Episode:24
このシリーズは既に完結まで執筆しております。
3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。
「死神と呼ばれたこの私が、貴女に引導を渡しましょう」
「あ、貴方が……死神? ふ、ふざけないで……」
オルカは乾いた笑いを漏らしながらも、後ずさる。
「人を殺さない死神なんて……そんなもの、笑い話にもなりません!」
動揺を振り払うように、ワイヤーを操る。
吊られた操り糸のように死体たちが再び立ち上がり、一斉に銃を構える。
銃口がジャックへ向けられた――その瞬間。
そこにいたはずのジャックの姿が、ふっと掻き消えた。
「……え?」
一拍遅れて、理解が追いつかない。
数秒後。
バサッ……!
鈍い音を立てて、死体の兵士たちが次々と床へ崩れ落ちる。
糸が切れた人形のように。
オルカがハッとして自分の操作ワイヤーを見ると――
そのすべてが、根元から綺麗に断ち切られていた。
「な……いつ……切った……?」
目で追えなかった。
いや、気配すら感じ取れなかった。
オルカの背筋に、寒気が走った。
“死神”を名乗る彼女自身でさえ、目で追えない速度。理解の前に、現実が塗り替えられていく。
慌てて背後を振り向くと――そこにいた。
ナイフを軽く撫で、静かに立つジャックの姿。
「貴方が死神……そんなもの、私は――認めません!」
怒りと自負心が交錯する瞬間、オルカは触手を一斉に伸ばした。
金属の触手が波のように、ジャックへ押し寄せる。
だがジャックは軽くステップを踏むだけで、再び姿を消した。
次の瞬間、触手に凄まじい斬撃が走る――それはまるで風のように、目にも止まらぬ速さで次々と切り裂かれていく。
「ぐっ……!?」
しかし、認めたくない己の理性を振り切り、オルカは攻撃の手を緩めない。
触手の数を増やし、ジャックを包囲するように渦巻かせる――その動きは狂気と執念に満ちていた。
だが、ジャックは視界の端から端へ軽やかに舞い、まるで幽霊か、あるいは死そのものが形を取ったかのように振る舞う。
その瞬間、オルカの視線は一瞬だけジャックに釘付けになった――たった一瞬、その油断が、致命的な隙を生む。
「なっ……!」
鋭い痛みが、全身を貫いた。
右腕が――無慈悲に切断され、床に落ちる。触手の力をもってしても、止めることはできなかった。
「――な、なにっ!? エリーニュスで強化されたこの体を、こんなに簡単に――!」
オルカの声は震え、怒りと恐怖、そして理解を超えた屈辱が、胸を押し潰すように襲いかかる。
「死神と名乗る割には……この程度ですか」
ジャックの冷たい声に、オルカの胸の奥で何かが崩れ落ちる。
「ふ、ふざけるなっ! 死神は私……私が死神なんだぁぁ!」
まるで子供が駄々をこねるかのように叫びながら、オルカは無数の触手を狂ったように振り回す。
触手は床を抉り、柱を粉砕し、まるで部屋そのものを支配するかの勢いでジャックに襲いかかる。
しかし、ジャックは動じることなく、淡々と襲いかかる触手を切り刻む。
鋭いナイフを握った右手の人差し指をオルカに向けると、その指先から静かに弾丸が放たれる。
弾丸は無数の触手をかいくぐり、オルカの胸へと突き刺さった。
ジャックは弾丸を放った指をそっと唇に添える。
囁くように、しかし決意と威圧に満ちた声で――
「――発芽せよ)」
その瞬間、オルカの胸に埋まった弾丸から、淡い緑の光がゆらりと滲む。
光の蔦が蠢きながら伸び、オルカの体をまるで生け捕りにするかのように絡みつく。
触手を振るい、叫び、必死に抵抗するオルカの体に、緑の蔦は容赦なく絡み、じわりと力を奪っていく――まるで自然そのものが、死神の命令に従うかのように。
「これは、いつの間に!」
オルカは触手を振るい、絡みつく緑の蔦を引きちぎる。だが、蔦はそれに屈することなく、脈打つように伸び続けていく。
「ですが、この技は対応済みです」
冷たい声とともに、オルカの背から黒光りする管が数本、獣の尾のように弾け飛んだ。
管は生き物のようにうねりながら空間を走り、床や天井へ鋭く突き刺さる。
金属を裂く嫌な音が響き、管は巨大な支柱のように固定された。
「エネルギーを吸収して成長する蔦……ですが――吸収しきれないほどのエネルギーを送れば、暴走して破裂するだけでしょう?」
オルカは薄く笑い、旧実験場の主電源を強制解放する。
膨大な電力が奔流となって管を通り、彼女の身体を駆け巡った。
その瞬間、胸に埋まった《Seed Bullet》の輝きが弱まり、絡みついた蔦が一瞬だけ痙攣する。
しかし──その刹那。
ジャックは、音もなく触手の背後へ回り込んでいた。
オルカが自らの策に意識を奪われている間に、彼は無数の触手を一つ残らず切断していたのだ。
飛び散る金属片すら追いつけない速度で。
緑の蔦が不気味な脈動を繰り返す中、ジャックの瞳は揺るぎなくオルカだけを捕えている。
オルカの視界の端で、影が沈み、消え──次の瞬間には、既に目の前に立っていた。
「――っ!?」
反応するより早く、漆黒のナイフがオルカの左腕に深々と突き立つ。
続いて、ジャックは無慈悲に右足を振り上げ、そのナイフの柄を踏み砕くように踏みつけた。
バチィッ!
凄まじい電流が弾け、オルカの全身が痙攣する。
管を流れていた電力が一気に途絶え、吸収システムが瞬時に沈黙した。
「馬鹿な……制御システムを……一瞬で見抜いたというのですか……!?」
電力を失った途端、抑えつけられていた《Seed Bullet》の蔦が激しく膨張を始める。
抑え込んでいたダムが破壊されたかのような勢いで、蔦は腕から胸、胴体へと這い回り、容赦なく締め上げる。
「くっ……! 離れろ……邪魔だ、やめろッ!」
オルカは触手の残骸で必死に蔦を引きちぎろうとする。
しかし、引き裂いた端から新たな蔦が溢れ出し、凄まじい速度で全身へと絡みついていく。
もう抵抗は、止まらない蔦の成長には追いつけなかった。
「どうですか?」
「Miss.エリザベスや《SCAR》の皆さんを、締め付け、弄び、壊してきた貴女が――今、同じように締め付けられて苦しむ気分は?」
ジャックの声は低く、氷のように冷え切っていた。
感情はない。しかし、確かな怒りだけが凍てついた刃となって突き刺さる。
オルカの身体を巻く蔦がさらに締め上げ、喉を押し潰す。
骨が軋み、金属が悲鳴を上げる音が響く。
「ぐ……が、あ……ッ」
呼吸が奪われ、声は掠れ、言葉にならない。
それでも、折れかけた意地だけが、彼女の口を動かす。
「わ、私は……死神……だ……」
「私が……死を……決める……存在……なんだ……ッ」
震える声。
涙か汗かも分からない液体が頬を伝う。
その言葉は、祈りのようであり、呪いのようでもあった。
しかし、ジャックの瞳は微動だにせず、ただ冷たく見下ろす。
光の蔦が裂ける音と共に、ジャックの刃がそれらを根本から一気に断ち切った。
支えを失ったオルカの身体は、無様に床へ叩きつけられる。
血と埃の混じった空気の中、オルカ――冷たい瞳をした残虐な女が、唇を震わせながら笑った。
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