Episode:13
このシリーズは既に完結まで執筆しております。
3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。
ジャックは目の前の光景に、戦慄を隠せなかった。
「エリーニュスが、何故ここに……完成していたのか。いや、それは後の話ですね」
背中から三本の光の尾を生やしたカトレアが、鋭い眼光でジャックを睨みつける。
「早く止めないと、彼女の身が危険です」
ジャックは床を蹴り、カトレアとの距離を一気に詰めた。
「ふふっ、今度こそ一緒に踊りましょう、カボチャ頭さん!」
カトレアの光の尾が一斉に伸びる。蛇のようにうねりながら、槍のようにジャックを突き刺そうと迫る光の尾。
ジャックは右手の甲で弾き返そうと手を伸ばす。だが触れた瞬間、光の尾の高熱が装甲を焦がすように伝わり、思わず手を引き込む。
「ぐっ……!」
慌てて後退したジャックの背後で、光の尾が空気を切り裂き、まるで生き物のように跳ね回った。刹那、戦場に鋭利な緊張が張りつめる。
「なるほど……高密度の粒子で形成されているのですね。厄介な相手です」
「ふふ、先ほどの威勢はどうしたのですか?」
カトレアの攻撃は止まらない。光の尾が絡みつくように周囲を制圧し、ジャックの退路を奪っていく。
後退を続けたジャックの背が、硬い支柱にぶつかった。
「ふふっ……行き止まりですよ、カボチャ頭さん」
勝ち誇るような笑みとともに、カトレアの尾が再び光を帯びる。三本の尾が一斉にしなり、致命の一撃を放とうとした――。
「……悪いですが、踊りのステップはまだ終わってませんよ」
ジャックはわずかに口角を上げ、支柱の隙間に指をかけた。
次の瞬間、支柱を蹴りつけ、反動を利用して宙を舞う。
カトレアの尾が空を裂き、光の粒子を散らしながら柱を削り取った。
だが、その刹那――本体ががら空きになる。
ジャックは右手を前に突き出す。
指先を向けられた、カトレアは“撃たれる”と本能的に悟った。
尾を戻し、防御の姿勢を取る――が。
「背後がお留守ですよ、レディ」
銃弾を放つ仕草はフェイク。
ジャックの身体は宙で回転し、影のようにカトレアの背後へ滑り込む。
「しまっ――!」
カトレアの尾が反射的に振り抜かれる。
だがそれより早く、ジャックの脚がしなやかに彼女の足を払った。
金属音とともに、カトレアの身体が宙に浮く。
彼は優雅に一礼しながら、そのまま着地した。
「おっと。貴女のリズム、少しズレてましたね」
倒れ込んだカトレアの胸元へ、ジャックはそっと人差し指を添えた。
銃口を突きつける代わりに、まるで貴婦人の胸にバラを飾るような仕草で。
「――チェックメイト。私のダンス、楽しんでいただけましたか?」
「えぇ……とても情熱的でしたわ。けれど――」
カトレアは敗北の体勢のまま、唇の端を吊り上げて微笑んだ。
その余裕が、逆に不穏だ。
「チェックメイトには、少し早すぎると思わない?」
その瞬間――。
足元から、冷たい金属音が弾けた。
「……っ!」
ジャックが反射的に飛び退いた直後、床を裂いてカトレアの尾が突き出る。
彼女は倒れ込む勢いのまま、尾を地面に突き刺し、地中を削ってジャックの足元へと潜ませていたのだ。
鋭い尾先が右肩をかすめ、スーツが裂けて布地が舞う。
ジャックは咄嗟に肩を押さえ、数歩、後退した。
その様子を見たカトレアは、妖艶な笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がる。
「やっぱり……そうなのね」
「……何の話です?」
「カボチャ頭さん。あなた――私を殺す気が、ないのでしょう?」
ジャックの胸に、微かな動揺が走る。
彼女の瞳は鋭く、まるで彼の“良心”を見透かしていた。
「わざわざ麻痺弾で無力化なんて。それに、あの一瞬――転ばせる代わりに、私の頭を撃ち抜けたはずよ?」
挑発めいた声。
けれどその奥には、どこか寂しげな響きがあった。
「殺さなくても倒せると思っているのか……それとも――殺せない理由があるのか?」
カトレアの声は、冷笑と苛立ちの混ざった音色だった。
次の瞬間、彼女の体を走る回路が眩く光を放つ。
青白い閃光が血管のように肌の下を這い、全身を輝かせていく。
「……私も舐められたものね」
その言葉と同時に、光の尾が震え、枝分かれするように棘が咲いた。
無数の光の棘が壁を、天井を、床を――あらゆる方向から突き貫いていく。
空間そのものが彼女の攻撃範囲と化した。
逃げ場など、ない。
しかし、ジャックは焦らなかった。
最小限の動きで身体をひねり、かすめる棘の合間をすり抜けていく。
まるで死の舞踏を踊るように、優雅で無駄のない動作だった。
だが――。
カトレアの方を見ると、彼女の顔色は明らかに蒼白だった。
肩で荒く息をし、足元が揺らいでいる。
(……これ以上、力を使えば――命がもたない)
青い光が、彼女の肉体を蝕むように明滅していた。
ジャックは短く息を吐き、わずかに目を伏せる。
(仕方ありませんね……“アレ”を使うしかない)
飛来する光の棘を、ジャックは紙一重でかわし続けていた。
舞うように、滑るように。
そして、隙を見て左手を内ポケットに差し入れる。
指先が触れたのは、掌サイズの小さな金属ケース。
彼は柱の陰へ身を滑らせ、カトレアの光の嵐を背後の構造物に受け止めさせながら、静かに蓋を開けた。
中には、白銀に輝く弾丸が整然と並んでいる。
どの弾にも、細い刻印で同じ名が彫られていた。
――《Seed Bullet》。
ジャックは右手を持ち上げ、甲の表面を軽く叩く。
カシン、と乾いた音を立てて外装が開き、内部のメカニズムが露わになった。
黒鉄の内部で、薄く橙色のラインが脈動する。
「さて――芽吹いてもらいましょうか」
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