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ただ君の為に  作者: くろがね
問1.人である意味
12/14

予兆


投稿が遅れていたので、2日連続投稿です!

それでは今回もお楽しみください

目が覚めるとそこは、自宅のベッドの上だった。


「…結局あいつは何が言いたかったんだ?」


どれだけ考えても答えは出ない。


それでも一つだけ確実に言えることは、


「…負けたな。」


同じとはいえ、こちらは傷だらけ。


それに比べて相手は無傷。


…悔しい。


それに、あいつの言っていたこと。


「近いうちにって…」


あの時、手を取るのが正解だったのか、取らなくて正解だったのか、どれだけ考えても答えは出ない。


考え込んでいると、玄関から自分を呼ぶ声に気づく。


「おーい、クロウ起きてるー?」


「はーい。」


急いで玄関まで行くと、声の主のサラがいた。


「おはよう。わざわざ家までくるなんて、何かあったのか?」


「おはよ。お父さんにクロウと話したいことがあるから呼んできてくれって言われたのよ。内容は知らないわ。」


「そうか。ありがとうな。準備したら向かうから先にギルドへ向かっててくれ。」


「なんでよ。ここまで来たんだし、待ってるから一緒に行きましょ。」


「分かったよ。じゃあ少し待っててくれ。」


そういうと、部屋へ剣といつもの装備を取りに向かった。


装備を整え、ナナシと黒剣を手に取ろうとした時にふと違和感を覚えた。


「…あれ。ナナシってもっと白かった気がするんだけど。」


見え方の問題か、それとも気の所為なのか。


刀身が以前より少しくすんだ白色に見える。


「夢のせいで少し気になるだけだよな。気の所為、気の所為。」


そう結論づけると、サラの元へ向かう。


「待たせたな。それじゃあ行こうか。」


「全然待ってないわよ。行きましょ。」


そう言うと、二人でギルドへ向かった。




「じゃ、お父さんはギルマスの部屋にいるみたいだから。私は仕事に行くわね。」


「ありがとうな。それじゃ仕事頑張ってな。」


サラと別れ、ギルドマスターの部屋にいる師匠の元へ向かった。



部屋のドアをノックすると奥から師匠の声がする。


「誰だ?」


「師匠、俺だ。」


「クロウか、入ってくれ。」


そう言われ、部屋の中へ入ると真剣な表情の師匠がこちらを見ていた。


「朝からそんな真剣な顔をしてるなんて、何かあったの?」


そう言うと、師匠が1枚の紙を渡してくる。


「これは、クロウの報告を受けて森の調査をした結果だ。」


「森は静かで、特に問題があるようには見えないって書いてあるけど。」


「…今は通常なら動物や魔物が活発になる時期だろう。その時期に静かなんて報告が上がってくるのはおかしい。」


「そうかもしれないけど、少し気にし過ぎじゃない?」


「そうだといいんだがな…」


「何か不安なことでも?」


そう言うと、師匠が追加でもう1枚紙を渡してきた。


「…これはあくまでそうかもしれない、という報告なんだが。」


渡された紙を見ると、そこにはあの森付近で黒い大きな影を見たという報告が複数寄せられているということが書かれていた。


「この報告に何か問題が?」


「クロウ、お前が遭遇したゴブリン。それから魔物がいつもより大人しいという報告。さらに、森付近で黒い大きな影の報告が多数。ここから想像出来る最悪のシナリオは?」


「まさかとは思うけど、…上位種が現れたということですか?」


「その可能性は十分にある、ということだ。」


上位種、それは魔物の中でも特殊な進化を遂げた魔物の事を言う。


上位種の危険性は、魔物の凶暴性や強さだけではない。


それは、他の魔物を統率出来るということだ。


「…師匠、もし本当に上位種が発生していた場合、今取るべき選択は何になりますか?」


「今すぐ村を捨てて、近くの防壁で囲まれた街へ避難、もしくは救援要請をしてスキル持ちのパーティを組み森の徹底調査と上位種の討伐、この2択だな。」


「救援要請を出して、調査と討伐出来るまでにかかる時間はどのくらいですか?」


「そんな時間があれば、向こうさんも体制が整って襲ってくるだろうよ。」


「師匠、避難は難しいと思います。」


「知ってるさ。だからクロウに相談してる。」


「…それってどういう。」


「救援要請は既にしている。この村に調査と討伐のためのパーティが到着するまで5日ほどだろう。それまで、魔物の襲撃がなければよし。」


「もしあれば、それは…」


…村の崩壊を意味する。


「だから、クロウ。お前に頼みがある。」


「なんですか。」


「万が一があれば、サラはお前にまかせる。」


「それは、どういう意味で言ってるんですか。」


「俺はこの村のギルドマスターだ。もし襲撃があれば最前線で戦うしかないだろう。サラの近くでサラだけを守ることは出来ない。だから、お前にまかせる。」


「でも、師匠一人で向かったって結果は…」


「なんとかなるだろう。なんてったって、この立場まで強さだけで上り詰めた男だぜ?」


それが強がりな事は分かっている。


スキル持ちのパーティでなければ立ち向かうことすらままならない相手に単独で向かうなどただの自殺行為だ。


「でも師匠、それは。」


「分かってるさ。だからお前に頼んでるんだ。俺のただ一人で、最高の弟子のお前に。」


「…分かりました。いわれるまでもなく、サラは俺が守ってみせます。」


…師匠の目は見れなかった。


自分の死期を悟り、覚悟をした男の目は。


「まぁ、大丈夫だろう。襲撃なんてこないさ。そもそも上位種がいるかどうかすら、憶測なんだからな。」


「…そうですね。そうだと思いたいです。」


それが嘘なのは分かった。


救援要請が受理されてすぐにパーティがこちらへ向かうということは、それだけ可能性が大きいことを意味している。


「師匠、俺は念のために準備をします。」


「あぁ、ただし森には入るなよ。今日の朝から浅い所でも立入禁止にしたからな。」


「分かりました。失礼します。」


俺は逃げるように師匠の元を後にした。



「…すまんな。後は任せたぞ。」


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