*第30話*
「はぁ~っ!久しぶりのボードはいいなっ」
「あぁ、俺も2年ぶりだよ」
「そうか、てことはあたし達と行ったとき以来?」
「そうなるかな」
中2の頃、燐とあたしとりょーでボードをしにきた。
圭吾は残念ながらこれなかったけどな・・・事故で・・・
「さて、次は何コースいく?」
「んー・・・Aコース、いくか!」
「ん、OK!」
リフトに向かっている途中、
「音々!・・・と、北島?」
りょーが後ろから声を掛けてきた。
「あ、りょー!」
「瀬戸!久しぶり!」
「相変わらずのビジュアルだな。」
りょーと燐は仲が言い訳でもないけど
友達といえばそうらしい。
まぁ、あたしとりょーと圭吾で遊んでるとき
燐がきて、そっから皆遊ぶようになったんだけどな。
「だろ、俺相変わらず真面目だろ」
「うるせーよ(笑)あ、音々。圭吾が探してたぞ?」
「・・・・」
何も答えられないでいると燐がりょーに耳打ちをした。
「ゴニョゴニョ・・・(圭吾に井上は俺といるから心配すんなって言っといて?)」
何を言ってるから聞こえない・・・けど
燐だから、大丈夫だと思った。
「わかったよ。それじゃ、俺は行ってくるよ」
そういってりょーはあたしたちに背を向けて何処かに行ってしまった。
「それじゃ、俺たちも滑りますかね」
「そう、だな」
少し気になったものの、気にしないようにした。
あれがもし、また怖いものであれば
あたしはもう立ち直れないと、そう思ってしまったのだ。
「Aコースはかなり降りるっぽいな?」
「そうだな、その代わりリフトで上ってくるときは絶景だろーよ?」
「まぁな。そんじゃ、行くか」
「おう」
あたし達はAコースを滑った。
「気持ちいいな!風が心地いいわ!」
「ほんと、丁度だ、うわっ・・・!」
いきなり燐が体制を崩した、と思ったら
燐はかなりのスピードで下に落ちていった。
あたしは叫びながら一気にスピードを上げて
燐が落ちていった方向に向かった。
「燐!!!!!!!!!」
燐は、リフト前の広場の端まで
落ちてしまっていた。
「燐!?燐!大丈夫か!?おい!」
「・・・井上・・・」
燐が起き上がろうとすると、「痛っ・・・」と声をもらした。
「怪我したのか?!ちょっと見せてみろ!・・・」
足を見ると、かなりすりむいていて
足首は内出血していた。
酷く捻挫したようで、右手もかなりすりむいていた。
「とりあえず、あがろう。な?」
「でも・・・これじゃリフトにのれねぇ・・・」
「あたしが背負うから大丈夫だよ、ほら、乗れ」
あたしはしゃがんで燐に背を向けた。
「いや・・・でも・・・」
「今は男のプライド云々間ぬんって言ってる場合じゃねぇだろ?」
「・・・ごめん」
燐は素直にあたしの背中に乗った。
立ち上がると、燐は全然軽くて
リフトに向かうのも苦ではなかった。
リフトには5分ぐらいのっていた。
「さすが、景色いいな」
「・・・・そうだな」
燐はかなり暗い顔になっていた。
「燐?気分、悪いか?」
「いや・・・悪いな・・・とおもって・・・」
「あぁ、気にすんなって!あたしも燐に元気付けられたんだから、な?」
「そう・・・か?」
「まぁな。そうだ、ちょっと話聞いてくれるか?」
「俺でいいなら」
「ありがとう。実はさ・・・____」
圭吾との事を全部話した。
そして、今の状況も。
「そっか・・・それで逃げてきたわけね」
「そう・・・はは・・・あたし、ほんと弱いな」
「別に、弱くないんじゃない?もう少し勇気があれば大丈夫」
「勇気・・・?」
「そう、勇気。告白、しちゃえば?」
「無理無理・・・圭吾、モテモテだし・・・
あたしなんて眼中にないよ・・・さっき話したろ・・・」
そういうと、燐は意味ありげな笑みを見せて
「井上は鈍いな。瀬戸もかなり苦労しただろな・・・」
「え?鈍い?それ、りょーにも言われた・・・と、おもう」
「あっはは!そりゃそうだよなぁ。まぁ、勇気を持て。
自分に自信を持て。俺は井上は強いと思ってるから、な?」
「・・・どうだろうな・・・」
「大丈夫!振られたら俺が慰めてやるよ?な!」
そういってにっこり笑う燐のおかげで
あたしは自分の何かが動く気がした。
「ありがとう、がんばる」
リフトの上でメアドと番を交換してリフトを降りた。




