表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただ君の為に  作者: くろがね
問1.人である意味
14/14

本音


4月ってなんでこんなに忙しいんですかね…

もう少し手加減してほしいものです。

更新遅くなり、お待たせしました!

それでは今回もお楽しみください

師匠の話を聞いた俺は、ギルドを離れ閉鎖された門へ向かって歩いていた。


とてもじゃないが、あんな空気のギルドで待機しているのは無理だった。


「もし、本当に魔族だったとして。しかもまだ生きていて村を襲われたら…」


…きっとみんな死ぬだろう。


どんな戦いになるか、そもそも戦いになるのかすら分からないが、それだけは確実だろう。


(そんなのは、嫌だ。)


(自分が死ぬのは百歩譲って覚悟できる。でも、師匠やサラが死ぬのだけは耐えきれない。)


そんなふうに考えたところで、現実は変わらない。


逃げることも出来ない。


(どうすれば…)


堂々巡りだ。


そんなふうに考えながら、門の方へ歩いていると眼の前をねこが横切った。


(こんなところに、黒いねこなんていたっけ?)


「ニャー」


ねこは、こちらを一度振り返ると路地へ歩いていく。


「…ついて来いって?まさか、気の所為だろ。」


追い込まれすぎて、頭がおかしくなったと思った。


(ただ、このまま門へ向かって待機しても結果は変わらない。なら気の所為でも…)


俺はねこを追い、路地裏へ向かった。



(路地裏にこんなとこあったか?)


ねこを追い、辿り着いたのは少し開けた広場だった。


ただ、一つだけ違和感があった。


真ん中に、まるで台座の様な石が置かれておりその側に、黒ねこがこちらを見て座っている。


「なぁ、こんなとこに案内して何かあるのか?」


それ以外に何も無いことに思わずねこに話しかけてしまう。


「ニャー」


ねこは鳴くだけ。


しかし、その目はまるで俺を試しているように見える。


俺は、導かれるように台座の様な石の前へ立った。


…その台座には丁度剣が刺さっていた様な穴が空いていた。


「剣でも刺せって?」


俺は、黒剣を台座へ刺してみた。


…何も起きない。


(そらそうだ。ただの石に剣を刺したところで何が起こるっていうんだ。)


(こんな時間がない時に俺は何をしてるんだろな。)


そんなふうに自分に呆れながら、それでも何故か立ち去るという考えには至らず、気がつけばナナシを台座へ刺していた。


「…っ!」


刺した途端、俺の意識は遠のいていった…




「…おい、起きろ。」


乱暴な声に意識が取り戻される。


目を開けるとそこは、夢でみたあの泉の前に立っていた。


横には黒い俺の姿。


「やっとか。」


「どういう意味だ?」


今のあいつには敵意がない。


「なんで襲ってこない?」


「必要がないからな。」


そういうと、影は俺に黒剣を渡してくる。


「なんでお前が黒剣を…」


「俺はお前だからな。」


剣を渡した影は俺の前に立った。


「俺はお前だ。お前が恐れ、隠し、逃げてきた自分。それが俺だ。」


「どういう…」


「魔物が憎い。サラを、自分を傷つけた魔物が憎い。ただ、それ以上に何の力も持たない自分が憎い。」


それは、自分の心の悲鳴。


「そんな憎い自分を遠ざけて、弱い自分に目を背け逃げ続けた結果が今のお前だ。」


…違う。


「だから、今もお前は弱く影の俺にすら負ける。」


……違う。


「そして、大切な物が奪われるかもしれない状況なのに考えることしかできない。」


「違う!!」


「何が違う?これが事実だろ?」


その通りだ。


分かっている。


「違う!俺は逃げてなんて!」


それでも否定をやめられない。


「ならこの泉はなんだ?これはお前が逃げた結果だ。」


黒い茨で閉ざされた泉。


心の世界。


それは、とても残酷に現実を俺に突きつけてくる。


「もう逃げられないぞ。」


「だったらどうすればいいんだよ!」


思わずだった。


それでも自分の叫びを止められない。


「やったさ!必死に!それでも俺は無力で惨めで、大切な人1人すら守る力がない!それが俺だ!」


こんなふうに叫んだのは始めてだろう。


「どうすればよかったんだよ!どれだけ鍛えても強くなれなくて!それでも守りたいものの為に必死になって!弱い自分が憎くて!」


「だから逃げたのか?滑稽だな。お前は誰かの為だなんていうが、結局は自分の為だろう?」


それは俺の心に突き刺さった。


「…なんだと?」


「お前は自分の弱さから逃げるための理由にサラを使っているだけだ。お前が逃げた理由はただ1つ。」


…やめろ、やめてくれ。


「孤独が怖いからだ。」


「違う!」


「いいや、違わないな。どれだけ努力しても弱い自分。そんな自分に愛想を尽かしてサラが離れていくことが怖い。でも強くはなれない。だからいつもお前は必死になれない。必死になれば、それ以上がないことがバレるからなぁ?」


声も出なかった。


「醜いな、本当に。」


「…だったらどうすればよかったんだよ…」


ほとんど声にすらなっていない呟き。


「俺には何もないじゃないか…」


「どうしてそう思う?」


「どうしてってお前も分かるだろ…」


立っていることすらできず、俺は膝をついた。


もう諦めてしまいたい。


どれだけ努力をしても、サラにも師匠にも追いつけない。


それどころか離されていく。


そんな孤独に耐えきれない。


期待に答えられない。


そんな絶望に耐えきれない。


「…こんな世界、憎くて仕方がない。」


「やっと、本音が出たな。」


そういうと、影は俺へ手を差し出す。


「ここが、お前の分水嶺だ。」


俺は思わず影の目を見る。


「そのまま弱い自分から目を背け続け逃げ続けるか、それとも弱い自分を認め、必死に抗うか。」


それは、とても残酷な問い。


「決めるのはお前で、有耶無耶には出来ない。」


そんな問いに俺は…




クロウくんに選択の時が来ました。

ここまでくるの長かった…

本当はもう少し早く選択してもらう予定だったんですけどクロウくんが中々素直になってくれなくて…

物語も終盤です。この先、クロウくんがどんな選択をするのか、村はどうなるのか、少しでも楽しんで頂けるよう完結まで頑張ります!


少しでもよかった!と思っていただけました、感想、いいね貰えましたら励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ