*第22話*
「音々、晩飯行くから風呂入って。」
りょーの声にあたしはおきた。
あぁ・・・お風呂の前まで
ぐっすり寝てたんだな・・・あたし・・・
「ん・・・さきに入んなきゃダメなわけ・・・?」
「そーだとよ。おーちゃんは無駄に細かいしな」
「・・・んじゃ、入ってくるわ・・・」
寝室に行き、お母さんに詰め替えられた
旅行バックを開きルームウェアを引っ張り出す。
そして、その瞬間にあたしは絶句した。
「・・・なんじゃこれぇぇっ?!」
「は?!音々、どうした?!」
あたしのとてつもない声に
音楽を聴いていたえいこー以外の皆は
寝室に集まってきた。
「ゴキブリでも入ってたか?」
「・・・ゴキブリより恐ろしい。」
「はぁ?音々、お前まだ寝ぼけてる?」
圭吾に言われあたしはそうかもと思ったが
残念ながらそれは、あたしが思ってることではなく
思いたい事だと気づきまたまた絶句した。
「原因はその、ルームウェア?」
すかさずりょーが気づき
あたしは縦に首をぶんぶんと振った。
「・・・確かに絶句ー・・・するな・・・?」
たーちゃんが苦笑しながら言う。
「世に言うロリータって奴か?」
その言葉にあたしは
今すぐにでもこの服を投げ捨てたいとまで思ってしまった。
そう、お母さんが詰め替えたルームウェアは
なんともまぁピンクのその世に言うロリータ風にもので・・・。
・・・帰ったらどうやって母の罵ってやろうか?
「まぁ音々なら似合うと思うよ?」
りょーは簡単にそういうものの
あたしにはまったくそう思えなさ過ぎた。
こんな服、あたしは過去に一度も着たことがない。
・・・てか、どこからこれ持ってきたんだ?!
「とにかくフロはいってこいよ。ルームウェアは、あきらめろ」
りょーはこう、何故ずばっとあきらめろとかいえるんだろうか。
いい相談相手とは言え・・・酷い。残酷だ。
でもまぁ・・・
「あきらめる・・・か・・・」
あたしは渋々お風呂にはいったのだった。
「・・・ロビー・・・行くか・・・」
お風呂場から出てきたあたしの顔は
真っ赤だと思う。お風呂のせいと服のせい。
「そ、それじゃぁ行くか!」
圭吾は気をつかってか服からはそらしてくれたが
りょーは相変わらずなんでもかんでも言いやがる。
「普通に似合ってるよ?」
「・・・お前よくそんな恥ずかしい事を・・・!」
「いや本当のことだからな。なぁ?英斗。」
「は?あぁ・・・・お、おれにふるなよ・・・」
ほらみぃ、そらみぃ。
結局反応はこうじゃねぇか。
「・・・・早く行ってはやく帰ってこよう・・・」
そういい、あたしたちはロビーに下りた。
ロビーに行くと、まぁ・・・
あたりまえ、とは言いたくないが
余裕で視線はあたしのほうにくるわけ・・・で・・・
「りょー・・・どうしよう・・・もう・・・死にたい・・・」
ほぼ半泣き状態のあたし。
ここまで恥ずかしい思いはしたことがない。
母親・・・憎む・・!!
そう思ってると、不意に上から
なにかをかぶされて振り返った。
すると圭吾は自分の黒いパーカーをあたしにかぶせて
「それ着てたらまだましだろ」
と笑って貸してくれた。
その笑顔と言動にあたしの心は思わず弾む。
「あ、ありが、と」
思わずこぼれた笑みを隠せないまま
圭吾の結構大きいパーカーを着て
整列した。後ろの圭吾を見ると
何があったのかはわからないけど
とても明るい表情をしていた。
((そのときのりょーの反応))
「・・・鈍いって罪だな。」




