第1章4話:最初の魔物
三叉路の左の通路を突き進む。
その途中だった。
「……!」
視界の斜め手前。
その空間が揺らいだ。
直後、そこに魔物が突如として出現する。
オーガである。
巨大なこんぼうを持っている。
どうやらこのオーガは、透明化の魔法を使っていたらしい。
攻撃時に透明化が解けてしまうようだ。
ルミは、不意打ちめいたオーガの攻撃を、後ろにサッと退いてかわした。
『おお、すげえ……』
『なんだ今の敵……ステルス? 主はよくかわしたな』
『というかこの迷宮どこですか?』
直後、ルミは斬撃を繰り出す。
その斬撃は、誰もが見惚れるほど鮮やかな剣だった。
構えてから斬りかかるまでの動きに全く無駄がなく、一閃。
オーガの胸から腹を深く斬りつける。
間髪いれず、身体を回転させながら敵の背後に回り、膝の裏を切り裂き、ひざまずかせた。
それから目にも留まらぬ速さで剣を走らせ、オーガの首を切断した。
「ふう……」
剣を振り払い、血を落とす。
舞でも踊るかのようなルミの斬撃に、視聴者たちは驚嘆していた。
『すげえええええええええええ! なんだ今の動き!?』
『超はええww』
『てゆかこれ、グランドオーガじゃないですか。Aランクの魔物ですよ』
この段階で。
コメント欄の3人は盛り上がっていた。
さらに聞き専4人のうち3人が、この生配信をSNSで宣伝しはじめた。
その宣伝をきっかけに、SNSから視聴者が続々と訪れてくる。
同接があっという間に50人を超えた。
コメントも増えてくる。
しかしもちろん、そんなことにルミは気づかない。
「透明化を使う魔物がいるのは厄介ですね。初心者向けのダンジョンとはいえ、油断はできないようです」
どう見ても初心者向けではないのだが、ルミはやはり気づかない。
そのまま歩き続ける。
……ちなみにグランドオーガの素材を回収し忘れていたのが、それも気づかなかった。