表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/33

Episode:18

このシリーズは既に完結まで執筆しております。

3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。

「踊れ」


 オルカが低く呟く。

 直後、背後の触手が一斉に解き放たれた。


 まるで巨大な槍が何十本も射出されたような鋭さ。

 その動きに一切の迷いも、隙もない。

 まるで一つの生き物が、標的を貫くためだけに存在しているかのようだった。


「ッ……!」


 ジャックは靴底で床を蹴り、横へと滑り込む。


 触手が壁に突き刺さり、鋼とコンクリートが弾け飛ぶ。

 火花が散り、視界が一瞬、白く染まる。


 ジャックはその一瞬の閃光を利用し、壁を蹴って宙を舞う。

 反動で身体をひねり、次の触手を紙一重で回避。


 まるで舞踏のような、死と隣り合わせの動き。

 ジャックの橙の瞳が、静かにオルカを射抜く。


「動きが単調ですね、シスター・オルカ」


「…………」


 オルカの唇がわずかに歪んだ。

 次の瞬間、彼女は静かに右手の人差し指を立て、天へと向ける。


 ――カチリ。


 乾いた金属音が鳴った瞬間、壁が膨れ上がった。

 その内側から、無数の機械触手が破裂するように飛び出す。


「っ……!」


 触手は蛇のように蠢きながら、ジャックの足元の地面を貫通し、再び壁から突き出して襲いかかる。

 まるで施設全体が、彼女の神経と化したようだった。


「……なるほど、こう来ますか」


 ジャックは冷静に息を整えると、右手の人差し指を前へ突き出した。


 ――バチンッ。


 乾いた衝撃音。

 その指先から、閃光と共に弾丸が放たれる。


 一発。二発。三発。


 飛び出してくる触手を、まるで未来予知でもしているかのように正確に撃ち抜いていく。

 金属の破片と油が霧のように宙に舞い、着弾のたびに火花が散った。


「その程度では、私には届きません」


 オルカが再び指を鳴らす。

 触手は勢いを増して、再び殺到してくる。


 だが――ジャックは一歩も退かない。


「単調なのは……どちらでしょうね」


 オルカが静かに呟いた。

 その声を合図に、ジャックの視界が歪む。


 ――ギィン。


 金属の微かな共鳴音。気づけば、目の前の空間に極細のワイヤーが蜘蛛の巣のように張り巡らされていた。

 照明の反射で、無数の線が淡く光る。少しでも動けば、即座に細切れにされる死の檻。


「本当は絞め殺したいところですが……今日は特別に、切り刻んで差し上げます」


 オルカが微笑む。その瞬間、ワイヤーが風を裂いて襲いかかった。


 ――だが、ジャックの動きは一瞬早かった。


 彼は銃口を真上に向け、天井へ一発。


 轟音と共に、コンクリートが砕け散る。

 頭上から瓦礫が雪崩のように降り注ぐ。


 ジャックは迫る刃の群れを正面から見据え、落ちてくる瓦礫の一つを蹴り上げた。


 「ッ!」


 瓦礫が弾丸のように跳ね上がり、ワイヤーを弾き飛ばす。

 その隙を突いて、彼は軽やかに床へと着地した。


 だが――。


「まだ終わりませんよ」


 オルカの声とともに、空気が再び蠢く。

 壁から伸びた無数の触手が、瓦礫をすり抜けるように軌道を変え、ジャックに殺到する。

 生き物のように曲線を描き、床を叩き割りながら迫ってくる。


 ジャックは片目を細め、指先を構えた。

  右手を持ち上げ、左手でしっかりと支える。

 指先が微かに震えた――いや、狙いを極限まで絞り込むための演算動作だ。


「この弾丸は――必中です」


 低く、淡々と呟く声。

 次の瞬間、閃光が指先から奔った。


 放たれた一発の弾丸は、まるで意志を持つかのように空間を駆け抜ける。

 だが、その軌道は真っ直ぐではなかった。


 カンッ! ギィン! ガンッ!


 弾丸は瓦礫に当たり、跳ね返り、壁を掠め、迫りくる触手の金属部を次々と弾く。

 火花が連鎖的に散り、銃声が反響し、計算された音がまるで一つの旋律のように響いた。


 そして――跳弾が導く最終地点。


 ジャックの瞳が一瞬だけ橙に光る。


「そこです」


 最後の角度で弾丸が鋭く曲がり、オルカの左肩を正確に撃ち抜いた。


「っ……!」


 鈍い破裂音と共に、オルカの身体がよろめく。

 金属質の触手が暴れるように床を叩き、ジャックの真横を掠めて壁に穴を開ける。

「やはり――触手の制御、驚異的ですね。正確すぎる。相当な演算処理と集中力を要するはずです」

 ジャックが冷静に分析するように言うと、オルカは鼻で笑った。


「知ったような口を」


「無駄ですよ。今の弾丸は麻痺弾。神経伝達を――」


 その言葉が終わるよりも早く、音が消えた。


 次の瞬間、オルカの触手の一本が蛇のようにうねり、

 ジャックの腹部を――貫いた。


「ッ……ぐっ!」


 鉄の爪が肉を抉る鈍い音が響き、黒いコートの下から鮮血が滲む。

 ジャックはよろめきながら数歩後退し、右腹を押さえた。


 対するオルカは一歩も動かず、淡々と告げる。

「――私に麻痺弾は効きません。シスター・カトレアとの戦闘データは既に記録済み。貴方の切り札も、もう通じない」


 その声音には、神への信仰に似た“確信”が滲んでいた。


 ジャックは苦痛に顔を歪めながらも、すぐに口元を歪めて笑った。

「……それは、困りましたね」


 ジャックは一瞬、口元を歪めた。

 次の瞬間――床を蹴った。


 爆ぜるような勢いで前へ。

 空気が裂け、ジャケットの裾が後ろにたなびく。


「……無謀ですね」


 オルカの声と同時に、背中から無数の触手が迸る。

 それは螺旋を描きながら襲いかかる黒い嵐。

 回避の余地など、どこにもなかった。


 だが――ジャックは止まらない。

 右手の人差し指と中指を前に突き出す。


「――弾丸よ。踊りなさい」


 二発の弾丸が、まるで双子の竜のように螺旋を描いて飛翔した。

 そして触手に命中した瞬間――


 爆ぜた。


 轟音と衝撃が空間を塗り潰す。

 爆炎が一瞬で視界を奪い、オルカの触手が焼け焦げながら吹き飛ぶ。


「っ……!?」


 衝撃波に揺れる視界の中、オルカが一瞬だけ硬直する。

 理解よりも早く、炎の中から影が飛び出した。


 ――ジャックだ。


 焦げたコートを翻しながら突進し、オルカの胸ぐらを掴み上げる。


「お返しします」


 低く呟き、背負い投げ。


 オルカの身体が空中で半回転し、床へ――叩きつけられた。


 鈍い音が部屋全体に響き、

 肺に詰まっていた空気が強制的に押し出される。


「……ぐっ、あ……!」


 床に倒れたオルカの指先が小刻みに震えた。

 その隙を逃さず、ジャックは静かに腕を上げ、指先を彼女の額へ向ける。


 ――だが、その瞬間。


 オルカの背中から伸びた触手が蛇のようにうねり、ジャックの右腕を絡め取った。


「っ……!」


 反射的に身体を引こうとした刹那、オルカが低く笑う。


「――甘いですよ」


 触手が一気に収縮し、ジャックの身体を壁へ叩きつけた。

 鈍い衝撃音とともに、壁がひび割れる。


 しかし、ジャックは空中で身体をひねり、床に軽やかに着地した。

 その動作には痛みよりも、計算された冷静さがあった。


「……なるほど。手品は、まだ隠していたようですね」


 軽くジャケットの埃を払うと、ジャックは不敵に笑う。


「えぇ、楽しんでいただけましたか? ――シスター・オルカ」


 その声音はあくまで紳士的。だが、その奥底には冷たい刃が潜んでいた。


 オルカは目を細め、唇を震わせる。

 その瞳の奥に、理解できない感情が揺れていた。


「……なぜ、ですか」


「?」


「なぜ――それほどの力を持ちながら、“殺すこと”をためらうのですか」


【※読者の皆様へ。重要なお知らせ】


この話を読んでいただきありがとうございます。


「面白いかも! 続きが楽しみ!」

「陰ながら応援してるよ!」

「引き続き頑張ってください!」


と思ってくださった方は、この下にあるポイント評価欄を【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】にして、『ポイント評価』をお願いします。

是非とも宜しくお願いいたします。


今後も更新を続けていく為の大きな励みになりますので、どうか何卒よろしくお願いいたします。


↓広告の下あたりに【☆☆☆☆☆】欄があります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ