閃光
文字数がどんどん少なくなっていく……
― 八王子市近郊 ―
Side アメリカ合衆国 ストライカー旅団戦闘団 ジョセフ・ハドソン二等軍曹
うっ頭が……
キィィーンという耳鳴りが酷くストライカー装甲車のエンジン音すら聴こえない。
一体何が起こったんだ!?
確か俺は、あの瞬間もRWSで周辺を警戒していたはず……
激しい頭痛と共にあの瞬間に起こったことを思い出した。
1分24秒前
《こちらの担当区画の制圧が完了しました。》
《了解した。 こちらの区画は25%残っている。 オーバー》
と言う通信が聞えたのと共にサーマルイメージが、白一色になった。
そのとき俺は、赤外線投光器を照射されたのだと思い込み、通常のカメラ映像に切り替え絶句した。
C4Iの作戦区域地図上で航空機墜落現場と表示されている地点から高度200~300mの地点で空が歪んだと思ったら火の玉となりそれが急激に膨張してその際に生じたソニックブーム(衝撃波)によって市街地のビルの窓ガラスが一斉に割れていくのと爆音が聞えてくるのと意識を失うのは同時だった……
「クリス! 無事か!? 無事なら返事をしろ!」 なぜクリスだけかと言うと俺とクリス以外の乗員は降車していたため生存を確認することは出来ない為で他意はない。
「ァア? すまないがもう少し大きな声で言ってくれ。 耳鳴りが酷くて何て言ってるのかがまったく分からん。 後、何が起こったのか説明してくれ」 ……口は悪くなっているが一応無事のようだ。
あの瞬間に俺が見たものについて聞きながらストライカー装甲車のセルフチェックをしていたクリスが悪態を付いた。
「クソッ」
「どうしたんだ」
「油圧機構がいかれていやがる! 取り敢えず動くかどうかやっては見るが……」
それを聞くと俺は、座席後方のガンラックに固定していたM16A4を掴み取り上部ハッチを開けて外に飛び降りた。
着地してから見た光景に自分の頭の処理が追いつかなかった。
よく見かける一般的なガラス張りのビルは窓ガラスが全部吹き飛び、市街は土煙に包まれていた。
そして先程まで戦闘をしていた筈の歩兵が、誰一人として立っていなかった。
思考機能が回復した俺は、一番近くに倒れていた友軍兵士のそばに駆け寄った。目立った外傷は無かったのだが心拍を確認したらところ完全に停止しており、他の兵士達も同じ状態だった。
「一体どうなったって言うんだよ!!」
《ストライカー旅団戦闘団に所属する各兵員に告ぐ。 先程の爆発は、燃料気化爆弾の模様。 爆発にによって人民解放軍は壊滅状態にある。 但し、我が部隊も多大な被害を受けた。》
《自衛隊側の被害は?》
《殆どの部隊と通信が取れません。 一体何があったんですか!?》
《畜生! 比較的簡単な反攻作戦でこんなことになるなんて……》
《脱出用ヘリを要請する!! あと20分以内に来てくれ!》
無線が混線している……
《生存しているストライカー旅団戦闘団の全隊員に告ぐ 現在時刻を持って現作戦を破棄する。 脱出用ヘリが来るまで死傷者の回収等を行ってくれ。》
「おいおいマジか? こんな爆発じゃ殆ど死んだだろ…… クソッタレ……」
「誰か生きていたら返事をしてくれ……」
周りの死体を一カ所に運びながら半ば泣きかけている声で呟いた。
すると窓ガラスが全て割れたビルから人がゆっくりとした足取りで出て来た。
アメリカ兵 「そこの人! 今すぐ此方に来てください! さぁ早く!!」ビルから出て来た人影はだんだん歩くペースが速くなっていってその兵士が伸ばした腕に噛み付いた。
「ギャァ 噛み付きやがった! 何だこいつ!?」 咬まれた兵士は、レッグホルスターから拳銃を抜くとその人の形をした何かに対して発砲した。
銃口から飛び出した弾丸は、心臓を撃ち抜き普通の人間だったら倒れている筈だった。
……そう、感染者で無ければ。
感染者に発砲した兵士は、抵抗をしたが予想以上の腕力で引き離すことが出来ずそのまま喉を食い千切られた。
「は? ……なにが、何が起こったんだ?」 目の前で起こったことに対して今度こそ処理が追いつかなくなった。
唖然としているとクリスが俺の腕を掴んで「しっかりしろ! 奴らに喰われるぞ!」と言いながら半ば引きずられる形でストライカーの押し込まれた。
《司令部、こちらセイバー2-5 至急応答してくれ!》クリスが無線機に向かって怒鳴った。
《どうした?》
《目の前でチャーリー分隊の奴が噛み殺された!》
《どういう事だ? もう少し詳しく説明をしてくれ。》
《感染者だ! それもかなりの数だ!!》
《何と言う事だ…… アメリカ軍・自衛隊全部隊へ、直ちに活動可能な部隊を一カ所に集結させて防衛戦を張るんだ!》
《感染者だ! それもかなりの数だ! 各部隊、作戦区画D-6へ急行して脱出用ヘリが来るまで持ちこたえてくれ。》
「感染者? さっきのあれか? あんなのに銃弾が効くのか?」
「やるしかないだろ……」
― 作戦区画D-3 ―
12:37
反攻作戦に参加して区画D-3に集結した部隊の車両台数は30両あったものの、生存者は数えることが出来る程度しかいなかった。
脱出ヘリが到着するまでの間この地点を防衛しなければ俺達は、ここで死ぬことになる。
そんなラストを俺は望んでなどいない。
ここで何としても生き残ってやる。
そして、感染者の大群がやってきた。