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Episode:00

このシリーズは既に完結まで執筆しております。

3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。

 ――雨が降っていた。


 砕けた高層ビルの影、ひび割れたコンクリートの上。

 男は血溜まりに沈み、もはや原形を留めない身体を横たえていた。


 腕も、脚も、ない。

 流れきった血は温度を失い、ただじわりと地面へ消えていく。

 遠くで爆発。銃声。悲鳴。

 同じ戦場の音なのに、耳の奥で溶け合って――やがて、重い静寂になった。


(……そうか。俺は、ここで終わるのか)


 死を悟っても、恐怖は湧かなかった。

 逃げもせず、助けも呼ばない。

 むしろ、胸のどこかが軽くなっていた。


(無様な最期だが……まあ、報いってやつだな)


 彼は傭兵だった。

 名よりもコードネームで呼ばれ、敵も味方も「死神」と恐れた。

 金のために、命令のために、無数の引き金を引いた。

 浴びた血の量と同じだけ、心のどこかが削れていった。


(もう……殺さなくていい。やっと、終われる)


「――発見! まだ息がある!」

「搬送急げ、心拍が落ちる!」


 声が遠のく。

 複数の足音が雨音に飲まれ、世界がゆっくりと暗く沈む。


 担架に持ち上げられると、金属の冷たさが皮膚を刺した。

 軍医療ドローンが身体をスキャンし、ナノマシンが傷跡に潜り込む。

 熱く、焼けるような痛み。

 だが、確かに“生かそう”とする力が体内を満たしていく。


 そのとき――脳裏にひとりの紳士の姿が浮かんだ。

 少年時代、彼が何度も夢見た理想像。

 白いスーツに身を包み、紅茶を嗜み、あらゆる敵にすら敬意を払う“本物の紳士”。


(……そうだ。もし次があるなら、俺も……)


 ドローンのライトが雨粒を貫き、赤く濡れた地面に白が反射する。

 血の赤。雨の灰。ライトの白。

 荒んだ世界の片隅に、ふっと橙の灯りがともる。

 まるで――ジャックの提灯のように。


 男は静かに目を閉じた。


(次に生まれるなら……人を救う存在になりたい)


 雨音と遠い爆発が、最後には静寂に溶ける。

 だがこの時、誰も知らなかった。


 “死神”と呼ばれた男が、まもなく新たな命と名を得て――

 機械仕掛けの紳士《Jack・O・Lantern》として目覚めることを。


【※読者の皆様へ。重要なお知らせ】


この話を読んでいただきありがとうございます。


「面白いかも! 続きが楽しみ!」

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