第2章35話:大学
ルミは歩き続ける。
5分ほど直進すると、ふたたび交差点。
左に曲がりたいのだが歩行者信号が赤である。
待機する。
信号が青になった。
ルミは対岸へ渡り始める。
そして4分ほど直進し、T字路を左に曲がり、2分ほど歩くと――――
視界の右側に鞘坂大学が見えてくる。
ここが、ルミの通う大学である。
(だいたい徒歩20分というところですね)
ルミは携帯の時刻を見ながら心の中でつぶやいた。
マンションから大学までの所要時間。
ルミの足で、徒歩20分。
バスを使えば数分もかからないけれど、バス料金がかかってしまう。
急ぎでなければ、なるべく徒歩で通いたいと思っている。
――――鞘坂大学。
人口4000人ほどの大学。
もともとは学問探求を中心としていたが……
近年、魔物の脅威が増してきたことを受けて【探索者学部】を増設。
探索者カレッジとしての側面を持つ大学となった。
ルミが通うのも、探索者学部・剣術学科である。
ちなみに、現在、日本の大学は12年制が基本だ。
当初は4年制が実施されていたが、魔力の操作を覚えるには、もっと長い年月が必要ということで、12年制へと拡張された。
現在、ほとんどの大学が12年制を採用している。
しかし12年の通学となると、卒業は30歳になってからだ。
つまり30歳から社会人になるわけだが……問題ない。
ダンジョンが現れ、全ての人間に魔力というものが宿るようになってから1000年。
人間の寿命は、魔力の影響によって飛躍し、最大で300歳以上も生きられるようになった。
もはや人類は何百年と生きるわけだから、30歳から社会人をはじめても、遅くはないのだ。
むしろ存分に必要な技術と知識を学んでから、社会に出てくるべきだというのが、基本的通念である。




