*第29話*
ホテルロビー、あいかわらずキラッキラだ。
「それじゃ、バスで上に上がるからな~・・・。
バスの席順はいきしと一緒だぞー・・・。それじゃ、ついてこい~・・・」
おーちゃんは明らかに眠たそうに言った。
これだから教師は・・・
ホテルから現地まで約小1時間はかかるらしい。
「それじゃ現地に言ってからのことを言うぞー。
現地についたら、荷物を取ってとりあえず並べよ?
そっから道具借りる人は借りて、用意する。
俺が自由行動って言ったらそこからは自由だ。わかったか?」
『はーい』
どこすべろっかな。とりあえず、緩やかなところとかだよな
「音々、圭吾とすべるんだろ?」
りょーが聞いてきた。
「もちろん!まぁここは幼馴染の特権だよな?」
「そうだな。まぁせいぜいほかの女子に獲られない様にな」
「・・・そこが心配だよなぁ・・・?」
「まっ、現地についたらずっと圭吾といることだな。
こう、カレカノですよーってアピールする感じで?」
「それが一番いい策だよな。りょー、ありがとなっ」
りょーは本当にいい友達だ。
現地到着。現在AM11:30
「皆荷物とったなぁー?それじゃぁ、借りる奴は借りて、ある奴は用意してこいー」
おーちゃんの声とともに皆バラバラと用意しはじめた。
「さて、俺らも用意するか?」
「そうだな」
圭吾とボードをセットしていたとき。
「けぇいぃごぉくぅん!」
不意にでもないが後ろからキモチワルイ声が聞こえた。実に耳障りな。
「・・・ブリブリ娘だ。」
「なぁんですぅってぇ?あんたみたいなぁ男みたいな女にぃゆわれたくなぁいわよぉ~?」
「・・・」
男みたいな女・・・か・・・
いつも言われてるけど今はなぜか胸が痛い。コレは恋の副作用かなにかかな・・・
「いいかえせぇないなんてぇどきょぉがないわねぇ~?」
「・・・おいそこのドブス。お前みたいなんが俺に何のようだ?」
「どぶすぅなんてぇけいごくぅんはぁすなおじゃぁないのねぇ?」
「死ね、そして消えろ。消え落ちろ。一生目の前にくんな。」
「ひ、ひっどぉぃなぁ~けぇぃごぉくぅん?そんなにすなおじゃないなんてぇ・・・」
「だまれ。それ以上言ったらいますぐゲレンデから突き落とす。音々、いこうぜ」
「・・・うん」
圭吾は言い返してくれたけど
あたしの中にはモヤがいっぱいでどうしようかと悩んでしまった。
「それじゃ、皆終わったようだから、自由行動だー!
集合は4時だぞ!かいさーん」
皆ワァワァと散らばって行った・・・と、思ったら
案の条、女子は圭吾のところに向かってきた。
「圭吾君!わたしと一緒にすべりましょうよ!」
「いいえ!私と一緒にすべりましょ?そんな男みたいな女じゃなくって!」
「そうよ!そんな女といててもいいことないわ!」
・・・あたしはどれだけ悪口を言われればいいのだろうか・・・
胸がずきずきして、痛い。
どうしたらいいか分からない。
こんなの勉強以上に難しい・・・
そうだ・・・!りょー、どこかな・・・?
きっとあたしはこのとき、つらい事から逃げ道を作って逃げようとしたのだと、後で思った。
「圭吾くん!はやくいきましょ?ね!」
「いや、俺はいかね・・・」
「いいでしょ!いきましょうよ!」
「ね?ね?」
これ以上、圭吾を誘う女を見たくない。
そうだ、そうだよ、あたし。
男勝りなあたしなら、こんなのへっちゃらだろ?
・・・こんなこと、慣れているじゃないか。
あたしは大きく息を吸って、女子たちに言い切った。
「お前らいい加減にしろよ、うぜぇんだよ!圭吾と滑りたければすべればいいだろ?
誘うたんびにあたしの事言うなよ、耳障りでたまんねぇんだよ!」
すぐにあたしはその場から立ち去って、リフトにのった。
後ろからあたしを呼び止める圭吾の声が聞こえたが
あたしは気にせずのった。気にせず・・・というか、気にしたくなかった。
上に行って、あたしはすべるコースを考えた。
とりあえず・・・慣れにCコースかな・・・
はずしている片足もつけて、Cコースに向かった時
後ろから「井上?」とめずらしくもあたしは苗字で呼ばれた。
振り向くと、そこには、幼小中仲の良かった
北島燐がいた。女子みたいな名前だけど男子。
「燐!久しぶりだな!」
黒髪・黒縁眼鏡・長身の真面目容姿の中身はなんらほかと変わりない奴。
「まじで久しぶり!元気してたか?」
「元気元気!燐も元気そうだな!」
「おう!井上、友達ときてんのか?」
「友達といえばそうだけど。3泊4日の学年旅行」
「へぇ・・・てーことは、圭吾とかりょーとかも、いんのか?」
「・・・ま、まぁな?多分、どっかにいるんだろ?」
「圭吾といっしょじゃねぇの?」
「・・・まぁ・・・な・・・」
多分こういう返事をするとこいつは・・・
「はぁ・・・喧嘩、したのか?」
あたしの異変に気づく。エスパーみたいな奴。
「・・・うん。」
「そっかー。・・・まぁ!謝り方は後で考えてさ?
とりあえずいま滑るの優先じゃねぇ?」
「・・・そうだな!滑るか!」
「おっしゃぁ!いくぜーっ」
燐はあたしの手をつかんで、Cコースに滑っていった。
あたしはいきなりでびっくりしたけど
少し冷たい風に当たって、頭がとりあずリセットされた。
・・・そうだよな?とりあえず、滑る、だよな!
あたしは、少しの間だけさっきの出来事を忘れて
燐と滑る事にしたんだ。




