ヘリポート
新年あけましておめでとうございます。
形式を変更してみました。
Side アメリカ合衆国 ストライカー旅団戦闘団 ジョセフ・ハドソン二等軍曹
13:45
−ホテル−
学生の奏とあの政治家を保護した俺達は、ホテル屋上のヘリポートに到着して他の班が到着するまで待機していた。
「ジョセフさんってどこ出身なんですか?」 暇になった奏が聞いてきた。
「俺か? 俺は、アメリカ合衆国のカルフォルニア州出身だ。」
「カルフォルニアかぁ行ってみたいなぁ〜 ……こんな状況じゃ行きたくても行けないけど...」
気まずい空気が流れた。
双眼鏡を覗いていた雪輝が、急に慌てだした。
「く、クリスさんこ、これを見て下さい!!」そう言って軍用双眼鏡をクリスに投げ渡すとクリスが
「おい、これは……マズくないか?」と言った。
(一体どうしたんだ?)と思いつつ先程雪輝やクリスが見ていたホテル正面の大通りを見るとそこは、いたって普通の道路
……いや違う、大量の感染者達だ。
あまりの数の多さで舗装路面が黒くなっているように見えているだけだ。
あそこまでの大群がこのホテルに来たら……
(一体どうすればいいんだ……)
そんなことを考えていると、非常階段のドアが蹴破られて民間人を連れてA・B班が来た。
A班のチームリーダーが「現在の状況を」と聞いてきたので双眼鏡を渡して感染者の群れを見せると、先程まで平静だった表情から一変、焦燥感を露わにした。
AN/PRC-152無線機のチャンネルをオープンにして司令部との接続を確立した。
《ジョセフ二等軍曹だ。 救助はまだなのか!?》
《此方、司令部 ……すまない救助は不可能だ。》
《敵の大群が迫っているんだ!! 其方からも確認できているだろ!!》
《空域の安全が確保されていないから救助は無理だ。 その地点で待機してくれ。》
《不可能だ!!》 そう声を荒げると、兵士に囲まれていた民間人たちが、不安そうな表情でこちらを見つめてきている。
《すまない。 此方でも全力を尽くしているがどうにもなりそうにない。》
《……》
静寂が辺りを包み込んだ。
「兵士は、こちらに集合してくれ。」
屋上の民間人から離れた場所に兵士を集めて司令部との通信の内容を教えた。
それを聞いてある者は、嘆き、またある者は、祖国アメリカの家族へ向けて無事に帰ることを願った。
……そしてまたある者は、迫りくる脅威に備えて自身の装備の点検を始めた。
その様子を見ていた民間人がざわめき始めた。
「一体どうしたっていうんだ!? 何か問題でも起きたのか!?」 きっかけは議員の菅原だった。
30代ぐらいの男が、自衛隊員に「説明しろよ!」と詰め寄っている。
このままでは、無駄な争いに発展する恐れがある。
(言うしかないか……)そう決めて、雪輝に説明するように指示を出した。
民間人の集まりのところで雪輝が
「皆さんに重要なお知らせがあるので私の話を聞いて下さい。」と全員に聞こえる位置に移ることを呼びかけた。
「現時点での救助は、来ません。」
その一言で、騒然となった。
「ふざけるな!」とか「何のために税金を払っているんだ!!」とか「いい加減にしろ!」などという怒声で包まれた。
「静かにしてください。 理由としては、中国軍の携行型地対空ミサイルで撃墜される可能性があるからです。 撃墜されて高度500mから投げ出されたいなら別ですが。」 暴言の嵐を起こしていた者もそれで静かになった。
「……あちらを見て下さい。」 民間人が雪輝が指を指している方向を見ると先程まで約800mに居た感染者の群れが、約400mの地点に近づいて来ていた。
民間人たちに絶望が広まった。
「我々は、最後まで抵抗を続けるつもりです。
……生き残るために。」
ぶつぶつと何かを呟いている者やそれでもなお兵士に詰め寄る者も居たが、数名の青年や学生が立ち上がった。
奏やその友人・20代の青年ら5人が、俺のところへ駆け寄って来て「何か私達に出来ることはありませんか?」と聞いてきた。
「残念ながら何も無いな」と返事をすると、青年が「お願いです。 何か手伝わせてください。 自分達が何もしなかったせいであなた達が犠牲になるのが耐えられないんです!!」と反論してきた。
雪輝等を呼んでどうするかと相談をすると、やはり通路にバリケードを設置することぐらいしかない。
理由としては、銃を扱ったことの無い素人に小銃を渡すとトリガーコントロールが出来ずに至る所に弾丸がばら撒かれるからというのと、民間人を前線に出すわけにはいかないという意見があったからだ。
先程志願した者には、自衛用として拳銃を渡したが、使うことはまず無いだろう。
民間人は、ヘリポートに待機してもらって、志願者達と共に2つ下のフロアへと駆け足で行った。
非常用階段の防火シャッターを降ろして下のフロアからの侵入の時間稼ぎをしつつ、通路に各部屋の中からテーブルや冷蔵庫といった重量のある物を置いてバリケードを作成した。
先程の志願者達は、俺達が作業をしている一つ上のフロアで作業をしている。
クリスが、MK48mod0をバリケードに委託してコッキングハンドルを引いてベルトリンクされている7.62×51NATO弾をチャンバーに装填した。
「なぁジョセフ、脱出ヘリが来なかったらどうするんだ?」
「そんなこと考えるな。 生きて脱出することだけ考えておけ」真面目な顔をしてそう言うと、
「りょ〜かい」気の抜けた返事で返してきた。
それを聞いていた周りの兵士が笑った。
「静かに! 足音がする」誰かが言った。
感覚を研ぎ澄ましていると階段をゆっくりと登る足音が、だんだん大きくなって近づいてくるのが聞こえた。
しばらく経って足音がしなくなり、ほっとしていると防火シャッターが大きな音と共に、変形し始めた。
「急いで各自の持ち場に行け!」SCAR-Lの安全装置を解除してフェンスから少しだけ離れたところで銃を構えた。
バコン バコン と防火フェンスに何かを叩き付ける音が止んだと思ったら、フェンス自体を支えているフレームが軋み出し次の瞬間、感染者がなだれ込んで来た。
アンダーバレルショットガンに装填しておいたフラグ弾を発砲して先頭集団に直撃して炸裂したことにより動きをを一瞬だけ止めた。
その一瞬の間で、クリスが発砲し続けている軽機関銃から飛び出た弾丸が、感染者達を蜂の巣にした。
いくら感染者だからとはいえ足や腕・胴体を完全に破壊されたら何も出来なくなる。
「いいぞ! もっと撃て!! 奴らを完全に叩きのめしてやれ!」
狭い通路での味方部隊の濃い弾幕によって感染者が出てきた瞬間に原型を留めない状態になっている。
後ろで軽機関銃を発砲していた兵士が「再装填!!」と叫んでいるので掩護射撃をして味方がリロードを終えるまでの時間稼ぎをした。
(こんなことなら俺も分隊支援火器を持ってくるんだった……)と思いつつもチェストリグに取り付けられているMK3A2手榴弾のピンを抜いて「手榴弾投擲!!」と叫びながら感染者の群れへと投げ込んだ。
ピンが抜かれてレバーの安全装置が外れた手榴弾が放物線を描きながら感染者の群れの中心に転がり4.5秒経過した瞬間に内部の信管が作動してTNTに誘爆そして円筒状の容器の中で極限まで圧縮された衝撃波が感染者達を薙ぎ払った。
いくら弾丸を消費しても一向に減る気配が無くこのままではやられてしまうだけだったのだが、誰かが「後退しよう!」と叫び、
「了解!」というような流れで上のフロアへと後退した。
上のフロアへの防御陣地の各自の位置に着いたときにAN/PRC-152無線機が突然鳴った。
《あ、あ〜マイクテスト、マイクテスト 誰か聴こえたら返事をしてくれ。》微かにだがヘリコプター特有の風を切るローター音が入って来ている。
《脱出ヘリか!?》
《ん〜まぁそんなところだ。 今から6分でそちらに向かう。》
《6分!? 無理だ!!》
《じゃあ5分。》
《・・・》←言う時間が勿体無い。
《各部隊へ、あと5分で脱出ヘリが到着するらしい。 各自脱出の用意をしておけ。》
《《《了解!》》》
《現在屋上以外のフロアに居る人間は、急いで屋上に行け! 下のフロアと入口を爆破する!》
「おいクリス、ちょっとバックパックの中からRDXを取ってくれ」
「こいつだよな?」
「ああそれだ。 ケーブルを持って屋上に行ってくれ」
「死ぬなよ。」
「ああ、大丈夫だ」
まだ破られていない防火シャッターへと走って行き、RDX 爆薬を非常階段に設置して起爆用のケーブルに繋がっている電気信管を爆薬に挿し込んだ。
後ろの方から聞こえてくる音がだんだん大きくなってきた気がする。
このままここに居てはまずいと第六感が警鐘を鳴らしている。
それに従って屋上へと駆け上がろうと一歩踏み出した時に防火シャッターが破られた。
やばい、ヤバい、ヤバイと屋上へと向かって駆け上り出入り口にも爆薬を設置してクリスから起爆装置を受け取り周辺に人が居ないのを確認して起爆させた。
爆破の際の煙で視界不良になっているときに今最も聞きたくない音がした。
崩れ落ちた筈のコンクリートが上へと動いて来ている。
「嘘だろ……」
瓦礫の中から、腕が出てついに頭も出て来た。
その生命力(既に死んでいるが)に驚愕しつつも銃を向けた。
横に二脚を立てて軽機関銃を構えていた兵士が「射撃用意!」と叫び他の兵士も銃を向けたが、予想外の事態が起きた。
俺の真後ろの格子状の蓋が外れてそこから感染者が這い出て来たらしいのだが、匍匐姿勢の為完全に死角で分らなかった。
気付いたときには、今にも噛みつくことが出来る位置に居て死を覚悟した。
生命に関わる危険を感じた時にスローモーションになるというのはどうやら本当らしい。
感染者が口を開いて俺に噛みつこうとして顔を近付けて来たので俺は、死を覚悟して瞼を閉じた。
首筋に痛みを感じた。
その直後、屋上に銃声が響き渡った……
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