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Episode:30

このシリーズは既に完結まで執筆しております。

3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです

 ジャックたちから逃げ延びたエヴァンは、実験施設の地下通路を、もつれる足取りで駆け抜けていた。


「はぁ……っ、はぁ……っ……!」


 肺が焼けつくように痛む。

 喉は乾き、視界が揺れる。


「ここは……設計図にも載っていない、秘密の通路だ……」


 壁に手をつき、ようやく足を止める。


「そう……そう簡単に見つかるわけがない……」


 荒い呼吸を整えながら、天井を見上げた。


 そこには、切れかけの蛍光灯。

 じじっ、と嫌な音を立てて、点いたり消えたりを繰り返している。


「……はぁ……はぁ……ふぅ……」


 心拍が落ち着くにつれ、胸に安堵が広がっていく。


 ――逃げ切った。


 そう確信した、その時だった。


 カツッ。


 カツッ。


 乾いた足音が、通路の奥から響いてくる。


 一定のリズム。

 甲高く、硬質な音。


 それはまるで――女性のハイヒールが、静かな床を叩くような音だった。


「……?」


 背筋に、ぞくりとした悪寒が走る。


 切れかけの照明を頼りに、エヴァンは目を凝らした。


 明滅する光の向こう――

 通路の奥に、一人の人影が立っている。


 黒い修道服。

 そして、月光のように白い肌。


「……シスター……?」


 次の瞬間、光が点いた。


 そこに立っていたのは――


 シスター・オルカだった。


「おぉ……シスター・オルカ!」


 思わず、安堵の声が漏れる。


「無事でしたか……!」


「えぇ。おかげさまで」


 微笑みを浮かべ、オルカは静かに答える。


 一瞬、心から救われた気がした。

 だが――すぐに、違和感が胸を締めつける。


(……待て)


 エヴァンの脳裏を、冷たい記憶がよぎる。


 ――彼女は、アリスを経由して暴走させられたはずだ。

 ――恨みを抱いていても、何一つおかしくない。


 喉が鳴る。


 だが、ここで敵意を見せるわけにはいかない。


「わ、私も……彼らから逃げてきたところです」


 慌てて言葉を継ぐ。


「さぁ……一緒に逃げましょう。ここを抜ければ、安全ですから」


 ――誤魔化すしかない。


 そう悟った瞬間、エヴァンの舌はやけに滑らかになっていた。

 言葉を重ね、笑顔を作り、必死に“無害な同盟者”を装う。


 だが。


 オルカは、何も答えない。


 ただ、薄く唇を吊り上げたまま――

 その瞳だけが、底冷えするほど冷たく、光を失っていた。


 そして。


 次の瞬間だった。


「――っ!?」


 視界が、跳ねた。


 首元に、ひやりとした感触。

 直後、喉が締め上げられ、床が遠ざかる。


 エヴァンの身体は宙に浮き、足先が空を掻いた。


「ぐっ……!?」


 反射的に首元へ手を伸ばす。

 だが、指に触れたのは――細く、硬い感触。


 ワイヤー。


 鋼線のように冷たく、しなやかで、握力でどうにかなる代物ではない。


「な……何を……っ……!」


 声にならない悲鳴が、喉の奥で潰れる。


 ワイヤーは容赦なく締まり、呼吸を奪っていく。

 空気が吸えない。

 血が頭に上り、視界が赤く染まる。


 顔はみるみるうちに朱に変わり、額から汗が噴き出した。


 もがく。

 必死に掴み、引き剥がそうとする。


 だが、ワイヤーは微動だにしない。


 その様子を眺めながら――

 オルカは、静かな足取りで近づいてきた。


 カツ、カツ。


 切れかけの照明の下、ハイヒールの音が不自然なほど大きく、地下通路に反響する。


 苦悶に歪むエヴァンの顔を見下ろし、オルカは感情の色を一切含まない声で、ゆっくりと告げた。


「……私も、貴方を利用していました」


 それは告白でも、謝罪でもない。

 ただの事実の列挙だった。


「ですから……私を暴走させた件は、許しましょう」


 その言葉とは裏腹に――

 ワイヤーが、きりっと乾いた音を立てて、さらに食い込む。


「……ですが」


 オルカは手にしたワイヤーを引いた。


 容赦なく。

 一切の躊躇もなく。


「ぐっ――!」


 喉が潰れ、声が途切れる。


 完全に息を奪われたエヴァンは、両手両足をばたつかせ、必死に空を掴く。

 だが、その抵抗はみるみる弱まり――


 赤く充血していた顔は、やがて青白く変わっていった。


「不殺を貫かれた、あの方の手を……汚すわけにはいきません」


 オルカがそう呟いたときには、

 エヴァンの身体はすでに力を失っていた。


 ワイヤーに吊られたまま、手足はだらりと垂れ下がり、

 もはや、そこに命の重みはない。


 ――沈黙。


 次の瞬間。


「……これが、貴女の選択ですか。シスター・オルカ」


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