提起
更新が遅くなりました。
それでは今回もお楽しみください
自分と全く同じ相手と戦うなんて普通経験の無いことだろう。
戦闘が始まってどのくらいの時間が経ったか分からないが、お互いに一撃も与えることは出来ていない。
「本当にやりにくいな。」
突く、払う、切り上げる、振り下ろす。
全ての動きが全く同じという、まるで鏡に向かって動いているように錯覚するくらい同じ動き。
…均衡している。
そう思っていたのも束の間。
技術は同じでも、体力だけは違った。
「…くそっ。疲れるのはこっちだけか。」
同じとはいえ気を抜けばやられるのは目に見えている。
だからこそ全力で戦っているのだが、戦えば戦うほどこちらは疲れ、動きの精度が落ちていくのに比べ相手は最初から全く変わらない動きで攻め立ててくる。
そんな状況で均衡が長く続くわけがない。
…最初はかすり傷、戦闘が長引くほど徐々に受ける傷が深くなる。
「夢のくせに、痛みだけは立派だな!」
疲れに加え受けた傷の痛みによって、俺は最初の動きの半分も動けていなかった。
「どうすれば…」
このままではやられるのは時間の問題だと感じたその時だった。
「こんなものか。」
今まで一言も話さなかった影から声が上がった。
「…どういう意味だ。」
驚きながらも、放たれた言葉へ疑問を投げかける。
「いやなに、その剣に選ばれておきながらこの程度なのかと思った。それだけだ。」
そういうと影はこちらへ背を向け歩き出した。
「おい、どこへ行くつもりだ。」
「…ついて来い。」
そう一言だけ残し、影はどんどん歩いていく。
俺は疲労と傷で思い通りに動かない体を引きずるように歩きながら後をついていく。
…10分ほど歩いただろうか。
そこには檻のようになった茨に包まれた黒い泉があった。
「これは…」
「ここはお前の心の世界。この泉もお前が生み出したものだ。」
そう告げると影はこちらへ振り返った。
「一つ問おう。」
そういうと影から感じる圧が増す。
まるでとんでもない魔物の前に立っているかの様な圧に俺は、膝をついてしまう。
「お前の大切な守りたいモノ、それを守るためにお前の大切なモノを犠牲にする必要があれば、お前はどうする。」
何を言っているのか分からなかった。
影の問いには矛盾が生じている。
「大切な物の為に大切な物を犠牲にするなんて本末転倒だろ。」
「…そうか。」
そう言うと、影は少し考えまた話しだした。
「問いを変えよう。お前は、大切なモノの為に何を犠牲にできる?」
今度の問は簡単だった。
「俺の全てを。」
そう答えると、影はこちらへ手を伸ばす。
「ならばこの手を取れ。そうすればお前の大切なモノを守る力を与えよう。」
不思議な感覚だった。
何故か手を取ってはいけないと、直感的に感じた。
手を取れないままいると、影は手を引き泉へ向き直す。
「…今は答えなくていいだろう。だが、近いうちに同じ問を受ける時が来るだろう。その時は逃げることは出来ない。」
そう言うと、影は踵を返して歩き出す。
影が見えなくなったと同時に俺は意識を失った。
この時期は皆さんお忙しいですか?
こちらは忙しすぎてやばいです
少しでもよかった!と思っていただけました、感想、いいね貰えましたら励みになります。