ルームメイトが「僕と契約して魔法少女になってよ」と言ってきた。身長190cmのマッチョにフリルミニスカはきつい。
大学に入学して寮に入ることになった。
寮の管理人をしている婆さんから鍵を受け取り、今日からルームメイトになる高野に挨拶すると、高野がニッコリ笑顔で言った。
「斉藤君。僕と契約して魔法少女になってよ!」
「はあああああっ!? 寝言は寝て言え! 俺は20歳の男だぞ! 魔法少女になんてなれるはずないだろ! そういうのはせめて女子に言え! ていうか何なのその魔法少女アニメのゆるいマスコットみたいなセリフ!」
指摘した途端に高野の姿が黒猫に変わった。猫になった途端、声もゆるかわに変わる。
「そのとおり。僕は本来こういう姿さ。だって、近年は本来の姿で勧誘しても誰も契約してくれないんだ。かわいいマスコットは時代遅れらしくて。時代は多様性、イケメンに変身できなきゃ門前払いなのさ。だからこうして人として暮らして魔法少女にふさわしい人を探していたんだ」
「マスコットにも多様性の波が押し寄せてんのか」
「そうさ。そして魔法少女も多様性の時代。君は魔法少女として才能の塊。1000年に一人の逸材だ! この衣装を来て仲間と共に宇宙魔王と戦うんだ!」
ぽんと音がして、光の中からキラッキラでフリフリのアイドルステージ衣装みたいなもんが出てきた。
純白のパフスリーブ、レースたっぷり膝上20cmのミニスカにニーハイソックスだ。
俺に死ねって言ってる? 戦闘以前に社会的に死ねる。
「マッチョ190cm超えの男がミニスカフリルで闊歩したら逮捕されるわ!」
「大丈夫。この衣装には魔法ゴ・ツゴーシュ・ギがかかっているから身バレの心配はないんだ! 浄化技はこのステッキを持ってラブきゅんフォーチュンアロー! だよ!」
「誰が言うかそんな痛い台詞!」
押し問答していると窓の外、空がまっ黒になりいかにも魔王チックなやつが降りてくる。
「さあ早く変身して斎藤君! 地球の平和と自分どっちを選ぶの!」
「自分を選びてぇよ!」
魔王が街にビームを放ち阿鼻叫喚の騒ぎになる。
本当に俺が行くしかないのか?
尻込みしていると誰かが魔王に立ち向かっていくのが見えた。
寮の管理人の婆さんだ。
俺と色違いの衣装を着ている。え、まじで? あの人が仲間?
腰の曲がった婆さんが戦っているのに放置なんてできるわけない。
俺は覚悟を決めて衣装に袖を通しステッキを掴んで走った。
婆さんとの合体技ラブきゅんフォーチュンアローで魔王を退け、大学生と魔法少女二重生活が始まった。