第3章95話:罠3
しかし。
「え!?」
通路の入り口に魔法のバリアが張られていた。
通り抜けようとしても、バリアに阻まれて通れない。
まずい。
吊り天井が落ちて――――――
「あれ?」
上からくるはずの衝撃がやってこず、来花は首をかしげた。
天井を見上げる。
ルミは言った。
「途中で止まったようですね」
吊り天井は高さ12メートルぐらいの位置で制止していた。
なぜ落ちてこない?
助かった……?
いや、違う。
来花は即座に分析して言った。
「時間差で落ちてくるんだわ。落ちきる前に、この部屋を攻略する方法を考えないと!」
そう。
この部屋の課題は、恐らく、吊り天井が落下してくる前に、バリアを突破する方法を見つけ出すことだ。
……まあ、ルミの瞬間移動を使えば、バリアの向こうに通過できるのだが、すぐには思いつかなかった二人である。
来花は周囲を見渡す。
すると、さっきまではなかった台座が出現していた。
台座に文字が表示されている。
意味不明な文字だ。
これを解読することが、きっと部屋を突破する鍵になるのだろう。
ルミは台座を見て、眉をひそめた。
「これは……謎解き、ですか。こういうのは苦手なんですよね」
「大丈夫よ。あたしがなんとかするから」
ここでこそ活躍の場だ、とばかりに来花が意気込んだ。
さっそく台座を物色したり、思考を始める。
そのとき、ルミは思った。
「あの吊り天井、解除できませんかね?」
「ん? 罠解除ってこと?」
「はい。ちょっと試してみますね。来花さんは、部屋の隅のほうに移動しててください」
「え、いったい何をするつもりなの……」
嫌な予感がして、来花が不安げな顔をする。
ルミは、足に力を込めた。
そのまま、迷宮の床を蹴って真上にジャンプする。
凄まじい跳躍力だ。
身体強化魔法を使っても、ここまでの跳躍は簡単ではない。
ルミの高度があがって、やがて吊り天井に届く位置まで来る。
そこでルミは、空中で宙返りをした。
バク宙である。
そして、宙返りしながら吊り天井へと蹴りを放つ。
まさしくパルクールと格闘術の合わせ技のような一撃は、吊り天井を見事に粉砕し、崩れさせた。
「ちょっ……!?」
崩落してくる吊り天井。
来花は慌ててその場を離れ、部屋の隅へと避難した。
砕け散った吊り天井の残骸が床に落下し、ダンジョンに震動を起こす。
悠然と舞い降りるようにルミが着地した。
『うはwwwwwwww』
『罠破壊したwwwwww』
『解除とは?www』
『蹴って壊すのかよw』
『解除というか破壊wwwwwww』
『ダイナミック罠解除wwwwww』
『ルミ「罠?蹴り壊せばいいのでは?」』
『力技で解決w』
『脳筋プレイにも程があるwwwww』
『これがルミの罠解除だ!!!』
『キックだけで全てを解決するwwwww』
『まともな攻略をする気がないw』
『吊り天井の攻略法→蹴って壊せばいいwwwwwwwwww』
『それ打撃で壊す罠なんですかwww』
『バク宙キックでよく威力が出るな』
『パルクールキックwwwwwww』
『なんで天井を蹴るんだ?殴れよwwww』
吊り天井をなぜかキックで破壊するという、常識を外れた行動にコメント欄が沸いた。
前代未聞の罠攻略シーンであり、さっそくSNSなどを通じて拡散されていく。