第1章5話:ドラゴンウルフ
通路を抜けると、広い空間に出た。
そこに鎮座するのは一体の魔物。
ウルフであった。
名前は知らない。
コメント欄の一人が言った。
『ドラゴンウルフだ! 逃げろ死ぬぞ!』
ドラゴンウルフ――――Aランクに認定されたモンスター。
体格は通常のオオカミより少し大きいぐらいのサイズ。
紅色の毛並み。
パワーとスピードがあり、ウルフでありながらドラゴンブレスをあやつる凶悪な魔物である。
誰でも知っているレベルの有名な魔物でもあるのだが……
ルミは知らなかった。
彼女は人生のほとんどを、山奥の道場で剣を振ることに費やしていたため、かなりのレベルで世間知らずであった。
だからルミは、目の前のウルフをただの雑魚だと思って、容赦なく斬りかかった。
避けられる。
だが見透かしていたように、ルミはさらに踏み込んで斬撃を浴びせた。
その一撃でドラゴンウルフの前足を斬り飛ばすと、やはり舞でも踊るように、美しく、素早く、相手の側面に回る。
そこで回転斬り。
ドラゴンウルフが絶叫をあげる。
さらに二、三ほど斬撃を浴びせたあと、ルミはその首を速やかに断ち切った。
そして、
「こいつは弱かったですね」
常人には理解できない一言をのたまうのだった。
直後、コメント欄は狂乱する。
『やべえええええwwwwwwww』
『楽勝で草』
『強すぎワロタ』
『ドラゴンウルフに圧勝とかw』
『ヤラセだろ』
『アホか。生配信だぞ?』
『バケモンかよこの女ぁ!』
『こいつは弱かった、って言った?』
『弱い……とは?』
『仮面外せ!』
『顔出ししてほしいよな』
コメントの数が倍増していた。
視聴者が続々と増えていた。