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*第19話*

-ryota-

突き放さないと圭吾はダメだと思った。

あいつはなんでもかんでも人を優先する癖がある。

人の事を考えすぎて結局自分はダメになってしまう

損な体質をしている。質ってか性格だな。

無論、俺は音々を獲るつもりなんて

まったくもって思っていない。

可愛いとは思うが、俺はもうちょっと

女っぽい子のほうが好みだしな?

あの顔で女の子爛漫の性格なら

俺は確実にほれてるだろうけどな。


バスに戻ると裕真をどかして(置いたのも俺だけど)

まだスースーと気持ちよさそうに寝てる音々を

もたれ掛からした。別に窓のほうにやってもいいんだけど

俺は宣誓布告した身だ。こうゆうことも演じるのが常識。

(中学の頃は実は演劇部だったりょー。)


少しして透真先生の声がかかった。

「出発するから座席に戻れー」

固まってたところも自分のところにもどって

バスは出発した。

あ・・・おれ結局昼食ってないな。

つか、音々も食ってないよな。


どんな音が鳴ろうとおきようとしない音々の寝顔を見て

俺は深くため息を付く。

「鈍感なうえ無防備ってのも酷い話だな」

そんなことを思うのは俺だけじゃないと思うんだけどな?


バスが動き出して1時間半ほどたったころ。

俺は圭吾が気になって仕方がなかった。

さすがに突き放しすぎたかもしれない。

・・・だけど後に引けない以上こっそり表情を見るしかない・・・よな

そう思い俺は前に座っていた2Cの女子に鏡を借りて

後ろを映した。

裕真はスヤスヤと寝ていて

案の定圭吾は不安そうな顔をしていた。

まぁそりゃ不安にもなるわな。

相談相手だった奴に宣誓布告されるとか。

前の女子に鏡を返して俺はもう一度音々を見た。

「・・・俺はただ幸せになってほしいだけなんだよな」

そう、つぶやいてみたものの

そのつぶやきを聞いてほしい相手は・・・

圭吾でしかないわけで・・・。

-ryota-


「ん・・・」

何時間ぐらい寝てただろう。

「音々、おはよう」

知らない間にりょーも起きていた。

そしてあたしは完全にりょーにもたれかかってるって言うな。

迷惑きわまりないな。

「もたれ掛かってたみたいだな。ごめん」

「別にいいよ。俺だってもたれてたわけだしな」

「・・・あれはもたれてるじゃなくて寄りかかってるが正解だろうよ」

「まぁそうだけど。音々はチビだからな」

「なっ・・・!うっせぇっ」

「本当のことを言っただけだ」

「うーわ、極悪人ッ」

「嘘をつかれなかったって思えば

俺はチョーいい人だぜ?」

「だぁまぁれぇ」

この変な会話に思わず二人とも笑っていた。

いつも思うけど、りょーと一緒にいると

つらくても笑顔になれていた。

りょーはすごい。完ぺき主義者といっても過言じゃないと思う。


「と・・・とまと!」

「はぁ?!また「と」かよ?!」

「ほらほら、文句いわずに続きを言えー」

「・・・と・・・トキ!」

「トキってなんだ?」

「鳥だよ」

「へぇ・・・き・・・機関車トーマス?!」

「お前・・・よくそんなの覚えてたな・・・

す・・・すー・・・こんぶ?」

「おっさん?!」

「うっせぇはやく答えろ!」

「ぶって・・・ぶ・・・不器用」

「音々にぴったりだ。き・・・霧」

「りぃ?!り・・・りか・・・ちゃんにんぎょう!」

「・・・う、うるしだるま?」

「なに、それ」

「・・・俺にもわかんねぇ」

正味言葉の意味を分かってないしりとりをしていると

知らない間にバスは目的地に到着していた。


「ほらー!ついたぞー!降りろー!」


朝から約8時間。

バスにのりっぱなしだったものだから

地上が懐かしく思えた。

「ふぅ・・・やっとついたな。圭吾!久しぶりに郊外に出たな!」

「そうだな?すっげ、久しぶりだわ」

「怪我とか、すんなよ?・・・」

「大丈夫、音々に心配かけるような事は

絶対しないからな」

圭吾はそう優しくあたしに言った。

圭吾の優しい声は小さい頃から多分

好きだったんだと思う。


そんなことを思っていると不意に後ろから誰かに腕を回された。

「音々、もうみんなホテルに行ってるぞ?」

「あれ?もう行ったの?皆早いな・・・」

「俺たちも行くかぁ。圭吾も行くぞ」

「っ・・・。ふー・・・。おっし、行くか!」

圭吾はなぜか妙に張り切って

あたしの腕をつかんでホテルまで走り出した。

後ろを向くとりょーがにっこり微笑んで

口パクで「が ん ば っ て」と言っていた。


どうしてか、小さい頃から

りょーの言葉にはなにか分からない力が宿ってる気がする。

よっし・・・!頑張ろう!色々と!




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