第6章157話:必殺技
チサトンは得意げに微笑む。
「瞬間移動、見破ったで」
ルミは、立ち上がる。
――――年間ランカー、チサトン。
さすがに対応力が高すぎる。
まだ数手ほど打ち合っただけなのに、剣舞も瞬間移動も、見切られてしまった。
これがダンジョン配信界を上り詰めたトップランカーの実力というわけか。
「次はウチがスキルを見せる番や」
チサトンの空気が変わる。
「まず封印や」
「!?」
チサトンが何らかのスキルを発動した。
何をされたかはわからない。
でも、嫌な予感がした。
ルミはいったん距離を取ろうとして、瞬間移動を使った。
しかし。
瞬間移動が発動しない。
「無駄やで。瞬間移動スキル、封印させてもらったからな」
「封印……!?」
「ウチには一つだけ相手のスキルを封印できる【スキル封印】があるんや。その【瞬間移動】、回避に使われると面倒そうやし、封印しとくわ」
ルミがわずかに冷や汗を浮かべる。
切り札の一つである瞬間移動スキルがもう使えないとは。
「そんじゃこっからは殴り合いや! いくで!」
戦意をみなぎらせるチサトン。
「食らえや――――スキル、桜刃撃!!」
チサトンが刀を引きながら、まっすぐに突っ込んできた。
そして間合いに入った瞬間。
強烈な突きを放ってきた。
その突きは一撃ではない。
いや、正確には一撃なのだが、まるで三度の突きを同時に放ったかのような、三段突きだ。
一度の突きが、三つの突きにへんげするスキル――――桜刃撃。
チサトンの十八番の一つであった。
「がはっ!!?」
ルミは桜刃撃の二突を防いだ。
しかし、残る突きの一つを防ぎきれず、食らってしまう。
吹っ飛ばされ、地面を転がる。
観客の歓声。
「おおおおおおおおおおおお!!」
「うおおおおおおおおおおおお!!」
「でたー!!」
「沖田チサトンだああああ!!」
「沖田! 沖田! 沖田!!」
「必殺の三段突き!!」
「これが沖田チサトン!!!」
「試合で見られるのか、沖田剣術」
「かっけえええええええええええええ!!」