第2章46話:コトリ
ルミは魔法学の体験講義を受けるために【魔法学科棟】を訪れていた。
3階の講義室に入る。
ここも大ホールである。
例によって中央中段のテーブルに座った。
そのときだった。
「あ、さっきの人!」
ふいに声をかけられて顔を横に向ける。
そこに立っていたのはクッキーをくれた女子大生であった。
「さきほどは助かりました。もしかして体験講義ですか?」
尋ねられて、ルミは答えた。
「こちらこそクッキーをいただいて、ありがとうございます。はい。魔法学の体験講義に来ました」
「えっと……同じ1回生だったり?」
ルミはうなずいた。
口振りからするに、この女子大生も1回生らしい。
「わぁ、そうなんですか! あ、よかったら一緒に講義を受けませんか? 私、新田コトリと言います」
「私は緒方ルミです。はい、新田さんがよければ是非」
「じゃあお邪魔します!」
彼女はそう言って、ルミの隣に座った。
「あと、私のことは、コトリと呼んでくださって構いませんよ。あ、タメでもいいですか?」
「それは、もちろん。ただ私は敬語が標準なので、口調はこのままですが」
「じゃあ、タメで……それにしても、ルミって名前なんだね」
「はい。つまらない名前ですよね」
「そんなことないよ! 素敵な名前だよ! 実はね、私が最近すごく推しはじめた配信者が、ルミって名前なの!」
「……!? そ、それって……」
まさか。
「ルミちゃんねるってアカウントなんだけどね!」
うああああああああああああっ!!
それ、私やんけ!!
思わず関西弁でツッコミを入れてしまう、心の中で。




