遭遇
思っていたより、話が進まなかったです。
それでは今回もお楽しみください
ギルドを後にした俺は、まっすぐ家へ帰ってきた。
1日の疲れもあり、剣の手入れをした後すぐに眠ってしまった。
ふと何かの気配を感じて目を覚ますと、そこは自分の家ではなく、とても広大な草原の真ん中に立っていた。
(ここは…)
自分の置かれた状況に混乱していると、後ろから声をかけられた。
「あら、もうここに来たのね。」
声のした方へ振り返るとそこには、真っ黒なドレスに身を包んだ自分より少し年上に見える女性が立ってこちらを見ていた。
見た目は人間の女性なのに、纏う雰囲気は魔物に近く、俺は警戒を強めた。
「あらあら、そんなに警戒しなくても貴方を襲う事はないわ。それに、襲うなら声なんて掛けずに襲っているわよ。」
「…それもそうか。」
そう呟くと、意識は警戒したまま構えを解く。
「すまなかった。それで貴女は…」
「私はノワール。今はそれしか言えないわ。」
「俺はクロウだ。今はっていうのはどういう…」
「言葉通りの意味よ。」
言葉の端々に不思議な雰囲気を感じるが、今は現状の把握が大切だと思った俺はノワールに質問を続けた。
「そうか…ここがどこかは教えて貰えるのか?」
「ここは、貴方の心の世界。貴方が望むものを手にするのに必要な世界よ。」
「心の世界って…」
そう呟くと眼の前の地面が光り、光の中からナナシが現れる。
「なんでナナシが…」
「あらあら、そんなに相性がいいなんて少し嫉妬しちゃうわね。」
「それはどういう…」
「全ては言えないけれど、ヒントならあげられるわ。」
そう言うと、片手を何も無い空間にかざした。
「来なさい。」
ただ言葉を放っただけ。
それだけで、空間にヒビが入り真っ黒な剣が姿を見せる。
それは、黒剣の様な色をしたナナシだった。
「その剣は…」
「これがヒントよ。貴方が望むものを手に入れるためのヒント。時間は余りないわ。」
「話が読めない…どういう事だ。」
「これ以上は教えてあげられないわ。ただ、このままだと貴方はすべてを失う。」
「なんだと…!」
「考えなさい。抗いなさい。貴方はその子に選ばれたのだから…」
そう言い残し、ノワールは眼の前から消えてしまった。
「失うってなんだよ…それにその子ってナナシのことだよな。」
ナナシとノワール。それにナナシに瓜二つの黒い剣。
「本当にわからないな…」
そう呟くと、俺はナナシを地面から抜く。
すると、地面が激しく揺れた。
「なんだっ!」
揺れは短い時間で収まった。
しかし、収まったかと思うと凶悪な殺意がこちらへ飛んできた。
「この殺気は、ゴブリンどころじゃないっ」
殺気の方向へ向き、殺気の元を探すと遠くに人影が見えた。
それは、こちらへ少しずつ近づいてきている。
「あれは、魔物か?」
俺はナナシを構え、人影を観察した。
近づくに連れ、人影が明確になる。
それは俺だった。
姿形は、瓜二つ。
唯一違うのは、それが影のように黒いこと。
「なんで、俺がもう一人…」
直感的に逃げられないと悟った。
それに、ノワールの言葉が脳裏をよぎる。
「抗いなさいってこういうことかよ!?」
人影が剣の間合いの一歩外で立ち止まる。
(やるしかないっ)
俺がナナシを構え直すと、人影も同じ構えをとる。
(ノワールが言っていたことを信じるなら、このは心の世界。なら、あいつは今の俺自身だろう。なら、勝つためには今ここで俺を超えるしかないってことか。)
そう結論づけ、俺は自分という強敵に立ち向かうのだった。
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