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Episode:06

このシリーズは既に完結まで執筆しております。

3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。

 ジャックとカトレアが激烈な攻防を繰り広げる背後で、ベオルは荒い息を漏らしながら、数人のシスターと向き合っていた。

肩で息を切らし、体力の限界がじわじわと牙をむく。


シスターたち個々の戦闘力は突出していない。しかし、連携攻撃は容赦なく、わずかな隙でも即座に圧力として襲いかかる。


その中でも、エリザの存在感は別格だった。

戦闘力だけでなく、残忍性も群を抜いており、高速回転する刃を組み込んだ蹴りは、ベオルの鉄のような肉体すらいとも容易く削り取る。


「くっ……こ、こいつ……強い……」


ベオルは必死に距離を取り、爪を握りしめて反撃のタイミングを探る。雨に濡れた瓦礫の路面で、一瞬の判断ミスが命取りになる――戦場は、緊張で張り詰めていた。

ベオルの血が飛び散るたび、エリザは不気味な笑みを浮かべる。

口元に付いた血を舌でぬめりと舐め取り、その瞳はさらに冷たく光った。


「亜人の血は不味いかと思いましたが……ワンちゃんの血は、意外と美味しいですね」

「そりゃ……どうも。俺としては、改造者のアンタの内臓が本当に機械かどうか確かめたいんだが」

「なら、試してみますか?」


エリザは空中に跳び上がり、右足を振り上げてかかと落としを放つ。

受け止めれば、肉体は簡単に切り刻まれる――。

ベオルは咄嗟に身をひねり、回避に専念するが、次々と他のシスターたちが逃げ道を塞ぐ。


雨に濡れた瓦礫の上、軋む金属の音と刃の衝突音が飛び交い、戦場の緊迫感は頂点に達する。

肩で荒い息をつき、爪を握りしめ、ベオルは絶体絶命の状況で次の一手を探した。


「ちっ……くそったれ」


覚悟を決めたベオルは、エリザの蹴りを右肩で受け止める。

回転する刃が肉を貫き、骨を砕く鈍い音が響く――痛みが全身を貫くが、ベオルは耐えた。


「これでもくらいやがれ!!」


咄嗟に足を掴み、ベオルはエリザをそのまま地面に叩きつける。

受け身を取れず、肺に詰まっていた空気が強制的に押し出される。

エリザの目が一瞬、大きく見開かれ、驚きが戦場に反響した。


「はぁ……はぁ……どうだ」


右肩から血を流しながらも、したり顔を浮かべるベオル。

だが、エリザは悔しそうに眉をひそめながらも、すぐに立ち上がる。

受けたダメージはほとんど無いらしく、その姿はまるで悪夢のように鮮やかだった。


「チッ、やってくれたな……ハチ公がッ!」


今までの穏やかな口調とは打って変わって、エリザの声が低く荒れた。

 その舌打ちは、雨音の中で鋭く響き、まるで獣の唸りのように戦場の空気を裂く。


「あぁん? そっちが素か? 似合ってるじゃねぇか」


 ベオルが軽口を叩く


「ったくよぉ……これでも“シスター”なんだぜ?」


 エリザは鼻で笑う。


「お上品に喋らねぇと、上の連中に怒られちまうのさ。……ま、今は礼儀なんざクソくらえだけどな」


エリザが右手を上げると、他のシスターたちも一斉に構えた。

「一斉攻撃で仕留める」


ベオルは死を覚悟した。

だが、その間にもアリスを逃がす時間を稼がなければならない――。

心を奮い立たせ、ベオルは叫ぶ。


「アリス、逃げろ!!」


しかし返事はない。

慌てて振り向くと、そこにいたはずのアリスの姿は消えていた。


「アリス!!」


その瞬間、上空から冷たい声が響く。

「アリス様はこちらで回収しました」


ベオルが顔を上げると、そこにはシスター・オルカが立っていた。

オルカの背中からは無数の機械の触手が伸び、その一本がアリスをしっかりと拘束している。

アリスは意識を失っているのか、微動だにせず、まるで氷のように静かだった。

ベオルの叫びを耳にして、ジャックも状況を即座に理解した。


「Miss.アリス!」


「あら、もう時間のようですね」


カトレアは冷ややかな笑みを浮かべながら、戦闘用に変形させていた右腕を元の形に戻す。


ジャックは躊躇なくアリスの元へ駆け出す――だが、オルカの無数の機械仕掛けの触手が行く手を阻んだ。


鉄のごとき触手がジャックとベオルの体を絡め取り、強烈に締め上げる。

全身を振るって抵抗するが、その力は圧倒的で、拘束を解くことは不可能だった。


ベオルは限界を迎えたのか、肩で荒く息をする間もなく意識を失い、その体は瓦礫の上にだらりと崩れ落ちた。


「Mr.ベオル!」


ジャックの叫びも、瓦礫と雨にかき消されるかのように虚しく響くだけで、応答は返ってこない。


焦燥に駆られたジャックは、全身の力を振り絞って拘束を断ち切ろうとする。しかし、触手はまるで生き物のようにしなやかに絡みつき、もがけばもがくほど締め付けは増していく。


金属の鎖が軋む音、雨粒が触手に跳ね返る音――戦場のすべての音が、ジャックの焦りをさらに煽った。


「貴方にはアリス様の“回収”を依頼したはずです、便利屋さん」


 オルカの声は冷たく、感情の起伏が一切なかった。まるで命令書を読み上げる機械のように。


「私は……自分の信念に基づいて、Miss.アリスを助けようとしたまでです」


 ジャックの声は低く、だが確固たるものだった。

 その“信念”という言葉に、オルカの眉がわずかに動く。


「……そうですか」


 オルカは興味を失ったように小さく息を吐き、触手の一本を指先でなぞる。

 機械の関節がかすかに光を帯び、雨の中で不気味な蒸気が立ち上る。


「ですが――奇妙ですね。貴方から……どこか懐かしい“気配”を感じたのです。けれど、それも気のせいでしょう。まさか、貴方が“あの方”であるはずがない」


「あの方……?」


 ジャックが問い返した瞬間、オルカの瞳が冷たく細められた。

 しまった――というように彼女は口を閉ざし、次の瞬間、触手がぎちりと締め上げる。


 金属と金属が擦れ合う不快な音が、雨音を突き破った。

 ジャックの装甲が軋み、内部の警告ランプが赤く点滅する。


「おしゃべりはここまでです。もう、貴方は“用済み”ですから」


 オルカが指を軽く鳴らす――。

 次の瞬間、触手全体を走る閃光が夜を切り裂いた。


 轟音とともに、強烈な電流がジャックの体を貫く。

 人工神経が焼け、視界が白く弾ける。

 それでも、彼は最後の瞬間まで――アリスの名を、心の中で呼び続けていた。


 そして、光が消える。

 雨と共に沈むように、ジャックの意識は暗闇へと落ちていった――。


【※読者の皆様へ。重要なお知らせ】


この話を読んでいただきありがとうございます。


「面白いかも! 続きが楽しみ!」

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