Episode:21
このシリーズは既に完結まで執筆しております。
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「私は……死神と出会い、思い知らされました」
オルカの声は震えていない。むしろ静かに昂ぶり、狂信に満ちていた。両手を大きく広げ、彼女はまるで祈りの舞を踊るかのように言葉を紡ぐ。
「神の前では、誰も平等に殺される。慈悲も希望もない。無作為に、ただ死が訪れる――それを許されるのは、彼が死神だからこそ」
彼女の目は狂気に光っていた。
「あの方の前では、聖人も悪人も関係ありません。全ての命は平等に、あの方によって狩り尽くされるのです。あの方こそ……世界を救済する力を持つ、唯一の存在!」
「死神ですか……」
ジャックは淡々と、冷静に答える。声に感情の揺れはなかった。
「死神など存在しません。そこにいるのは、ただの道を踏み外した獣です」
「いいえ――死神は、存在します!」
オルカは瞳を輝かせ、修道服の胸元から小さなメモリーチップを取り出した。
「それは……まさか」
「えぇ、エリーニュスです」
静かな口調で、しかしその指は力強くチップをスロットに差し込む。青白い光が一瞬、彼女の目に映り込み、周囲の空気が微かに震える。
「エヴァンさんの思惑に従うのは些か不服ですが……仕方ありません。この力で、私は死神になってみせます!」
電流が全身を貫き、オルカの身体は見る見るうちに変貌していった。
皮膚の下で回路が浮かび上がり、青白い光を宿す。筋肉や骨格は機械と化し、もはや残る肉体はわずか。下半身はもはや人の形ではなく、無数の触手が蠢く異形へと変化する。
オルカはその瞬間、文字通り“化け物”に生まれ変わった。
狂信の炎に支配された彼女の瞳は、これまで以上に鋭く、これから起こる破滅を予感させた。
「ジャック・オ・ランタン! 今、貴方の目の前に立ちはだかっているのは――生きる伝説、死神そのものです!」
オルカは背を反らせ、触手で吊るされていたSCAR隊員のワイヤーを力強く引きちぎる。
ドサリ、と死体は床に落ちた――はずだった。だが、ジャックの目に映ったのは、信じ難い光景だった。
動かぬはずの死体が、静かに、しかし確実に――ゆっくりと起き上がったのだ。
「死神となった私は――死者すら思いのままに操ることができるのです」
ジャックは息を呑む。だが、その視線は鋭く、冷静に現実を捉えていた。
死体には無数のワイヤーが絡みつき、オルカの身体から伸びている。まるで操り人形のように、彼女の意思に従って動いていた。戦場に立つ“生者”を模した死者の軍勢――その異様さが、戦場の空気をねじ曲げていた。
「……なるほど、理解しました」
驚きの色が一瞬、ジャックの瞳に浮かぶ。しかしすぐに冷静を取り戻す。
「シスターが死者を操る……ですか。死者への冒涜ですね。しかし、その力――確かに危険極まりない」
ジャックは深く息を吸い込み、拳を前に突き出す。戦場で鍛え上げた肉体の反応が、自然と構えに現れた。
「シスター・オルカ――貴女の野望は、このジャック・オ・ランタンが打ち砕きます」
その言葉に、戦場の喧騒さえも一瞬、静まったかのように感じられた。
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