第1章20話:大部屋
そのとき曲がり角の先で、ドラゴンウルフが現れた。
余裕で蹴り殺したあと、さらに壁を殴り続ける。
そうして魔物を瞬殺しながら、隠し部屋を探したが、一つも見つからなかった。
(ダメですね……一向に見つかる気配がありません)
これ以上探しても見つかる気がしない。
残念だけど、今日はこのぐらいにしておこうか。
ルミはふたたび上階への階段を昇り始める。
ルミは地上を目指して階段を昇る。
いよいよ、1階まで昇ってくる。
しかし、ダンジョンのエントランスに当たる、1階最初の通路までやってきたとき……
そこがなぜか、通路ではなく大部屋に変わっていた。
そして大部屋に、ドラゴンウルフの群れが大量に湧いている。
50匹はいるだろうか。
そんなドラゴンウルフたちの目が、一斉にルミを見つめてくる。
「ん……こんなところに部屋があったでしょうか?」
しかもウルフがやたら多いな……と思って、ルミは困惑する。
――――実は、超難関ダンジョンでは、ボス討伐後にモンスターの大量湧きが発生することがあるのだ。
特徴としては、ダンジョンの出口となる部屋や通路が大部屋へと変わり、そこにモンスターが大量発生するというもの。
これは超難関ダンジョンでしか発生しない特有の現象である。
そして、この現象は今まで世間に周知されることがなかった。
かつて、この大量湧きに遭遇した探索者パーティーが50年前と30年前にいたのだが、生還することなく死んでしまったからだ。
もちろん、ダンジョン外部にメールや連絡を飛ばしていれば、死ぬ前に情報を伝えるぐらいのことはできたかもしれない。
しかし、当時はまだダンジョン内から通信を飛ばす【ダンジョン無線】という技術が存在していなかったので、ダンジョン外へ情報を伝達する術はなかったのである。
―――――しかし。
今回は、違った。
ルミはこのとき、史上はじめてこの現象を記録し、配信データとして全世界に流すことができた。
極めて貴重な資料である。
映像をリアルタイムで視ていた探索者業界の者たちは、さっそくこの大量ポップについて、報告や分析を始めることになった。




