第3章80話:リリミアのダッシュ
このあいだにルミの同接はぐんぐん伸びて、あっという間に20万を突破していた。
3秒後、20万5000。
3秒後、21万3000。
3秒後、21万9000。
3秒後、22万2000。
3秒後、22万7000。
加速度的に数字が伸びていく。
投げ銭も投げまくられていた。
SNSではルミと来花がパーティーを組んだことが拡散され、ユーザーの興味を惹いた。
そしてこのことに最も驚いていたのは、リリミアである。
彼女は鞘坂市・噴水広場のベンチで、ひそかに携帯を開いて来花の配信を眺めていたのだが……
突如として始まった二人の共演に、驚愕した。
「ず、ずるいですわーーーーーーーッ!!」
噴水広場で突如、立ち上がって叫ぶ。
周囲にいた人たちがビクッとして目を向けた。
リリミアはうっかり叫んでしまったことを恥じ、ひとつ咳払いをしてから、ゆっくりとベンチに腰を戻した。
そして内心で狂乱する。
(ずるいですわ、ずるいですわ!! まさかあのルミ様とパーティーを組むなんて!!)
ルミ『様』。
そう。
実はリリミアは、ルミの大ファンである。
ルミの初回配信時、ルミちゃんねるに投げ銭10万円も投げ込んだ、狂気のガチ勢だった。
(来花……抜け駆けですわ!!)
ぐぬぬぬぬ、と歯ぎしりをするリリミア。
抜け駆けという認識が正しいかはともかく、リリミアにとって、自分のライバルが推しと共演するなど、許されざることであった。
(いえ、こうしてはいられませんわ。来花がいるのは此間ダンジョン。今から突入すれば、わたくしもルミ様と会えるかもしれません!)
彼女はそう考え、ベンチを立ちあがる。
そしてタクシーが集まる駅の方角へ、脇目もふらず走り出すのだった。




