第6章170話:閉会式2
貴誌村『それでは最後に――――今大会の優勝者、ルミ選手』
貴誌村『チサトン選手という、ダンジョン配信の大先輩を前に、一進一退の戦いを繰り広げ、最後には見事、激闘を制しました』
貴誌村『文句のつけようがない、素晴らしい戦いを見せてくれたルミ選手の、栄えある勝利を湛え……優勝トロフィーを贈らせていただきます』
観客たちから、拍手が喝采する。
ルミが前に出る。
スタッフがやってきて、黄金の優勝トロフィーを渡してきた。
「ありがとうございます」
と言って、ルミが受け取る。
貴誌村『それでは最後に、ルミ選手から、今大会の感想をいただきたいと思います』
スタッフがルミに、マイクを渡してきた。
ルミはマイクを受け取ろうとしたが、その際にトロフィーを落としそうになった。
慌ててトロフィーを持ち直す。
片手でトロフィーを持つのは、持ちにくい。
そう思ったルミは、いったんトロフィーを、ステージ床に置くことにした。
マイクだけを手に持つ。
「……」
ルミがマイクを持った状態で、しばし黙り込む。
ややあって、彼女は言った。
「なんというか、楽しかったです。終わってしまうのが残念なぐらいです」
それは嘘いつわりのない本音である。
特にチサトンとの試合は、純粋に熱中することができた。
チサトンの実力が、ルミの全力に迫るものだったからだ。
最後の【絶花】を止めるには、ルミも90%近い本気を出さなければならなかった。
「また機会があれば、こういう試合に参加したいと思います。またチサトン選手みたいな人と戦ってみたいです」
現実的には年間ランカーとのマッチはなかなか成立しない。
年間ランカーはどこでも引っ張りだこなので、あまりバトルアリーナなどにも出場しないのだ。
チサトンのように、バトルアリーナへの出場を許諾したのは稀な事例である。
「あと、これからも、配信者としての活動を頑張っていきたいと思いますので……みなさん、どうか、応援よろしくお願いします」
ルミが、ぺこっと頭を下げる。
一瞬の沈黙。
そして。
拍手と歓声が、舞い上がった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ルミィイイイイイイイ!!」
「決勝、良い試合だった!」
「これからも応援するからな!」
「俺もファンになったぞおおおおお!!!」
「優勝おめでとう!!」
「マジでチサトンに勝つとか凄いぞ!!」
「大阪はルミのもんだああああ!!」
さまざまな声が飛び交う。
どれも、ルミを賞賛し、応援する声だった。
スタッフや貴誌村、そして、選手たちも、ルミに拍手を送る。
ルミは顔を上げ、スタッフにマイクを返した。
貴誌村『ルミ選手、ありがとうございました』
貴誌村『それでは、これにて閉会式を終了いたします』
貴誌村『会場のみなさま、このたびは大阪大会にお越しいただき、誠にありがとうございました。また来年度の大会でお会いしましょう!』
かくして、バトルアリーナ大阪大会は、閉幕する。
選手たちがステージから退場していく。
観客たちは、惜しみない拍手と賞賛を、選手たちに送り続けた。
最終章 完
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あとがき:
本作をお読みいただき、ありがとうございました!
無事、完結まで書くことができたことを喜ばしく思います。
作者は他にもさまざまな小説を書いておりますので、よろしければそちらもお読みください。
それでは、またね!