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60 捜査班

「どうも初めまして、僕は捜査係第二班のリーダーをしている仁賀木 潮です」

「初めまして、臨時で加入する事になりました! 三階層の西条鷹梨ですっ」

「緊張してそうだね。そんなに肩肘張らなくても大丈夫だよ。君の事は長官から聞いてるよ。学生さんだったんだって?」


 翌日、早速捜査班メンバーとして一階層へ訪れた俺は、加入先である捜査係第二班のリーダー、仁賀木さんに挨拶をする。

 浅黒い肌の仁賀木さんは、恐らくは四十代半ばくらいの外見だった。

 そして日本人。


「学生の身から職員になる人間は多くはないし、大変だろう? うちの捜査班は人間を中心に構成されてるんだ。短い間かもしれないけど、何かあったらいつでも声をかけてくれて構わないからね。もちろん、捜査以外の事でも」


 頼りがいのある気さくな人だ。

 

「ありがとうございます。お世話になります!」

「ははっ、想像してたよりもずっと真面目な子で良かったよ。てっきり、もっとぶっ飛んでる感じの子だと思ってたから」

「ぶっ飛んでる⋯⋯って、一体アイロア長官からどんな風に伝えられてたんですか」

「いやいや、君が階層長補佐だって聞いてたから僕が勝手にそう思ってただけだよ。ほら、三階層の橋雪長官っていえば部下がすぐ辞めるで有名だからね」


 冗談めかして言う仁賀木さん。

 確かに橋雪さん自身も言ってたぐらいだし、相当なのだろうが、別の部署の職員にまで知れ渡っているとは⋯⋯。


「実は俺、詳しく知らなくて、そんなに凄かったんですか?」

「凄いっていうか、ほら、ディオスガルグに就職する人って六世界から集められた優秀な人たちばかりだから、プライドが高い人も多くてね。でも橋雪長官ってその中でも群を抜いて優秀な人だから。しかも人間であの物言いでしょ? 皆プライドズタボロにされて出て行くか、反抗しても論破されて居づらくなったりとか。そういうのが続いたから、一部の職員の間では ”四鬼官” なんて呼ばれている」


 四鬼官⋯⋯。

 俺は思わずそう呼ばれる橋雪さんの姿を想像してしまう。

 うん、凄くしっくりくる。

 

「そんな通り名まで付けられてたんですね。三階層じゃ橋雪さんの噂をする職員もいないんで、なんか新鮮です」


 三階層の職員は橋雪さんの事を良く知っているから、誰もそんな話をしないのだろう。

 本人の耳に入れば、嫌な顔をされるのは確実だからな。


「だろうね。まぁともかく、うちの捜査班はほとんど人間の職員だから、今回の事件でうちが担当するのは呪いの原因の捜索だよ。ひとまず、現場に行ってみようか」


 少し話し過ぎたと思ったのか、雑談を切り上げ、仁賀木さんと俺は、転移石を使い二区へ移動する事にした。


「原因については何か分かってる事はあるんですか?」

「分かっていないといえば嘘だし、分かっているというには心もとない程度かな」

「??」


 それはつまり、大した情報は掴めていない⋯⋯という事でいいのか?


「ハンチョ―っ、こっちですよ~」


 と、俺が頭を悩ませていると、二区へとやってきた俺たちに手を振る職員がいた。

 黄色いテープの内側、白い手袋を付け、胸元には瞳のレリーフの記章——特殊対策部の職員だ。

 だが、そこにいたのは彼女一人だけではなかった。

 五人ほどの職員が一か所にかたまり、俺たちの到着を待ってくれていたようだ。

 その職員の声で、俺たちに気づいた職員たちはこちらに近づいてくる。

 

「うちのメンバーたちだよ。皆、彼が今日から臨時でうちに入ることになった西条鷹梨君だ。新人の上、特殊対策部のやり方も知らない。色々教えてあげて欲しい」


 仁賀木さんが俺を紹介すると、二班のメンバーたちは順に自己紹介を始める。


「私はアリア・アルベロ―ニですー。よろしくお願いしますね~」


 初めに自己紹介してくれたのは、仁賀木さんに手を振っていた職員だ。

 茶髪のポニーテールと垂れがちな丸い瞳が印象的だ。


「市追 朝実です。よろしく」

「フリック・トンプソン。よろしくね、西条君」

「俺は木古瀬 東だ」


 と、次々に班員たちが名乗り手を差し出してくる。

 凄い気さくな人たちだ。

 国籍もバラバラで、初めて会ったのに、何だか実家に帰って来たみたいな安心感がある。

 特殊対策部直下の捜査班って事で緊張していたが、仁賀木さんの言う通り、そこまで肩肘を張らなくてもいいのかもしれないな。


「西条鷹梨です、よろしくお願いします」


 俺は一人一人握手に答えていく。

 全員に挨拶が終わると、班長である仁賀木さんが全員に向けこう言った。

 

「さあ、始めよう」

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