Episode:26
このシリーズは既に完結まで執筆しております。
3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。
「――まるで地獄のオーケストラですね」
巨体が姿を現す。
ジャックは左手を突き出した。
「弾丸よ、踊りなさい」
二本の指先から放たれた弾丸が螺旋を描き、着弾。
轟音と火花。
怪物が仰け反り、悲鳴を上げる。
だが、倒れない。
ジャックは跳躍し、頭部へ着地する。
両手を突き出し、無数の弾丸を叩き込む。
装填、発射。
装填、発射。
それは破壊であり、同時に――祈りだった。
(……包み込むように巨大化していた。ならば……)
外殻に穿たれた穴。
奥に見えた、かすかな肌色。
「……やはり」
銃撃を止め、ナイフを抜く。
裂け目へ飛び込み、内部へ。
蠢く管を切り裂き、最深部へ――。
「……シスター・オルカ」
胎内のような空間に、彼女はいた。
壊れた人形のように、かろうじて生きている。
「呼吸はある……まだ……!」
だが、管は深く融合し、引き剥がせない。
「……っ!」
出口が塞がれる。
閉じ込められる。
そのとき――
「……しにがみ……さん……」
幼い声。
オルカの瞳が、かすかに開いた。
「シスター・オルカ。助けます。必ず」
「……殺そうとした人を……助けるなんて……変な人……」
弱々しい手が、ジャックの手を掴む。
「……お願い……私を……殺して……」
胸が、締め付けられる。
「……いいえ」
ジャックの声は、静かで、揺るがなかった。
「貴女が望んでも、私は許しません。死は放棄です。
私は死神ですが――処刑人ではありません」
「……でも……罪を……」
「なら、生きて背負いなさい」
短く、強く。
「それは痛みですが……“強さ”です」
指を絡める。
「だから助けます。死なせません。――紳士として、必ず」
オルカの目に、涙が滲む。
「……もう……ずるい……」
「泣いていい。涙は罪ではありません」
ジャックはナイフを逆手に握る。
「覚悟を。生きる覚悟を」
モーター音。
身体が熱を帯びる。
「少々、本気を出します」
刹那。
触手が粉砕される。
目で追いつくことが不可能な速さ。
人外の速度。
「……これが……死神……?」
「肉体への負荷は無視しています。後が怖いですが……今は脱出が優先です」
腕が裂け、黒い血が滴る。
「……腕が……!」
「問題ありません。貴女が先です」
切断、切断、切断。
――最後の一本。
巨体は崩れ、沈黙した。
瓦礫の中で、
ジャックはオルカを抱き上げる。
そこに立っていたのは、
死神ではなく、ただ一人の紳士だった。
オルカの身体がジャックへ倒れ込み、彼はしっかりと抱き止める。
「……大丈夫です。もう終わりました」
「……死神さん……」
細い腕が、震えながらもジャックの背に回された。
その抱擁は弱々しく、けれど確かに「生きたい」という熱を帯びていた。
「……ありがとう……生かしてくれて……」
ジャックは小さく微笑む。
「生きてくれて、ありがとうございます。シスター・オルカ」
塞がっていた脱出口は、ジャックが切り分けた管の再生が停止したことで開きはじめていた。
彼は彼女を抱き上げ、地上へ向かって跳躍する。
「罪は逃げません。しかし……貴女も逃げなくていい。一緒に背負っていきましょう。生きて」
それは“死神”の声ではなかった。
ただひとりの男として、彼が差し伸べた――救いの言葉だった。
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