
テロ集団たちはここのスキー場になにか恨みがあったらしいよ。
ちなみに俺は今また裏口にいるから。』
「そこにいて見つからないならいいけど・・・。今察のところにきてるけど
どうしたらいいか・・・ってので察もかなり混乱してる」
『んー・・・そうだ、裏口から回って突撃したらどうだ?』
「でも相手は拳銃だろ?」
『大丈夫、一人が入り口まえで発砲音をさせたら半分の奴らはそっちに行く。
そこを狙って、裏口から回ってあいつらを確保するなら大丈夫だろ?』
「さすがりょー!おじさん、さっきの聞こえた?」
「あぁ聞こえた、いますぐ本部にそう伝えよう。
君達が降りてきたということはゴンドラは動いているんだな?」
「はいそうです、だから上がる分に問題はないです。」
『そっちも大丈夫そうだな、それじゃぁ後は頼んだ』
「後は察にね、うん気をつけてな」
「りょー、大丈夫なんだよな?」
「うん、全然大丈夫って。」
「それじゃ、後は察に任せて、俺らはもう一回コンドラで上がるか」
「そうだな」
圭吾と交番をでようとすると責任者らしき人に止められて
「君達も私達の一緒に行くぞ」
といわれてしまった。
渋々交番の椅子に座って、本部の通達とか
あとどのぐらいで来るとか言う話をワァワァと聞かされた。
それから30分後、本部もスキー場前にきたらしく
あたし達も向かうことになった。状況説明できるのはあたし達だけだから。
スキー場前で決めた少人数のスキーの格好をした警察たちと
あたし達はゴンドラでもう上まで来ていた。
スキー場の吹雪もかなりおさまっていて
コンドラ乗車場から出るとすぐに見つかる。
「それでは、私どもが入り口前で発砲音を出しましょう」
「分かりました、あなた達は一緒に裏口の方に来てください」
「分かりました、それじゃぁ最短距離を教えますね、ついてきてください」
圭吾とあたしは猛スピードでレンタルの小屋の裏手に回った。
相手には見つからなかったらしい。
「ここからぐるっと回ってそこの裏手にいきます。
裏口を開けたら多分あたしの友達がいますから」
そういってまたスピードをつけて裏口の回った。
察達はケータイで連絡を取り合っていた。
なんだかトロくてイライラしてきた・・・。
「とりあえず、りょーに会うか」
「それが適作」
そう言い合って、裏口をそ・・・っとあけた。
するとりょーが立っていて、小声で
「さすがナイスコンビネーション」
と言って笑った。笑ってる場合じゃないけどな・・・
察の発砲音を合図に待って、あたしたちはカフェに乗り込んだ。




