65 調査結果
「フリック、西条くん三区の方はどうだった?」
「特に有力な情報は得られませんでした。ですがやはり、三区の体調不良者はかなり多いようですね。悪化し部屋から出られなくなった職員も日に日に増えているようです」
四区で聞き込みをしていた仁賀木さんとアリアさんペア、木古瀬さん、市追さんペアと合流した俺たちは、入手した情報を共有することになった。
ゴブリンをはじめに見つけたユーティウスさんなら何か知っている事もあるかと思っていたが、フリックさんの言う通り、事件解決に結びつくような情報は得られなかった。
その後三区で調査を続けたが、得られた情報といえば抱える症状についてなど既に分かっている情報くらいだった。
「仁賀木さんたちの方はどうでしたか?」
「いや、うちも似たようなものですよー。ただ、四区は体調不良の職員が少ないようですー。仮に症状を訴える職員も軽症のようですし、気になるところといえばそのくらいですねー」
BからAランクの囚人が収監される四区の警備は当然、三区の雑居房よりも厳重になるから、それも関係してるのかもしれないな。
「ということは、呪いの原因は三区にあるって事、なんですかね⋯⋯」
控えめに言ったのは、確信できなかったからだ。
実際三区に訪れて分かった事なのだが、あそこは房がある分、厳重に警備されている。
複数の監視を潜り抜けて魔道具を置くのは至難の業だろう。
怪しい物があれば間違いなく誰かが気づくだろうし、そんな目につく場所に職員に影響のある魔道具があるとは思えない。
「目につく場所⋯⋯ゴブリン⋯⋯」
致死性の呪いをゴブリンにかけられ、かつ職員には被害の及びにくい場所。
そんなの、一か所しかない。
――ゴブリンの巣だ。
「ゴブリンと三区の職員に同時に呪いを与えるのはそう簡単な事ではないよ。もし本当に魔道具が仕込まれているのなら一体どこに――」
「ひとまず、看守課と合同で魔道具の捜索を行おう」
「えー! ディオスガルグは魔道具の宝庫ですよー? しらみ潰しに探してたら一体どれだけ時間がかかるか」
「手段は選んでいられないだろ。一つ一つ探していれば、いつか当たりが出るかもしれない」
一向に手がかりが見つからない状況に皆焦っているように見えた。
この雰囲気の中で声を上げるのは勇気がいるな。
でもそんなこと気にしてる場合じゃない。
「あの⋯⋯」
捜査展開について話し合う捜査班の面々たちの中、おずおずと俺は手を上げる。
「ん? どうしたのかな?」
「西条君、発言を許可しよう!」
捜査班全員の視線が俺に集中し、アリアさんが裁判官のように俺の発言を促す。
「ゴブリンの巣を見てみませんか?」
「ゴブリンの巣、ですか?」
「はい。人目につかずゴブリンに呪いをかけるなら、もってこいの場所だと思って」
呪死事件のきっかけはゴブリンの集団死だ。
そんなゴブリンの住処となれば、俺に言われるまでもなく、既に調べられているはずだ。
だが、自分の目でも一度見ておきたかった。
「別の班から調査済みとは聞きましたが、良いアイデアかもしれませんね。新たに発見出来ることもあるかもしれませんし」
「巣か⋯⋯。気乗りはしないが、仕方ないな」
「おやー? 頭蓋骨の方は集めるのにゴブリン自体はお嫌いなんですねぇ」
ニマニマとした笑顔でアリアさんが木古瀬さんを揶揄う。
どうやら木古瀬さんのコレクションはモンスターであるゴブリンにまで及んでいるらしい。
「アリア、あまり人の趣味を揶揄うのは良くないよ」
「はーい」
仁賀木さんが嗜めると、アリアさんは大人しく引き下がった。
「ともかく、巣を捜索してみましょうか」
「レッツゴー!」
「おい、遠足じゃないんだぞ」
そうして捜索班第二班は三区へ、俺とフリックさんは戻るかたちで向かうこととなった。




